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1366/1379

1366.演武のフリをします!

 見習い司教との、【聖水】作りを終えたメイたち。


「ありがとうございましたーっ!」


 六人は教会を出て、そのままパレードに復帰。

 天井飾りのついた馬車のところまで駆けていくと、【聖水】をメイにパス。


「それーっ!」


 投じれば見事に十字架に直撃して、刻まれた呪いの『逆さ五芒星』が煙を上げて消える。

 この瞬間を騎士たちも見ていたが、修道服で水を撒くのはこのパレードの催しの一つ。

 もちろんお咎めなしだ。


「これで降臨祭会場への呪具の持ち込みは、全て防いだ形だな」

「なかなか緊張感あるクエストだったねェ」


 降臨時に呪いを起動して潰すというやり方は、これでもう不可能だ。

 六人集まって喜び合う。すると。


「……ん?」


『闇を継ぐ者』への伝書カラスがレンのもとにやって来て、一枚の手紙を渡してきた。


「なんて書いてあるのー?」


 メイが首を傾げると、スキアがその目を鋭くする。


「どうやら魔族が一体潜り込んでいるらしい。それをパレードを中止させずに討てとのことだ」

「戦いの規模を広げず、観客に被害を出さないようにってことね」


 伝えられた、新たなクエスト。

 その内容に六人は、再び気合を入れ直す。


「メイは最前列、私は中央前列、ツバメが中央後列、クルデリスとスキアは人数が多い最後方の騎士たちのところへ。まもりも後列へ向かって進む形でお願い」


 誰がどこで魔族を見つけても、応援に入れるよう配置して別れる六人。

 スキアは後列に並ぶ、騎士たちの列に視線を走らせる。

 兜のために表情は見えず、また装備の違いも見られない。

 クルデリスと左右から挟むようにして、一人ずつ確認して最後尾へ。

 やはり騎士に差はない。しかし。


「クルデリス」


 最後尾の、本当に最後。

 そこに、確かな異変があった。

 スキアが下がり、接近するのはクルデリス。

 騎士の隣りにつけると、二本の短剣を引き抜いた。


「見えてるんだよねェ瘴気が……悪魔くん」

「っ!」


 声をかけると、最後の騎士が振り返った。

 身に着けていた鎧を勢いよく弾き飛ばすと、中には漆黒の身体が見える。


「おおっ! もしかして演武が始まるのか!?」


 するとそれを見た観客のNPCたちが、『演武だ』と周知する。

 悪魔はまだ騎士鎧の一部をまとったままで、魔族だとは気づかれていないというのが、クエストのキモなのだろう。

 修道服の二人を前に、立ちふさがる騎士の悪魔。

 あとは『被害を出さず』に打倒すれば、そのまま演武と勘違いさせたまま。

 パレードは成功で終わることが可能となる。


「体型は人間とほぼ同じってところだねェ」

「降臨祭の演武という体にするなら、もってこいだな」


 そう言ってクルデリスは、修道服に似合わない舌なめずりを一つ。

 スキアはクールに長杖を抜いた。

 向かい合う両者。

 パレードが離れたところで、腰の剣を抜いた悪魔騎士が動き出した。

 まずは踏み込みから、シンプルな斬り下ろし。

 そこから払い、返しと続けるが、クルデリスは見事なステップで下がってかわす。

 程よく距離が離れると、騎士は大きな前方宙返り斬りを仕掛けてくる。


「さすがにやるねェ……!」


 これをうれしそうに短剣で受けるクルデリス。

 敵の【フリップスレイ】が、激しい火花を上げた。

 すぐさま攻撃を続ける悪魔騎士。

【シザーブレイド】は右から自分で、左から一瞬現れる分身体が回転斬りで敵を挟むという強力な攻撃。


「んっふふ。思った以上だァ!」


 強烈な挟み込みを、しゃがみで回避したクルデリスは反撃に入る。


「【光刃】【闇刃】」


 二本の短剣に魔力を込めて放つ連撃で、見事にダメージを奪う。

 すると剣の大きな振り回しで、悪魔騎士はけん制してきた。


「おっとォ」


 これを難なくかわして、さらに攻撃を仕掛けるクルデリスだが――。

 悪魔騎士が剣を持たない方の手を突き出し、放つ一撃。

【シャドウアーム】は、伸長する影の腕が敵を斬るという形の攻撃。

 クルデリスは虚を突かれた。


「【凶弾】」


 だがスキアが指先から放った魔力弾が直撃し、強制停止。

 見事なフォローを見せた。


「惜しかったねェ悪魔くん! 【殺到】ォォォォ!」


 この隙を突くクルデリス。

 敵を突き刺しそのまま運ぶスキルで、悪魔騎士を一直線に押し出していく。

 背後に壁などがあれば突き破り、なければ魔力炸裂で飛ばすこの攻撃は、この場ではミスマッチ。だが。


「お、お手伝いしますっ!」

「んっふふ。これで負け確定になっちゃったよォ、悪魔くゥん?」

「【不動】【天雲の盾】!」


 クルデリスはまもりの盾にそのまま悪魔騎士を叩きつけ、魔力を爆発させる。

「おおっ!」と上がる歓声は、プレイヤーたちから。


「【魔神の大剣】! やあーっ!」


 まもりの一撃は、見事にヒット。

 悪魔騎士を吹き飛ばして転がした。

 この隙にクルデリスは、まもりを先頭に陣を組み直す。


「いいぞ! やれやれー!」


 盛り上がる観客。

 プレイヤーたちも、見事な戦いを夢中で見守る。


「気をつけろ!」


 スキアの声は、剣による攻撃でないと確信したから。

 放たれた豪炎弾【デビルズファイア】は、防御しても体勢を大きく崩し、避けてしまうと客に当たる。

 そんな嫌らしい一撃だ。


「【マジックイーター】!」


 だがこれをまもりが、難なく消し去ってしまう。

 そしてスキアたちも、まもりなら受けてくれると確信して動き出している。


「そらそらァ!」


 そこに駆け込んだクルデリスが、二連撃でさらにダメージを与える。

 すると追い込まれた悪魔騎士は剣を引き、エフェクトを派手に輝かせた。


【ラピッドスタブ】は高速の接近刺突。


 凄まじい速度で狭い、繰り出される剣にクルデリスは一歩も動けない。


「面白いねェ……でも」

「【かばう】【不動】【地壁の盾】!」


 刺突はまもりの盾にぶつかった。

 だが、これだけでは終わらない。

 続け様の【ローリングブレイド】は、右側から来る猛烈な回転攻撃。

 強烈な二段攻撃は、悪魔騎士の奥義だ。


「【地壁の盾】!」


 だがこれも、まもりの二枚目の盾の前に完全停止。

 まもりが『右側』から来る剣の軌道を止めてしまえば、必然的に左側に道が生まれる。

 クルデリスはあえて、まもりの左側をくるりと周りながら前進。


「【フリップジャンプ】【残光連華】!」


 華麗な空中回転から放つ魔力剣の輝きが、幾重もの白弧を描く。

 悪魔騎士は斬られ、大きくたたらを踏んだ。そこに。


「終わりだ――――【降魔砲】」


 同じくまもりの横を通り、クルデリスを追い越してきたスキアが杖を突きつけると、シンプルな魔力砲を発射。

 悪魔騎士は転がり倒れ伏した。

 スキアとクルデリスはそのまま、まもりを中心にクールなポーズを決める。


「シールドが到着した時点で、お前の敗北は揺るがぬものに変わったな」

「そォいうこと」

「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」


 まもりが受け、そこを叩く。

 定番だが、それゆえに強力な連携に観客たちは拍手喝采。

 もちろん被害はゼロ。

 戦いは降臨祭のイベントの一つとして扱われ、パレードに関わるクエストは、見事ノーミスで終わることになった。

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クイズは左右反対な気もするが正解ですね 自作にしては、案外すっきりしていて気に入っているクイズですo(^-^)oみなさん、なかなかひっかけが見破れず苦労なさっていたようですがいかがでしたでしょうか?…
まもりちゃん、またちゃっかり魔神の大剣当ててるしw クエスト報酬で結構武器も貰ってたりで、割と火力も高いのが恐ろしいところですね。
レンからたまに滲み出る中二病要素
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