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1363.パレード!

「降臨祭、面白いなぁ!」

「まさかメイさんたちが突発店舗を開くなんて! 来てよかったです!」

「本当ぽよ!」


 一部掲示板組は運よく店舗にたどり着き、パイを堪能。

 わき立つ聖教都市を見ながら、歓喜の声をあげた。


「ありがとうございましたーっ!」

「またお会いできる日を、楽しみにしてますねっ」

「来てくれて、うれしかったにゃ!」


 一方のメイたちも、無事にクエストを達成。

 客を見送った後、変身を解き、再び闇を継ぐ者として降臨祭を守るための任務に戻る。


「まずは、陣の封印からだ」

「まったく忙しいねェ」

「ぶふっ!」


 スキアとクルデリスが急にキャラを戻して生まれた温度差に、思わず噴き出すレン。

 六人は共に進み、ツバメが発見した廃倉庫の横道へ。

 そこには小さな魔法陣と、中心に置かれた【魔宝石】が、積まれた木箱で隠されている


「壊してしまうと、『裏で動いている存在』がいるとバレてしまう」

「だから陣と【魔法石】はそのまま残してェ、魔力だけを無効化するんだよねェ」


 本部から渡されていた液体をビンからこぼすと、魔法石の色が少し濃くなり陣から煙が上がる。


「これで発電所の一つが力を失ったような形になるようだ。すなわちこの魔法陣はただの『電線』になり魔力が足りなくなる」

「な、なるほど。壊されたとは気づかないから、そのままにされるわけですね」

「いざという時に突然起動しないって方が、状況は大変だものね」


 こうして魔法陣対策は、見事に達成。


「んっふふ。それにしても血が滾るよねェ。このメンバーはさァ」

「否定はしない」


 クルデリスとスキアが妖しい笑みを浮かべながら、表通りに戻ると――。


「ん……?」


 メイが異音に気づいて顔を上げた。

 するとそこに、一羽のカラスがやってくる。


「なんで一目散に、私の肩に留まるのよ」

「で、伝書カラスですか?」


 まもりはその脚に、手紙が巻かれていることに気づく。

 アイテムとして入手した【手紙】を開くと、そこには新たな任務が書かれていた。


「ええと、この後大通りを進むパレードに『仕掛けあり』だって。天使の降臨するべき場を穢して不完全なものにする不浄のアイテムを、パレード内に『隠す』ことで持ち込もうとしてるみたい」

「それを見つけて、手を打つということですね」

「パレード! 楽しそうっ!」

「ワイルド。皆が楽しんでるパレードの『背後』に起きてる事件をさァ、片付けるって密命が楽しィんだよ」

「おおーっ! なるほど……っ!」

「ちょっと、メイに余計な事を教えないでもらえる?」


 妖しい笑みを浮かべるスキアとクルデリスから、メイを引きはがすレン。

 こうして六人は、降臨祭パレードが行われる聖教都市大通りへと向かうことにした。



   ◆



 六人は今回も【変身の杖】を使用し、修道服に似た『清教徒』衣装に身を包むと、大通りに待機。

 すると賑やかな音楽が鳴り出して、降臨祭パレードが始まった。


「始まったわ」

「わあ……っ」


 大通りに集まった、たくさんのプレイヤーたち。

 通りに出て通行整理をする教団関係者や、パレードを守るための騎士たちも多く、順路が一気に人であふれる。

 まずは騎竜隊と馬が引く形の戦車。

 その後に関係者を乗せた、豪華な貴族馬車が続く。

 そして馬車の荷台に並んだ音楽隊は、祝福の音色を響かせている。

 最後はパレードを守護しつつ、豪華さを付加する騎士たちの列が続く。


「賑やかですね」


 それは洗礼の再現か。

 修道服姿の者たちが水をまき、飛沫が陽光を反射して輝いている。

 それがまた、雰囲気を盛り上げているようだ。


「本部よりもたらされた情報では、パレード内に隠して積む形で、アイテムを三つほど内部へ運び込むつもりのようだ」

「降臨の厳戒態勢を、すり抜けるための作戦ですか」

「そ、その三つのアイテムを見つけて、排除するんですね」

「ただしパレードの邪魔をするような形になると、騎士たちに攻撃されてしまうだろうな」

「付近を警備している聖教騎士たちにまで狙われたら、大惨事ね」

「とにかく『異変』を探しましょう」


 修道服に身を包んだ六人はバラけて、通り過ぎていくパレードを各々見つめる。

 楽隊や水を撒く者がいるため、付近を動くだけなら問題はなし。

 見つけるべきは、この光景の中に隠された『異変』だ。


「お、おかしなところ……ありますか?」


 しかし、異変は見当たらない。


「おそらくパレードの前半、中盤、後半に分けて来るとは思うんだけど……」

「見つかりませんね」


 レンは、異変の距離はそれなりに離れていると予想している。

 そしてパレードは、大通りを通り過ぎればもう止められない。

 それは時間制限と同じことだ。

 通り過ぎていく騎竜隊と豪華な馬車の一団を見送って、さすがに少し焦り出す。

 そんな中。


「……あれ?」


 メイが気づく。

 鳥や猫といった、付近の動物たち。

 このパレードを見ている従魔師の魔物が、同一方向に向いている。


「こっちかな?」


 メイは進み、動物たちの視線の向く先を推し量る。


「もっと前……でも、もう少し後ろ」


 騎竜隊のところだと行き過ぎ。

 だとすると司祭などが乗った、豪華な馬車の一団か。


「ここだっ!」


 メイは並んだ司祭たちの貴族馬車の屋根についた、剣のオブジェクトに注目。

 近づくとわずかにだが、瘴気のようなものを発している。


「……スキア殿」

「っ!」


 急に侍のような呼び方をしてきた、ワイルドモードのメイに吹き出しそうになるスキア。


「異変は、怪しい瘴気のようだ」

「見つけたのか? さすがだな。ではこの【ロザリオ】を該当箇所に掛けてくれ」

「りょうかいした」


 メイはそのまま馬車に戻り、屋根の四方についた剣の一本に【ロザリオ】を掛ける。

 すると瘴気は打ち払われて消え、剣にヒビが入った。


「視界にあったミッション数が、一つ減りました」


 これで一つ目の危険な『持ち込みアイテム』を排除成功。

 実は制限時間が迫ると、先を行く騎竜たちがその視線を『異変』に向け出し、気づきやすくなるというヒントを持つ一つ目の異変。

 それは同時に、一つ目の発見が遅れて後半に焦る展開を狙ったもの。

 さらにこの時「騎竜隊に異変はない」と決めつけてしまっていると、見逃しやすくなってしまう。

 だがそんな罠に、メイはいち早く気づくことに成功した。


「見事な仕事だったな、ワイルド」


 メイの早い発見に、隣に来て冷静に声をかけるスキア。


「この調子で、二つ目の発見も急ごう」


 そんな彼女のたたずまいを真似しながら、メイも一言。


「おまかせあれだ」

「ぐふっ!」


 うっかり吹き出す。

 普段クールなスキアはやはり、メイのおかしなキャラ付けが弱点のようだ。

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― 新着の感想 ―
クイズですが本以外は複数の人が同じ物を持ってる可能性もありますよ
メイちゃんのボケ?は間違いなく天然ものですね…、狙ってできるレベルじゃないw
さてスキア殿の腹筋はいつまで耐えられるかな?
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