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1355.荒れるミサ会場

「なんなんだ、これはぁぁぁぁぁぁぁぁ――――っ!!」


 暗いミサ会場に、響き渡るレクイエムの叫び声。

 大きなクエストの最後に呼び出された、悪魔に歓喜の様相を見せた闇の使徒たち。

 しかし突然飛んできた巨大な光の槍が突き刺さり、消滅。

 舞い散る粒子の中、まさかの事態にアレクサンドラの神殿が騒然とする。


「一体どうして……!?」


 すぐに、事態の把握に動き出す使徒たち。


「光の使徒か!?」


 当然闇の使徒は白夜たちに目を向けるが、当の本人たちはその壮大ながらも神々しい光景に呆然。

 向けられる疑惑の視線にも、気づいていないようだ。


「なぜ、どこで知られたんだ!?」

「そもそも対になるクエストなど、我らでも存在を知らなかったのに……!」


 紛糾し始める、暗き神殿。


「……ん?」


 凄まじい展開とド派手な出来事に、思わず口を開けたまま見学していたメイ。

 それでも闇の中を早歩きで進む一人の黒ローブに気づいて、視線を向ける。


「お、おい! 見ろあいつをっ!」


 遅れて声をあげた、闇の使徒。

 指差す先には、この場を去ろうとしている黒ローブが手にしていた、白い魔宝石の刃。

 細かな装飾が施されたその短剣は、儀式用か。

 ならばその短剣を、魔を討つ『光の槍』を放つためのものだと思うのは当然だろう。


「あいつか! あいつが我らの呼び出した悪魔を討った、対クエストの受注者だ!」

「殺れ……! そしてヤツを、贄へと変えるのだ!」


 闇の使徒たちは各々の武器を構え、すぐさま謎の人物を取り囲む。


「逃がすものか! 我らの悲願を踏み潰した貴様を、生かして返す道理はない!」


 そして統制された動きで、各々の獲物を向けた。


「す、すごい光景です……っ」

「はい、まるで映画のようです」


 数十人の黒づくめが同時に、一人に対して武器を向ける状況は迫力十分。

 これにはレンも思わずワクワクし、メイは尻尾をブンブンさせる。


「貴様、どこの者だ?」


 闇の使徒が問いかけるも、黒ローブは答えない。


「光の使徒か? それとも外部の者か?」


 この問いにも無言を貫く。しかし。


「……何か、言い残すことはあるか?」


 返事は得られないと知った闇の使徒たちが、最後にそう聞くと――。


「――――時が来る」


 そう一言残して、レンのように指を鳴らした。


「「「っ!?」」」


 すると腕につけられていたブレスレットの宝石が輝き、盛大な風を巻き起こした。

 荒れ狂う風は光を含み、輝きの嵐を目前にした闇の使徒たちは、思わず目を抑える。

 そして視界が戻ると、そこに謎の黒ローブはいなかった。


「これがクエストなら、まあ退避用のアイテムも用意されてるわよね」

「たった一人でミサに潜り込み、召喚された悪魔を討つ……ドキドキのクエストですね」

「本当だねえっ」

「は、はひっ。緊張感もすごそうです……っ」


 それは言うなれば、正義のアサシンか。

 そんなクエスト内容に、メイは「カッコいい!」と興奮気味だ。


「九条院白夜、貴様の差し金か?」


 そんな中、質問の声をぶつけたのはレクイエム。


「いいえ。わたくしは月のクエストに向かっていましたし、戻ってからはまた別の準備を進めていました。光の使徒のほとんどもそちらに回っていたはずですわ」


 兜で見えないが、威圧感のある声で問うレクイエムに、白夜は冷静に応える。


「ならば、光の者の仕業ではないと?」

「そこまでは存じません」


 向けられる疑念に白夜がわずかな戸惑いを見せていると、闇の使徒の一人が声を上げる。


「私は見た! あの者は黒のローブの下に、光の使徒らしき装備をしていた!」

「闇の使徒を偽装してミサに潜り込み、悪魔を討つ。それがやつのクエストだったんだ!」

「それに闇の使徒の格好をしていても、放たれた光の槍はどう見ても聖なるものだった!」


 次々にあがる、怒りを含んだ声。

 向けられるのはやはり、光の使徒たちだ。


「……仮にそうだったとしたら、どうするというのです?」


 しかし光の使徒も、刃を向けられれば黙ってはいない。

 広がる剣呑な雰囲気。

 それを見たレンは、ため息を一つ。


「悪魔の暗殺ルートがあったのは間違いないわね。でもこれだけの規模のクエストなら、報酬欲しさに内部から裏切り者が出た可能性もあるわ」

「使徒長さま……」


 レンがそう言えば、闇の使徒たちはすぐに静まり返る。

 さらに光の使徒たちすら、その耳を真剣に傾け出した。


「ちょっと! なんか大物のお言葉みたいな空気は止めてよ! とにかく今は、逃げた暗殺者を探したほうがいいんじゃない?」

「その通りだ、行け! 転送先は近場の可能性もある! とにかく怪しい者を片っ端から捉えるのだ!」


 レクイエムの言葉に、すぐさま動き出す闇の使徒。


「困ったことになりましたわね」


 一方の白夜は、小さくため息をつきながらミサの会場を後にする。

 レンも、メイたちを連れて神殿の外へ。


「すごかったねえっ!」

「まあ、大きなクエストが見られたのは確かね。悪魔の暗殺ルート……相当ドキドキしたでしょうね」

「闇の使徒に成りすましていた時は、どんな気持ちだったのでしょうか……!」


 はしゃぐメイたちに、苦笑いのレン。


「……お姉ちゃん」

「なに?」

「この後、どこでさっきの黒ローブの人と合流するの?」

「だから私は黒幕じゃないっての! これで私が裏で指示してたパターンは、さすがにトリッキーすぎるでしょ!」


 変わらず疑念の目を向けるカナに、レンは「ないない」と大きく手を振ってみせたのだった。

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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なぜ先に捕まえてから尋問しなかったのだろうか…?(サイコパス脳 もはや闇の使徒だけでなく、光の使徒からも一定の信頼を得てしまったレンちゃんw 香菜ちゃんの疑念が晴れる日は来るのだろうか!?
あーあの娘か 彼女完成度高かったもんね。 彼女もレンちゃんのフォロワーなのかな? レンちゃんのフォロワー多すぎ問題(笑) レンちゃん「わたしの責任………じゃないわよね?」 いったいどれだけの人数…
やはり時が来る少女かw 使徒長に手紙出したのも彼女ですね。 なんなら光の使徒を呼んだ可能性もある。 自分の一世一代の活躍を、敬愛なる使徒長に見てもらいたかったんでしょうなぁw そしてこの後に少女に出…
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