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1353/1381

1353.クエストを見学しますっ!

「レンちゃーん!」

「お待たせ。神社クエストの報酬を見てきたら遅くなっちゃった」


 ハウジングの土地以外に、パーティで一つ。

 そんな報酬を回収に行ってから、レンが待ち合わせのラフテリアにやってきた。


「どのような報酬だったのですか?」

「魔導士向け。まあ……あんまり使う物じゃないわね」

「あ、あくまでハウジングの場所が、報酬の本体という事ですね」


 まもりがいるからなのか、すっかり豪華になったラフテリアの飲食関係。

 五段のアイスという子供が大喜びしそうなメニューを手にしたメイたちに、レンが笑う。


「それじゃ行きましょうか」


 少しのんびりしたところで、話通り『クエスト見学』に歩き出す四人。すると。


「あっ、香菜ちゃん!」

「香菜?」


 メイが気づいて足を止めた。

 視線の先にはサングラス装備で物陰に隠れる、少女の姿。

 一瞬で気づかれて驚く少女に、メイは大きく手を振る。

 すると観念したのか、香菜ことカナはサングラスを外しながらやってきた。


「香菜、あんなところで何してたの?」


 レンの問いに、カナは疑念の目を向ける。


「最近すごく、色んなところで怪しいお姉ちゃんを見かけたから」


 神社のムックですら、怨念を従えた者みたいになっていたレン。

 その格好良さは、中二病勢に刺さりまくりの状態だった。

 一緒に行動しているわけではないカナにしてみれば、かつて実際にミサを行っていたレンに、疑惑を深めるのも無理はない。


「それ、完全に運営の匙加減なんだけど」


 レンはそう言って、ため息を吐く。


「怪しいから、確認しようと思って」

「それなら一緒に行こうよーっ!」

「いいんですかっ?」


 メイに言われて、カナは目を輝かせる。


「それが良いですね」

「い、妹さんも、とても可愛いです……!」


 今日はクエストの見学目的という事もあって、余裕あり。

 レンも無実を証明するために、メイの提案を承諾した。


「……お姉ちゃん、本当に何もないの?」

「ないわよ、まったくもう。ミサがどうとか、儀式がどうとか。そんなのとは無縁の生活を送ってるわ」

「ふーん」

「一切信用してない顔ね」

「あれだけ『家ミサ』をされたらそうなるよ。でもメイさんやツバメさん、まもりさんと一緒って本当にすごいよね。戦い方の解説動画が出てるプレイヤーなんて、めったに見ないもん」


 どうやらメイたちはその活躍だけでなく、ツバメの戦い方の意外性や、まもりの堅牢さといったプレイの部分でも、盛り上がりに一役買っているようだ。


「お姉ちゃん、儀式とかしてませんか?」

「見たことはありません」

「ツバメ、『してない』でいいのよ? なんで可能性を残すのよ」

「なるほど、そこかしこでやっているわけではないと……」


 カナは「なるほど」とうなずく。


「ど、どこかでやっているという前提ではあるのですね」


 これにはまもりも笑う。

 五人はポータルを使って進み、砂漠と森の二つが広がる国アレクサンドラにやってきた。

 白壁の建物が立ち並ぶ街は砂と緑の合間にあり、その景観は美しい。

 中でも目立つのは、コロシアムを思わせる丸型の神殿だ。


「綺麗な街だねぇ」

「本当ですね」

「さ、砂漠と森林が交わる街……面白いです」

「初めてきましたっ!」


 さっそくメイたちと共に、楽しそうに歩くカナ。


「話で聞いてるクエストは、向こうの神殿ね」


 レンは先導する形で街を進み、そのまま大きな神殿の前へ。


「熱い戦いなんかが見られるのかしら。呼ばれて見に行くなんて、なかなかないから楽しみだわ」


 そして、埋め込まれた魔法珠に触れる事で起動する石扉に触れる。

 開かれていく扉、その中には――。

 たくさんの闇の使徒が並んで、怪しい祈りを捧げていた。


「な、何に招待してくれてるのよぉぉぉぉぉぉ――――っ!」

「……お姉ちゃん?」


 並んだたくさんのロウソクに、描かれた魔法陣。

 そこはまさかの、ミサ会場。

 出まくりの雰囲気に思わず叫ぶレンと、即座に冷たい目を向けるカナ。


「違う違う! これは内容を知らずに来ただけなの! そもそも私は今回クエストを見に来ただけで、参加してないでしょ!?」

「でも、背後で『動かしてる』パターンもあるでしょ? むしろその方がすごいっていうか」

「誰が黒幕よ! とにかく関係ないから! 偶然ミサだっただけ!」


 レンは慌てて否定する。

 もちろん大きなクエストとしか聞いてないため、そこに背景はない。


「ナイトメア」

「っ!?」


 しかしそこで声をかけてきたのは、あろうことか黒づくめの暗黒騎士レクイエム。

 さらに闇色の忍者である鳴花雨涙も、その背後に控えている。

 闇から闇、もはや言い訳のしようもない。


「なんか闇の人がいっぱいいるんだけど……お姉ちゃん」

「これは元同僚だから」

「よく来たな、ナイトメア」

「ナイトメアは止めて」

「真実の姿を隠したいのは分かるが、我が前ではそのような――」

「この子の前だからなの!」


 いよいよ怪しさしかない状況に、白目をむくレン。

 ため息をつきながら、あらためて内部を見回す。


「ていうか、本当に大きな規模のクエストなのね」

「見ての通りだ。だがまさか観客としてやってくるとはな……」

「手紙なんてシステム、実際に送られたのは初めてだったんだけど、送ったのはリズ?」


 たずねるとリズは、静かに首を振った。


「それだと、差出人は使徒の誰かかしら」


 どうやらレンがこのクエストに呼ばれたのは、郵便NPCを使った手紙システムによるものらしい。


「ドキドキしちゃうね、ツバメちゃんっ!」

「そうですね……! 闇を照らすのは無数のロウソク、描かれた魔法陣。そして壁からは真紅の大きな垂れ幕。素晴らしい雰囲気です」

「な、何が始まるのでしょうか……っ」


 一方メイたちは、作り込まれた雰囲気にキャッキャと楽しそうにしている。

 見ればこの場には闇の使徒だけではなく、一般のプレイヤーも紛れており、そこには樹氷の魔女の姿も見える。


「始まるぞ」


 どうやら闇の使徒が先導し、レクイエムも監督していたらしい大きなクエスト。

 このミサ自体が、そのラストを飾るものなのだろう。

 クエストは、最後の瞬間に向けて動き出す。

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川渡りクイズは正解かな、まあ割りと有名ですし ヤギを連れて渡る( → オオカミとキャベツがこちら側、農夫とヤギが向こう岸) 戻る( → 農夫とオオカミとキャベツがこちら側、ヤギが向こう岸) オオカミ…
クイズですがそうですね全色帽子を被っている人が揃っていますね。 後川渡りクイズと言うのは文章だけでもいけますよ、有名なのは この問題は、8世紀にカンタベリーの大主教が提示した問題といわれている。 オ…
おいたわしや、レン上…。 ミサはともかく、レクイエムちゃん達の登場は傍目からは言い訳ができないw
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