1352.Time has come.
「星屑のフロンティアは、本当にたくさんの宣伝をしているんですね」
「すごいねぇ……っ」
さつきたちは変わったハウジングクエストを発見し、神社を建てた。
そこから始まった祭は盛り上がり、今では京が賑わっている。
またもメイたちを起点に、新たな文化が生まれた星屑。
今回はハウジング担当の人たちがムック本を作ったという事で、四人はせっかくだからと外出。
直接受け取りに行き、その帰りにカフェで一緒に眺めることにした。
「……確かに、すごいんだけど」
そんな中で、可憐はため息を一つ。
「なんで私だけ、怨念が暴れ出した時の真面目な顔を抜いたのよ」
風の吹き方もあり、これではレンが怨念すら従えているかのようだ。
これにはさつきたちが、声をそろえて笑う。
「あれっ!? なぜか神社の神様が『野生児ノ命』ってことになってる!?」
トロピカルなグリーンにバナナ柄ではなく、白地に赤の綺麗な浴衣。
ご満悦のさつきだったが、最後にまさかのオチで驚愕。
これにはまもりも、くすくすと笑う。
「これは、まもりさんの素敵な一枚ですね」
つばめが見ているのは、憂いを感じさせる顔のまもり。
「あ、ありがとうございます」
それが「これ以上食べたらまた崩落を起こすのでは、でも食べたい」なんてことを考えていたとは言えずに、苦笑いで応える。
「それじゃ、そろそろ広告を見に行きましょうか」
「りょうかいですっ」
最近は集合時にカフェを使うことが多いため、毎回さつきはウキウキ状態だ。
店を出た四人は、せっかくだからと新たな広告を見て帰ることにした。
駅に掲示された大判の広告は、とても目につく。そして。
「立ち止まっている人も多いねっ」
広告が新しくなるたびに、プレイヤーが見に来るのはもはや定番。
「メイちゃん可愛いーっ!」
「やっぱりメイちゃんはいいな! この元気さがたまらないね!」
「えへへ」
今回もメイたちの広告を写真に収めて、楽しそうにしている高校生たち。
仕事に向かう途中か、スーツ姿の者たちもいる。
集まった人たちは皆、楽しそうだ。
「だからなんで私のところだけ、真っ黒なのよ……!」
そんな中、案の定レンの広告の前には黒づくめの集団。
静かに並び、スッとヒザをつく。
「早く、早く帰って……!」
黒づくめ集団を見てヒソヒソしながら通り過ぎる通行人に、可憐もなぜか責任を感じて冷や汗が噴き出す。
そして闇の者たちでも欲求には勝てないのか、ただ静かに去るのではなく写真を一枚。
ちょっとうれしそうにしながら、立ち去っていく。
「もう……」
ため息を吐く可憐。
「ん?」
すると、空いたわずかな隙間をついてやってきた一人の少女。
黒のレースを真珠のチェーンで飾り、赤紫色の薔薇で彩る。
白い髪を黒のヴェールようなもので覆った『完璧』な少女は、静かに顔を上げる。
「闇を超えし者よ……」
よく見えないが、その雰囲気は目を止めてしまうほどだ。
「――――時が来る」
しばらく眺めて、静かに振り返る。
「世界観、出すぎでしょ……」
立ち去っていく姿を見て、可憐は白目をむいた。
段違いの少女に、そのまま放心していると――。
「メイさんっ!」
「香菜ちゃんっ!」
さつきたちもとに、うれしそうに駆けてきたのは、可憐の妹である香菜だった。
「メイさんたちの活躍すごいですね! 私もお祭りに行ってきたんですよ!」
「本当ーっ!」
「すごい熱気で、みんな楽しそうでした! あんなに作り込まれた神社なら、人気になるのも当然ですね! ついつい長居してしまいました!」
「ありがとうーっ!」
「香菜さんは、学校帰りですか?」
「はい! 五月晴れの新しい広告が出るって聞いて、見に来ちゃいました!」
「と、とても活動的です……っ」
こうして星城家の姉妹が制服で並ぶと、香菜が可憐にたずねる。
その目を、鋭く光らせながら。
「せっかくだし、お姉ちゃんにも一応聞いておきたいんだけど……」
「なに?」
「闇の使徒が近く何かするって聞いたんだけど……お姉ちゃんは、関係ないよね?」
「ないわよ」
「本当に? 最近家でミサをやらないのは、もっと大きな会場でやってるからとかじゃなくて?」
「大きな会場って、ライブじゃあるまいし」
「レベルが上がって、箱も大きくなってるんじゃないの?」
「ないわよ! ミサなんてないない!」
「本当かなぁ」
「神に誓ってもいいわ」
「邪神に?」
「そんなわけないでしょ!」
闇の使徒の集会が、大きな王都のホールなどで開催。
邪神に祈りを捧げている光景の中に、『闇を超えし者像』が置かれているのを想像して、思わず震える。
「そういえば……私も大きなクエストがあるって話を聞いたのよね」
「どのようなクエストですか?」
「そこまでは聞いてないんだけど、今なら抱えてるクエストもないし、見学に行ってみてもいいかもね」
「いいと思いますっ!」
「ク、クエストを見学に行くというのは、新鮮ですねっ」
こうしてさつきたちは、早くも帰宅後の予定を決めた。
今回はめずらしく、見学者としての参加だ。
各々が自宅へ向かい、可憐も香菜の『疑惑の視線』を感じつつ、一緒に帰宅の途に就いた。
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