1340.報酬タイムです!
「それでは、高度を下げます」
「りょうかいですっ!」
少し時間に余裕があったメイとツバメは、早めに星屑にログイン。
セフィロト丸で空のドライブを楽しんでから、いつもの待ち合わせ場所へと向かう。
高度を下げると、船尾が海水を弾く。
するとカモメたちがやって来て、メイの周りを飛び回る。
飛んでいるカモメの頭を撫でるという楽しい状況に、思わずのぞかせる笑み。
「いつもの堤防が見えました」
「レンちゃんとまもりちゃんがいるよ!」
アイス片手に腰かけて、脚をブラブラさせているのはレンとまもりだ。
いつ見ても、夏の港町といった風情のラフテリア。
ツバメはそのまま一直線に堤防のもとに進むと、機体の側面を二人に向ける形でドリフト。
見事なブレーキで、二人の前にセフィロト丸を止め――。
「ちょっとーっ!」
「っ!」
巻き起こった見事な飛沫が、陽光に照らされてキラキラと舞う。
「「「おおおおおお――――っ!!」」」
その光景に、ラフテリアの冒険者たちが思わず歓声を上げた。
セフィロト丸のあげた美しい飛沫は、通行人たちの目まで奪うほどだった。
「なんてね。まもりありがとう」
「か、勝手に盾が……!」
見事に飛沫から自分たちを守ったまもり。
どうやら身体が勝手に、盾を取り出して構えたようだ。
「お二人ともすみません。思った以上の飛沫になってしまいました」
「大丈夫よ。濡れてもすぐ乾くし、まもりがしっかり防御してくれたから」
「お待たせーっ!」
甲板から身を乗り出して、大きく手を振るメイ。
そうは言っても集合より30分ほど早いのも、いつものことだ。
陽光の港町に、飛沫を上げて到着した飛行艇。
そこから出てきたのがメイとなればもう、通行人たちの足はさらに止まる。
「今日は、この前のクエストの報酬確認からね」
「りょうかいですっ!」
「それでは出発します」
「はひっ」
こうして四人はセフィロト丸に乗り込むと、さっそく青空へと昇っていく。
通行人たちはそんなメイたちを、足を止めたまま見送るのだった。
「やっぱりラフテリア付近の空は、気持ちいいわね」
「はひっ」
「そう言えば、広報誌良かったですね」
「ああっ!」
そんな言葉に、頭を抱えるメイ。
「他のページは全部よかったのに、『野生の王、月を緑の大地に変える』ってページがあったんだよー!」
餅つきのシーンや、無重力空間を進むシーンはすごく楽しい構図で、話題になっている。
だが何より大きな目玉になっているのは、月に見える緑のクレーター。
「ぜひ見に行ってみたい」と、各所が盛り上がっているらしい。
「まあ、あのページにメイが入っている以上、そういう文言を入れたくなるわねぇ」
「は、はひっ」
「可憐な剣の一撃とかにはならないかな……?」
「ふふっ、それはもう嘘じゃない」
「くすくす、紅の翼の飛行場が見えてきましたよ」
セフィロト丸は、ブライト王国を目指して一直線。
機工都市には、多くのプレイヤーが集まっていた。
「飛行艇! セフィロト丸だ!」
「五月晴れだーっ!」
それはメイたちが飛行艇を駆る姿が、ブライトと紅の翼を人気にしているからだ。
「お、大型船に光が灯ってます」
そんな中、大型船が格納庫の中ではなく外に置かれてることに気づく。
どうやら月の調査を進めるクエストが動き出しているようで、紅の翼として月に向かってみたいと考えるプレイヤーも増えているようだ。
「月に向かうクエストも、これから始まっていくのね」
セフィロト丸を駐機場の一角に降ろしたメイたちは、ブライトの城内へと進む。
するとそこにはセレーネとムーナ姉妹、奇跡の生還を果たしたラビもいた。
「すっかり元気そうだねっ」
「はい、皆様のおかげで先日までとはまるで違う毎日になりました」
「これからは月に行って、色々説明したりすることもあるんだってさ」
二人は楽しそうに言う。
どうやら月の様々な知見を、伝える役を担っているようだ。
ラビも二人の間を行ったり来たりと、楽しそうにしている。
するとそこに、紅の翼の兵長がやってきた。
「待っていたぞ。ブライト王とモナココの王女様がお待ちだ」
兵長に呼ばれるまま、四人は応接の間へ。
そこにはブライト王と、モナココの王女が待っていた。
「今回は世界の危機と共に、新たな文明への道を作ってくれた英雄に、ささやかだが礼をさせてもらいたいと思ってな」
「お待ちしていました。一度ならず二度までも、ありがとうございました」
二人がそう言って片手を上げると、兵士が宝箱を持ってやってきた。
「ありがとうございます」
まずはツバメが、その内容を確認。
【ヴェノムバスター】:毒状態をすぐに発症させず、大きく蓄積させることで爆破時に広範囲にバラまく。最大まで溜めると『劇毒』になる。
「劇毒をバラまくことができるかもしれない……これはなかなか恐ろしいスキルですね」
「毒で減らしながら痺れさせるなんていう使い方もできそうね」
うなずきながら、レンも宝箱を開く。
【エンジェル・ハイロゥ】:聖属性の中遠距離高火力魔法。
「なんかいよいよ、聖属性にも上位上級っぽいスキルが……」
「こ、この道を進めということでしょうか」
「遠距離にも届くのは良いけど、また界隈がざわつくわね……」
報酬確認ならではの、うれしいのに複雑というレンの状況に、笑みをがこぼれるまもり。
続けて宝箱を開く。
【ウェアリングシールド】:状態異常攻撃などを盾で受けた後は数度、攻撃や防御で触れた相手にその効果を付与する。
「ど、毒まみれの盾を振り回せということでしょうか」
「でも、状態異常攻撃に対しての防御が強まるんじゃないかしら」
「触ったら状態異常が移る……なんだかドキドキだね!」
最後は、三人の報酬を見ながら歓声を上げていたメイ。
【重ね着】:防具やアクセサリーを二重装備できる。
「これは……どういうこと?」
「通常の防具に加えて、もう一つ重ねて着られる。普通に考えればステータス上げの効果が増すってことだけど……これまでは同時使用できなかったスキルがつながるのかも」
「だ、だとしたら」
「何か面白いことができそうですね」
メイの報酬は少し変わった内容で、話が盛り上がる。
こうして全ての確認が終わったところで、王が大きくうなずいた。
「重ねて礼を言うぞ。ブライトとモナココ、そして世界の危機を打ち払った英雄たちよ」
「貴方たちは、月の歴史にも残る救世主です」
王と王女に見送られて、月の壮大な物語を終えたメイたちは、ブライトを後にする。
「これでクエストの報酬確認も、完了ね」
「今日はどこに向かいましょうか」
「そ、そう言えば、京で気になる飲み物が……っ」
「そういうことなら、飲みながら行き先を考えるのもいいかもね」
「いいと思いますっ!」
月の冒険を終えたばかりの四人は、次を急ぐこともなし。
まずは新発売される飲み物を探して、京へ向かうことにした。
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