134.天地の御剣
「元気なお姫様だったねぇ」
「恐ろしいミッションでした」
「まったくだわ」
仕掛けを全て起動させないと気が済まない姫の、救出ミッション。
本来もっと人数と時間をかけて乗り越えるはずの難題を、たった四人で乗り越えたメイたちは無事に地軍城へ戻ってきた。
「……なあ、今年の地軍なんか違くないか?」
「あんな少人数なのに、ミッション達成がめちゃくちゃ早いよな」
「メイって子なら……何か起こしてくれるかも」
そんなメイたちを見て、にわかに盛り上がり出す地軍の面々。
するとそこに、新たなアナウンスが流れ始める。
『――――ヤマト某所に、次代の覇者を選ぶ証【天地の御剣】が降臨しました』
「てんちのみつるぎ?」
メイが首と尻尾を一緒に傾げる。
『――――両軍は【天地の御剣】を発見してください』
『――――『ヤマト天地争乱』は覇者の剣をつかんだ将軍側の勝利となります』
「……今度は、えらくシンプルね」
「全軍あげて剣を探し、将軍に掲げさせれば勝ち」
マーちゃんの声に、真剣さが混じる。
「当然、剣のある場所に両将軍がおもむくことになりますし、総力をあげての戦いになりますね」
どうやら『ヤマト天地争乱』は、いよいよ決着に向けて動き出すようだ。
「総力戦……っ」
その言葉に、メイは目を輝かせる。
「各所での小競り合いなどで多少数を減らしてはいますが、地軍はかなりの人数を温存できています。これも、皆さんのおかげです」
これまで地軍の仕事は、主に哨戒とオトリだった。
そのうえメイたちが少数精鋭で迅速にミッションを片付けたため、無理な戦いをする必要もなかった。
そのため、かなりの戦力が保持できている。
「それでもまだ天軍の方が多いっていうのが、恐ろしい話だけどね」
レンは苦笑い。
「地軍の皆さんには『御剣』発見のためヤマト各所に散開、花火や狼煙等を使った連絡をしてもらう形でどうでしょうか」
「いいと思うわ。私たちも外に出て御剣を探しつつ、発見の報が入り次第急行する形でいこうかしら」
「……地軍の初勝利、皆一緒にお祝いしましょう!」
そう言い残して、マーちゃんは地軍メンバーのもとに走り出す。
「いよいよですね」
「どんなことになっちゃうんだろう……っ」
一本の剣を目ざし、参加プレイヤーの全てが動く。
並々ならぬ気配に、メイはもうワクワクが止まらない様子だ。
「さてと、それじゃ最後に私からいくつか連絡を」
「「よろしくお願いします」」
いつもの手札確認、作戦の説明を始めるレン。
「……こんなところね。さ、いきましょうか」
「おおー!」
「おー」
拳を勢いよく突き上げるメイに、ツバメも続く。
笑い合う三人。
イベントは大詰めだが、メイたちは変わらず楽しそうだ。
◆
「いよいよ直接対決になりそうなミッションだね」
ローランが洋弓を手に、語りかける。
天軍城を出たグラム、ローラン、金糸雀の三人はヤマトの街中へ。
こちらも作戦は基本、メイたちと同じ。
すでに天軍のプレイヤーたちは、ヤマト中で【天地の御剣】探しに動いている。
「本当に思った以上だったな。地軍将たち結構強いぞ」
「メイちゃんは結構な能力を持ってるから、特に気をつけないとね」
金糸雀の言葉に、応えるローラン。
「グラムだ!」
そこに現れたのは、御剣探しに動いていた地軍パーティ。
この四人組は、地軍の中でもレベルが高い方に入る面々だ。
「こ、ここで戦わない理由はないよな」
「ああ、俺もそう思う」
「このミッションなら、どちらにしろどこかでぶつかることになるからな」
「トッププレイヤー相手ってもスキルや装備の相性で逆転することだってある! 行くぞ!」
四人は同時に動き出し、得意の陣形で天軍将ただ一人を狙いに行く。
するとグラムは白金の長槍を取り出して、大きく振り払う。
「なっ!? お、おおおおおお――――ッ!?」
四人全員が、一撃で吹き飛び消えた。
「このグラム・クインロードが、誰に気をつければいいというのだ?」
そう言って、強気の笑みと共に振り返るグラム。
「……それでも、グラムが負けることはねえなぁ」
「うん。御剣を取られちゃわない限りだけどね」
「そういうことだ。最悪でも地軍将と一騎打ちの状況さえ作れればいい。その時点で天軍の勝ちは確定するんだ。さあ、いくぞ!」
「うんっ」
「はいよ!」
グラムは槍を払い、インベントリへ収納。
白く長い髪を揺らしながら、【天地の御剣】目指して駆け出した。
ご感想いただきました! ありがとうございます!
姫はギャグ漫画的な転がり方をしてますね。
姫ミッション、天軍は三人+レベル高めプレイヤーで、上手に攻略する感じです。
お読みいただきありがとうございました。
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