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1335/1385

1335.無貌の獣

 健脚ウサギと、翼を持つジャガー。

 二つの形態を、行ったり来たり。

 そんな変身を使う戦いを見せたデラヴォロスは、残りHP6割強ほど。

 ここでその姿を、漆黒のクラーケンに戻した。

 その身体に走る、黒い紋様。

 多くの触手をマントの様に垂らした無貌の獣の頭上には、十字架をつないだ金冠のようなものがある。


「い、いよいよ本体でしょうか……っ」

「それでも、変身は入れてくる可能性がありそうです」

「戦闘中の変化には、充分気をつけましょう」

「りょうかいですっ!」


 ツバメとレンは3割、メイは2割ほどのダメージだが、まもりは5割というやや厳しい状況。

 あらためて集中し、戦闘の構えに入るメイたち。


「セレーネ」

「ムーナ、ラビ」


 後方で戦いの行方をうかがいつつ、隙を見ての攻撃を狙う姉妹も、互いを呼び合い戦いに集中する。


「触手、きますっ!」


 ツバメの言葉通り、同時に数本の触手が刺突を敢行。

 長さも自在に変えられるのか、緩い弧を描いて迫り来る。

 メイとツバメは連続刺突になる触手の攻撃を、速いステップでかわす。

 すると今度は左右から一本ずつ、触手がツバメを挟み込む形で接近。


「【スライディング】!」


 これを前方に滑ることでかわすと、それを待っていたかのように正面から迫る刺突の一撃。


「【跳躍】【投擲】!」


 ツバメは真上に跳んでこれを避け、【雷ブレイド】でかわしたばかりの触手に反撃。

 電撃が走るが、ダメージは極僅少。

 該当触手は硬直したが、本体まで異常効果が伸びることはないようだ。

 デラヴォロスはすでに、別の触手を動かしている。

 伸ばした一本を鋭い刃に変え、後衛に振り下ろしてきた。


「【地壁の盾】!」


 まもりは自分とレンを巻き込みそうな触手刃の接近を見て、盾を向ける。

 激しい衝突音と共に、弾かれる触手刃。

 見事な防御だが、デラヴォロスはさらに別の触手を手繰って攻撃。

 放った一本の触手は高速で、一直線にレンを狙って突き進む。


「っ!」


 レンはこの刺突を避けることに成功したが、先ほどまもりに弾かれた触手が、高い打点から刃を振り下ろしてきた。


「【ラビットジャンプ】【フルスイング】!」


 横から駆けてきたメイのジャンプ斬りが、触手刃を斬り飛ばす。


「ありがとうメイ!」


 レンはメイに杖を持ち上げて感謝しながらも、敵の動きを確認。

 やはり触手は斬られても復活し、HPの減りもかなり少ないようだ。

 触手に対応しながら本体に攻撃するのが、この戦いの要点。

 ここまでの流れで、各自がその事実を把握したところで――。

 デラヴォロスは触手たちを後方に流しながら前進し、メイたちとの距離を詰める。そして。


「攻撃、たくさん来るよっ!」


 メイがそう叫んだ直後、無数の触手が一斉に放たれた。

 それは突然、斬撃の嵐に巻き込まれたかのような状態。

 どう考えても『全員防御しろ、遅れたらダメージ』という範囲攻撃だ。しかし。

 メイはこの触手鞭の乱打を、広い視界を保ってかわす。


「【アクロバット】!」


 横から迫っていた触手を側方回転でかわすと、そこに来るのは斜め上方からの叩きつけ。

 着地際を狙う攻撃は、最悪の事態と言える。だが。


「【装備変更】!」


 メイは次の攻撃が来る位置まで見た上で、跳躍していた。

【狼耳】への変更で、着地と同時にローリングして触手を回避。

 そこに真横から来る三本目と四本目の触手に対して、すでに準備していた剣を華麗に振るう。


「【フルスイング】からの【フルスイング】っ!」


 四本目の触手は、メイだけでなくツバメの死角を突くはずの攻撃だった。


「【スライディング】!」


 しかしメイが斬り飛ばしたことで、刃の嵐に余裕をもって立ち向かうことができる。


「【クイックガード】【地壁の盾】盾盾盾盾っ!」


 まもりは二枚の盾を使って、触手乱舞をガード。

 見事にレンを守ってみせる。

 嵐のような攻勢の終わりに、安堵する四人。

 その瞬間デラヴォロスが、メイたち四人の方に向けて発進した。

【死天スクリュー】は、刃に変えた触手を広げて行う回転特攻。

 触手刃を振り回しながら高速飛行で迫るそれは、まるでミキサーだ。

 飛行機のエンジンに巻き込まれるような、恐怖の広範囲高火力攻撃。


「【加速】【リブースト】【跳躍】!」


 しかしメイの触手斬りによって余裕を感じていたツバメは、この【特攻】の範囲を抜け出すことに成功。

 見事に難を逃れてみせた。


「【穴を掘る】!」

「【不動】【コンティニューガード】【地壁の盾】!」


 メイたちも、これをしっかり回避。

 通り過ぎていったデラヴォロスは長い制動の後に、振り返った。

 そして数本の触手による伸長刺突で、今度こそはとツバメを叩きに行く。


「【跳躍】【エアリアル】!」


 これを二段ジャンプで上手に避けると、デラヴォロスは一気に接近。

 ウサギ型に変身し、空中のツバメを狙って【閃光雷神蹴り】を放つ。しかし。


「【ターザンロープ】!」


 そんなツバメの足に、かかるロープ。

 メイが引っ張ると、【閃光雷神蹴り】は空振りしてそのまま地面に降りる形となった。


「【フレアバースト】!」


 回収したツバメを抱きしめ笑うメイと、思わず赤くなるツバメ。

 そこを見逃さずに放ったレンの爆炎が炸裂し、デラヴォロスは後退する。


「……なんか、勢いがあった割には普通に反撃されて終わったな」

「メイさんの動きが、味方の攻防に良い影響を与えていますわね」


 白夜がつぶやく。


「あの触手斬りで、ツバメさんとまもりさんの負担が減ったぽよ!」

「その結果どう考えても敵が圧倒的優位を振るうはずの時間が、大したダメージもなく反撃まで入れられて終わりましたわ」


 メイの回避や防御が生み出した効果に、白夜は思わず感嘆の息をつく。

 ここでようやく流れる、安堵の空気。


「やっぱり変身を使ってきたわね……待って」


 しかしウサギが始めた動きは初見のもの。

 レンは注意深く様子をうかがう。

 すると目に灯った光が真っ赤に輝いた直後、メイの目の前に生まれた赤い光球が一気に広がっていく。


「あれ……?」


 驚異的な早さで広がる光に飲み込まれるも、ダメージがなく戸惑うメイ。

 しかし視界は赤く染まっていき、身体の自由が利かなくなっていく。


「まさか! メイだけは絶対にダメッ!」


 叫ぶレンの、嫌な予感は当たる。

【狂眼光】は球形の範囲内にいた全員に、『バーサク』をかけていくスキルだ。


「低空――」


 当然助けに行けば自分も巻き込まれる可能性があり、二人同時に『バーサク』になってしまえば敗北は確定的だ。

 レンがその足を、止めた瞬間。


「【天雲の盾】【チャリオット】!」


 迷うことなく駆け出したのはまもり。

 メイのもとまでたどり着くと、盾を突き出した。


「メイさんごめんなさいっ! 【シールドバッシュ】!」


 メイを【狂眼光】の範囲外へギリギリで弾き飛ばすことに成功し、最悪の事態を逃れる。


「【コンティニューガード】【天雲の盾】!」


 まもりはすぐさま盾を構えて『狂眼』に対応しようとする。

 しかし視界は、赤くなっていく。

 どうやら盾で光から身を守っても、完全に狂化を防ぐことはできないようだ。


「本体を叩けば! 【フレアストライク】!」


 こうしてる間にも、広がっていく効果範囲。

 レンは下がりながら攻撃を仕掛けるが、デラヴォロスはこれを回避した。

【狂眼光】は敵を動かしても、その効果を止められない。


「そうです! まもりさん、状態異常なら【月見団子】ですっ!」


 始まったまさかの危機。

 ツバメの声に、まもりはすぐさま動き出す。


「【食べ歩き】【大食い】!」


 ルアリアの警備魔導鎧にもらった、たくさんの【月見団子】

 そして【食べ歩き】は、片手で武器や盾を使いながら食事ができる変わり種スキル。

 さらに同じ料理を食べることで、料理効果の『重ねがけ』が可能になる【大食い】

 まもりは片手で盾を持ったまま、とにかく団子を食べ続ける。


「っ!」


 すると上がり続けていた『バーサク』ゲージが、ギリギリのところで停止。

 どうにか、耐え切ることに成功した。


 逃れた最悪の事態。

 しかしデラヴォロスは、安堵の息が広がる瞬間を逃さず急接近。

 結果最前に出てくることになったまもりに向けて、攻撃を開始する。


「まもり!」

「はひっ! 【溜め防御】【クイックガード】【地壁の盾】!」


 手が空いたまもりは、正面から受けて立つ。


「盾盾盾盾! 盾盾盾っ!」


 触手による攻撃を、受けて弾いて守り抜く。

 するとデラヴォロスはその姿をウサギに変更し、【マッド・スタンプ】で崩しに来た。


「や、やーっ!」


 これをタイミングを合わせた垂直ジャンプで、どうにか回避。

 着地して息をついたところに、ジャガーと化したデラヴォロスが放つのは【小さな太陽】

 まさに怒涛の攻勢だが、まもりも引き下がらない。


「いきます! 【暴食の盾】!」


 新スキルを開放すると、煌々と輝く灼熱の炎弾を盾に飲み込ませた。


「みんなも同時に攻撃して! 【フリーズストライク】!

「【連続投擲】!」

「お願い、いーちゃん!」


 さらに氷砲弾と電撃と、烈風が盾にまとめて吸い込まれる。

 するとまもりは、まるで大砲でも向けるかのように、盾をデラヴォロスに向けた。


「リリース!」


 太陽のごとき輝きに青白い吹雪が混ざり、その間に稲妻が走るとんでもない一撃が、渦巻く風に乗って直撃。

 全ての天災に巻き込まれたかのような凄絶な光景、そして音に息を飲む。


「これ、ちょっとすごすぎない?」


 さすがにこれには、吹き飛ばされて落ちるデラヴォロス。

 だがメイは、止まらなかった。


「まもりちゃん、ありがとーっ!」


 バーサクの危機を乗り越えたメイは、まもりとハイタッチ。

 それからその手を大きく上げて、【密林の巫女】を発動する。


「みんな、大きくなーれ!」


 その言葉に応えるように、前もってまいておいた【豊樹の種】が一斉に伸び始めた。

 その光景に、思わず見とれてしまうレンたち。

 同じく『竹』や『ツタ』に『世界樹』までもが伸び出して、月の荒野が緑に覆われ密林と化していく。そして。


「いきますっ!」


 メイは掲げた手を、そのまま振り下ろす。


「【大自然のお仕置き】だああああ――――っ!!」


 まもりの一撃にようやく身体を起こすデラヴォロスのもとに、伸びる無数の木の根。

 慌てて回避行動に入るが、大量の木々から伸びる根は、逃げ場など与えない。

 その身体をつかめば、一瞬でツタが身体を蝕んで行く。

 身動きが取れなくなったところに伸びる枝が斬り、竹が刺す。

 捕らえられたデラヴォロスは、あっという間に傷だらけになった。

 さらに全身に絡みついた草たちが魔力を吸い、そのエネルギーで花を咲かせていく。

 やがて花が落ちると、まるで全てを吸いつくされたかのように、力なく崩れて落ちるデラヴォロス。


「木々が深いほど威力を増すスキルなのですね……密林そのものが敵になって攻撃とは驚きました」

「捕まったら終わりだけど、捕まらないのは無理なレベルね……」

「ま、まさに大自然の怒りですね……っ」


 自然の全てが牙をむく。

 そんな驚異的な範囲攻撃に、レンたちは呆然と木々を見つめる。


「す、すげえ……なんだあの攻撃ィィィィ!?」

「植物、いえ森そのものが攻撃する。メイさんすごいです……っ!」

「どこか一つズレていただけで半壊、最悪バーサクメイさんで全滅してもおかしくありませんでしたわね」

「それなのにこの激しい戦いの中で、ダメージらしいダメージを受けたのは敵だけだったぽよ……」


 各自の驚きどころが、入れ乱れる。

 紅の翼の飛行艇は、メイたちの凄まじい戦いぶりに大騒ぎになっていた。

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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クイズは正確ですね 模範解答と模範解法は メロンパンさんの解答 ○ < ◎ < ○ < ◎ < ○ < ○ < □ < □ < □ < □ 現在の日本のお金を表しています。 ○が穴のあいていない硬…
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