1328.アンブラ王との戦いⅡ
本来、恐ろしい攻撃になるであろう透明化スキル【ヴァニシング】
これをメイは、広範囲の大回転斬りで弾き飛ばした。
「姿を消す攻撃は、そこまで脅威にならないわよ」
メイの【聴覚向上】がある以上、その驚異は半減。
「それはどうかな?」
しかし見事な反撃を決められたオブスクルスは、それでも再び姿を消して攻撃に入る。
「ツバメちゃん!」
「はいっ!」
次の狙いは、ツバメ。
しかしこれを早い時点で通達したことで、覚悟を持って対応できる。
姿が現れたのは、目の前。
放つ右の拳打を、下がってかわす。
すると再びの消滅。
直進して放つ左の拳は、発生前に姿がブレて見え出すため、ツバメはこれをさらに下がって回避する。
見事な回避を見せたツバメ。しかし。
三度目は、引いた手に輝く光。
「どちらでしょうか……っ!」
思い出すのは、突き出す拳から強烈な衝撃波を放つ【破岩烈拳】
もう一つは敵をつかんで爆破する【竜のアギト】
この時点で、どちらかは分からない。
悩むツバメが選んだのは――。
「……【スライディング】」
イチかバチか、勘の【スライディング】
するとつかみに来る【竜のアギト】を、かわすことに成功。
【跳躍】を選んでいたら、間違いなくつかまっていた。
「この幸運の使い方……次の【スティール】は長い戦いになりそうです【反転】!」
ツバメが振り返ると、そこには同じくこちらに振り返りながら消えていく、魔導鎧が見えた。
「【瞬剣殺】!」
ここでけん制の範囲攻撃を放つが、オブスクルスはこの網にはかからない。
「……音が、消えた」
一度大きく聞こえた、魔力の噴出音。
メイが対象を『聞き失い』、わずかな時間が経った後――。
「ああっ! 上だーっ!」
ブレて現れた魔導鎧の手には、再び大型のハンマー。
真上に跳び上がっていたオブスクルスは、一回転した後に落下。
そのまま地面にハンマーを、全力で叩きつけにいく。
「【ガイアバンカー】!」
もちろんこれは、直撃狙いだけでなく範囲攻撃として使える一撃。
地面とハンマーがぶつかった瞬間、広がる第一波の風。
遅れて強烈な衝撃波が、猛スピードで広がっていく。
メイとツバメはすぐさま防御態勢に入り、レンも回避は不可能と踏んで続く。
そんな中で、まもりだけが待っていましたとばかりに反応。
「【かばう】【錬金の盾】大型化! 【天雲の盾】っ!」
ムーナも必ず危険にさらされる瞬間があると予想していたまもりは、すぐさま盾を大型化して地面に突き立てる。
直後、吹き荒れる衝撃波にレンとツバメが転倒を奪われ、メイも『電車が急に揺れた』くらいの感じで体勢を崩した。
「ありがとう!」
「ぶ、無事でよかったですっ!」
ムーナはラビを抱えてノーダメージ。
一方両手をブンブン回して持ち直すメイ、防御に成功したまもり。
この状況なら当然オブスクルスは、転倒した二人を狙う。
魔力スラスターの出力を一気に上げつつ、姿を消す。
転倒状態にあるツバメとレンは、どちらに来るのか、どんな攻撃で来るのかという二つの問題に迷うことになる。
ブレる映像のように、現れる魔導鎧。
その狙いはレン。
念のために掲げていた杖とは、違う方向からの急な登場。
「見ろ、終わりだ魔導士――――【パグナス・ギガンテ】!」
「っ!!」
この状況からでは、もはや回避も防御も不可能。
猛烈なエフェクトをまとわせたハンマーを振り下ろすため、オブスクルスがその足をついた瞬間。
「解放っ!」
【設置スキル大型化】によって大きく範囲を広げた【設置魔法】【フレアバースト】が爆炎を巻き起こした。
「杖は正面、設置は左右での『待ち』! 上手くいってくれたわ! メイ、追撃お願いっ!」
「お任せくださいっ! 【装備変更】っ!」
生まれた隙に、自然と向け合う視線。
メイは頭装備を【狼耳】に換えて、右手を高く突き上げる。
「それでは大きな拍手でお迎えください! ――――虹蛇さんです! どうぞーっ!」
足元に描かれる魔法陣から出て来たのは、美しい色使いの鱗を持つ巨大蛇。
メイの肩に頬を擦りつけると、その長い舌をチロチロさせて敵を確認。
「それでは、一緒に行きましょうっ!」
爆炎によって吹き飛ばされたオブスクルスは、地を転がりながら体勢を整え直し、再び姿を消した。
それを見て動き出す、【群れ狩り】のメイと虹蛇。
「【バンビステップ】!」
メイは耳で、虹蛇は温度を感知する目で、迷うことなく突き進む。
そしてオブスクルスの接近を確信したところで、手にした剣を振り下ろす。
「【フルスイング】!」
「くっ!?」
見事な攻撃を、オブスクルスは急停止で緊急回避する。
その操縦は見事だが、急に止まってしまえば『視えている』虹蛇が見逃すはずがない。
長い尾を叩きつけて地面を跳ねたところで喰らいつき、魔導鎧をつかまえる。
「なんだとっ!?」
それから昇り竜の様に首を伸ばし、そのまま地面に叩きつけた。
「お願いしますっ!」
「はいっ! 【加速】【リブースト】!」
高く跳ね上がるオブスクルスに対し、駆け込んできたのはツバメ。
「【雷光双閃火】」
突き刺す三本の短剣が次々に激しい火花を上げて、盛大な爆発を巻き起こす。
それから戻ってきた短剣を華麗に回収すると、駆けつけて来たメイとハイタッチ。
「ありがとーっ!」
「ありがとうございました」
魔法陣に飛び込むような形で帰っていく虹蛇を、二人手を振って見送った。
「……この特別機体が押されるか。どうやら青き星の戦力を低く見積もり過ぎていたようだ」
オブスクルスは、一息ついて立ち上がる。
そして、その兜を取ってみせた。
装備の解除という意外な展開に、驚くメイたち。
「ルナフォーに眠る獣たちの起動を急げ。『率いる者』を今すぐにこちらに向かわせるんだ」
そして指示の通信を飛ばし、息をつくオブスクルス。
この戦いをムーナの後ろで見守っているラビに、思わず目が向く。
『率いる者』が動き出せば、狂ったラビを倒さないと進まない展開が予想される。
それはなんとしても、避けたい事態だ。
「思わぬ善戦、褒めてやろう。このような戦いは久しぶりだ。だが……月の王にして青き星の新たな支配者であるこのレクス・オブスクルスが、この程度で終わるはずがない」
「「「「っ!?」」」」
そう言って笑うと、突然魔導鎧が全てパージされた。
「一度は最強種デラヴォロスによって潰えた我が野望。それはセレーネにその全てを委ねていたからだ。だが当然私もかつてのままではない。今は私自身が最強種を留めるほどの抑止力となった」
「どういうこと?」
魔導鎧の強化を予想していたレンは思わず、問いかける。
するとオブスクルスは、邪な笑みを浮かべた。
「自身に……月の獣の因子を取り込むことで」
言葉にした直後、全身から魔力があふれ出す。
両肩が一段上がり、腕が何倍もの太さに変わる。
黒の毛並みに白銀の紋様を持つ二足型の人狼は、高さ2メートル強というところ。
だが恐ろしい牙と爪は、煌々と白く輝いている。
「お、狼男ですか……?」
「狼男って、本人が月にいても狼に化けられるものなのでしょうか……?」
ツバメがそんな疑問を口にする中、オブスクルスは静かに両手を開く。
「見せてやろう。月の獣の因子を我がものとした、剛爪の閃きを!」
宣誓し、踏み出す強烈な一歩に巻き上がる砂煙。
「速いです……っ!!」
それはツバメが思わず驚きの声を上げるほどの、驚異的な疾走だった。
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