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1318.ウサギが守るもの

「ついて来いって」


 襲われていたウサギを、救出したメイたち。

 一転うれしそうに先行するウサギの後に、少女がついていく。

 その先にあったのは、一つの部屋。


「このウサギは、ここを守っていたのかしら」


 少女とウサギが先行することで、めずらしくレンは最前にならない形での入室。

 踏み込むと、そこはシンプルな造りの部屋だった。

 白色に淡い水色の線の入った壁、二つのデスクに乗った三日月形のランプ。

 そして、二つのベッド。


「この部屋は……」


 立ち尽くす少女。

 頭を抑えて足をフラつかせていると、ウサギが軽やかなジャンプでテーブルのカゴに入った。


「っ!?」


 ウサギが入ったカゴ。

 そしてあらためて部屋を見回した少女は、頭を抱えて座り込む。そして。


「あ、ああ……っ」

「だいじょうぶー?」


 メイが声をかけると、少女はその目を見開き呆然、

 やがてゆっくりと、その顔を向けてきた。


「……思い出した」

「もしかして、記憶が戻ったの!?」


 レンが問いかけると、少女はうなずき立ち上がる。


「私は、私の名前はムーナ。ルアリア王家の末娘。そして……」

「そして?」

「永い眠りについていたのは、セレーネを待つため」

「セレーネ?」

「私のお姉ちゃん……そして今もきっと、この月にいる!」


 いよいよ記憶がハッキリとしてきたのだろう。

 少女は早口で、過去を語り出す。


「月は争いの中にあったの。アンブラとテネブラエが争い、そこにルアリアも巻き込まれるような形だった。私たちはルアリアの高官の一人から『私たちにはこの戦いを終わらせる力がある』と言われて……アンブラへ連れて行かれたの。それは強い魔力を持つルアリア王家の中でも、特別と言われる力を持っていたから」

「……その高官は、潜り込んでいたアンブラかテネブラエ辺りの手先だったとか?」


 レンの問いに、ムーナが大きくうなずく。


「アンブラは月を支配するために、恐ろしい魔物を造り出していたの。その中でも月の覇権を奪えるほど強力な力を持つ最強種の作成には、『制御者』が必要だった」

「飛行艇で戦った巨竜をモナココでは『月の獣』と呼んでいましたが、今回話題に上がった最強種の制御には、特別に強い魔力を持った人間によるブレーキが必要だったわけですね」

「そう。そして続く戦いを目の当たりにしてきた私たち姉妹は、『争いを終わらせるため』と騙されるような形で制御者になった……でも」

「で、でもなんですか……?」

「圧倒的な強さでテネブラエに勝利した後も、月の獣はおとなしくアンブラ司令部の指示に従っていたの。そして『制御者』などいなくても御することができると思わせたところで、突然の攻撃を始めた。初手で司令部を失ったアンブラは大きな窮地を迎えることになった。そこにこれまで生み出してきた『月の獣』たちも暴れ出して、月は大きな危機に見舞われたの」

「それで、どうなっちゃったの?」


 メイはドキドキしながら、月とムーナたちの命運を問う。


「重力制御の技術を狙われていたルアリアは、元々自衛のために戦ってた。だからテネブラエの惨状と月の危機を知って、用意していた『大型船』で月から脱出することを決めた」

「二人はどうしたのー!?」

「お二人はまだ、アンブラにいたのですよね?」


 いよいよ、身を乗り出すメイとツバメ。


「中枢への攻撃を受けて、指示の系統などが途切れたアンブラにはもう、私たちを拘束しようとする者はいなかった。だからルアリアに逃げ帰った」

「か、帰ることができたのですね……」


 まもりも安堵の息をつく。


「……ということは、ムーナは月を離れる大型船に乗り込んで今のモナココへ来た。そして永い眠りについたって感じかしら」


 レンの言葉に、ムーナがうなずく。


「でも、モナココにお姉さんはいなかったと思うけど? それに、どうして長期の睡眠を選んだのかも分からない」

「大型の月の獣は、アンブラの開発者に『重力制御の宝珠』を狙うように設計されているの」

「もしかして……お姉さんは月に残ったとか?」


 再びムーナがうなずく。


「最強種が大型船を追ってしまえば、目的の青い星につく前に船を破壊されてしまうかもしれない。だからセレーネは月に残って……最強種を眠らせることを選んだ。そして自身も同じように眠りにつき、獣が目覚める度にセレーネも目を覚まして、再び眠らせる。そんな一生を月で過ごすと決めた。最強種を生み出すきっかけになってしまった責任を取って」

「そして貴方も生き別れになった姉が一人にならないよう、モナココの地下で眠り続けていたわけね」

「そう。月の獣を封じ続けるために月に一人残ったセレーネ。その目ざめは月の獣と同じ時。だからその時が来たら必ず会いに行くと決めて、私も永い眠りについたの」

「それから長い年月が経って、テネブラエやアンブラを崩壊させた月の獣が目覚める時が来た。それにともなって飛行珠を狙うアンブラのシステムが起動して、『ターゲット』の光を放ち出したわけね」

「警報は、セレーネが鳴らしたんだと思う。青い星に降りた、ルアリアの末裔に危機を知らせるために」


 だとすればセレーネも今、目覚めていると考えられる。


「私はセレーネに会いたい。そしてできるなら、制御者としての役目を代わりたい」

「国を亡ぼすほどに強力な月の獣を止められるのは、姉妹が持つ『制御者』としての力だけ。だからセレーネさんは月を離れられず、警報を鳴らして危機を知らせた」

「……きっとそう。でも今度は私が身代わりになって、月の獣を再封印する。だから私を……月の獣が眠る国、アンブラに連れて行って欲しい」


 ついに見えてきた、クエストの背景。

 人のいない月と、ムーナの過去。

 レンは、この物語の行く末を予想する。


「月の獣を打倒すれば役目から解放。再封印なら姉妹を犠牲にするけど世界は延命。そんなシナリオかしら」

「ええっ!? 今度はムーナが、月の獣の目覚めを待つことになるの!?」

「姉妹が交互に、永い眠りを経て魔物を封じ続ける……まるで神話ですね」

「とにかく行きましょう。まずはセレーネに会いに」

「うんっ」

「もちろんです」

「はひっ!」

「そこからはおそらく、私たち次第よ」


 レンがそう言うと、メイは大きく息を吸って気合を入れる。


「月の獣に勝てれば、二人とも助けられるんだよね!」

「まだ分からないけど、たぶんそうなると思う」


 うなずくレン。

 しかしムーナはゆっくりと首を振る。


「……そんなこと、できるはずない。あんな恐ろしい化物……人間にどうにかできる領域を超えてるよ」


 だがメイは、さらに言葉を続ける。


「大丈夫だよっ! わたしたちにおまかせくださいっ!」


 そして笑顔で、胸を叩いてみせた。

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― 新着の感想 ―
長い時の間、何度も起きては封印を繰り返す…。 え、お姉さん大丈夫?おばあちゃんになってない? それとも某戦闘民族みたいに、青年期が長くて若々しいのかな? それに制御者が2人いれば最強種も爆睡な気がす…
おお、久し振りの「おまかせくださいっ!」だ! これが出たメイちゃんは頼もしいぞ!
そう、人間にどうにかできる領域ではない。 どうにかできるのは野生の王、大自然の巫女、陸海空を制し異世界の化け物を跳ね返したメイちゃんwith五月晴れ以外にいない!
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