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1316.宮殿のウサギたち

 小さな宮殿のホールを支配していた月の大ウサギは、思わぬ強さ。

 二メートル半ほどの体躯ながら、強弱のある自在な跳躍から放つ攻撃は侮れない。

 さらに魔法陣から噴き出した子ウサギの波は、まもりに3割近いダメージを与えた。


「来るよっ!」


 機敏な四足歩行で走り出し、勢いがついたところでショートジャンプを織り交ぜ接近。

 メイとツバメの間を速い跳躍ですり抜け、狙うは後衛だ。


「ジャンプの種類が本当に豊富なのね、でも! 【誘導弾】【フレアストライク】!」


 敵の攻撃範囲に入ってしまう前に、レンは着地直後を狙った炎砲弾で攻撃する。

 すると大ウサギの跳躍に、エフェクトが発生。

 前方への低空高速跳躍は強引で、炎砲弾に正面からぶつかったが、ダメージを受けても止まらない。

『肉を切らせて骨を断ちに来る』形での、飛び掛かりだ。


「魔法を、抜けてくるなんて……っ! きゃあっ!」


 単純なタックルも、敵の大柄さゆえにレンは大きく弾き飛ばされた。


「【投石】!」

「【投擲】!」

「【ストライクシールド】!」


 ここで三人は、即座にフォローの中距離攻撃。

 これを月ウサギは回転跳躍でかわして、さらにレンを追い続ける。


「そうはいかないわ! 【誘導弾】【フレアストライク】!」


 レンは再びの炎砲弾で攻撃。

 だが月ウサギはこれも、華麗な低いジャンプで回避。

 見事な連続跳躍に思わず息を飲む。しかし。

 そのまま飛び掛かろうと、大ウサギが高い跳躍をしたその瞬間。


「【フルスイング】だああああ――――っ!」


 突然の声に驚く。

 なんとかわされて飛んでいった炎砲弾を、メイが【魔断の棍棒】で打ち返していた。

 もともと良い角度で跳ね返されたところに、【誘導弾】による訂正効果が乗り、空中の大ウサギを吹き飛ばす。


「【誘導弾】【連続魔法】【フレアアロー】!」


 レンはメイに、ウィンクでお礼を一つ。

 メイがお返しのウィンクしようとして、両眼をバッチリ閉じたのに笑いながら炎矢を放った。

 月ウサギは無理をせず、これを防御。

『ピュイ』と歯を笛のように使って、高い音を響かせた。

 そして前衛のツバメ目がけて駆け出すと、そのまま大きく跳躍。


「「「「っ!?」」」」


 空中で、まさかの魔法陣展開。

 その手に握られたのは、大型の杵。


「餅つきですか……っ!?」


 叩きつけの攻撃を、ツバメはしっかりとバックステップで回避する。


「っ!?」


 しかし杵が地面を叩いた直後、巻き起こる衝撃波に体勢を崩す。

 すると大ウサギの頭上を跳び越えて、一匹の小型ウサギが特攻して来た。

 突撃の威力は低いが、転倒させるには十分だ。


「ツバメちゃん、まだいるよっ!」

「【受け身】!」


 聞こえたメイの声に、ツバメは速い起き上がりを選択。

 すぐに顔を上げると、三方向から順に飛び掛かってくる小型ウサギの姿。


「【チェーンキル】!」


 ツバメはすぐにスキルを発動して、短剣を構え直す。


「【アサシンピアス】【アサシンピアス】【アサシンピアス】!」


 右手左手右手。

 手にした短剣の華麗な三連突きで、【嚙り付き】に来たウサギたちを一発打倒。

 そこに飛び込んでくるのは再び、杵を持った大ウサギだ。


「っ!」


 振り降ろしをバックステップでかわすと、大ウサギはさらに空中回転。

 続け様の振り降ろしが突き刺さり、衝撃波が足元を大きく揺らす。

 先ほどの歯笛は小型を呼び寄せる、大ウサギの攻撃スキルだったようだ。

 再び足元をフラつかせたツバメに、今度は十数匹の子ウサギが迫り来る。

 一斉に飛び掛かり、放つは容赦のない【嚙り付き】


「【かばう】【ローリングシールド】!!」


 ツバメの前に割って入ったのは、まもり。

 手にした【大きなフライパン】で、跳んできた子ウサギをまとめて打ち返した。


「まだだよっ!」


 しかしその直後を狙った大ウサギ本体が、杵を手に駆け込んでくる。

 大小ウサギの波状攻撃は、なかなかにやっかいだ。


「【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!


 四つの炎弾を、低めの跳躍でかわす大ウサギ。


「【フルスイング】!」


 さらに大きな振り降ろしで迫るメイの攻撃を、前方への大きな跳躍でかわしてまもりのもとへ。

 大ウサギの【嚙り付き】は、敵の盾ごと噛みついて振り回すほどの一撃。

 まもりにとっては、非常に相性の悪い攻撃だ。

 しかしメイの高火力攻撃を確実に避けるため、高い跳躍を選んだことがアダとなる。


「【エクスプロード・ランス】!」


 得意のジャンプが高かったために、生まれた対応の時間。

 突き出された長い槍が直撃し、盛大な爆発を巻き起こした。


「あ、ありがとうございますっ!」


 レンがけん制し、メイが続くことで跳躍が高くなる。

 そして長い滞空は、そのまま隙を生む。

 まもりが絶好の攻撃チャンスを得られたのは、二人の見事な連携によるものだ。

 まもりが頭を下げると、レンは再びウィンクで返し、メイは今回もぎゅっと両眼を閉じて合図とした。


「……もしかして!」


 そんな中、不意にツバメがつぶやいた。

 大ウサギがちょうど『その範囲に』跳ね転がっていったのを見て、走り出す。

 それから、レバーを引いた。

 すると一瞬で重力が、数倍に上昇。

 大ウサギの転がりが止まり、天井にかけられていたシャンデリアが落下。

 直撃して砕け散り、派手な破砕音が鳴り響いた。

 これによってHPが、残りわずかのところまで減少。


「重力、ここもホールの中央部は変えられるみたいです」

「なるほどね。やけに動きがいい敵だと思ったら、そういう要素もありだったわけ」


 ギミックが解け、重力が戻る。

 すると大ウサギは、砕け散ったシャンデリアを払い飛ばして起き上がった。そして。


「ピュイイイイイイイイイイ――――――ッ!!」

「「「「っ!?」」」」


 鳴り響く歯笛の音に、集まってくる大量の小型ウサギ。

 その全てが、ツバメをにらむ。


「ツバメ!」

「ツバメちゃんっ!」


 大ウサギと共に、怒涛の勢いで走り出す子ウサギたち。

 レンが杖を構え、メイが剣を掲げる。

 そして二人が攻撃態勢に入った、その瞬間。


「では、いきます」


 あらためてツバメが、レバーを反対側に引く。

 ギミックの使用は『重』『反』の二つを一度ずつということなのだろう。

 レバーは折れて、これ以上の重力制御は不可能となった。しかし。


「おおーっ!」


 メイが思わず声を上げる。

 ツバメを狙ってしまったことが、アダとなった。

 重力制御の範囲に入り込んでしまったウサギたちは、まとめて空中へ。

 高い天井に、まるで白雲のようなウサギの塊を生み出した。


「レンさん、お願いします」

「了解っ! 【フレアバースト】!」


【ヘクセンナハト】によって攻撃範囲を大きく広げた爆炎が、大ウサギに直撃して炸裂。

 爆炎に巻き込まれた小型ウサギたちと共に、粒子となって消えていった。

 こうしてメイたちは見事、ホールを占拠していた月の大ウサギを打倒することに成功したのだった。

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耳が良いなら、メイの雄叫びがかなり効くのでは?
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