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1303.第二の警報

「敵国を撃つため、また重力の扱いに長けた『ルアリア』の技術を狙うため、作り出された魔物がいる」

「月の現状は分からない。でもターゲットを示す紋様の投射と、危険警報は動いているということですね」


 この星に逃げてきた者たちが住んでいた月都市の名が、ルアリア。

 それはやがて、モナココへと名前を変えた。

 思わぬ大きな話に、ドキドキするメイは尻尾をブンブン。

 今回はレンも思わず、メイの肩に両手を乗せて目を輝かせている。

 そんな中――。


「「「「っ!?」」」」


 突然地下室内に鳴り始めた、猛烈な警報。

 何か大きなことが起きるのだと、即座に分かるほどの音量だ。


「ええっ!? どうしたの!?」

「一体、何が起きたのでしょうか」

「これはなに?」


 レンは問いかけるが、モナココ王女は首を振る。


「分かりません! こんな事態、私は知らない……っ!」


 たくさんの資料が並んだ書庫のようなこの場所は、ルアリア時代からある遺跡の浅い階層に当たる空間だ。


「……ごくり」


 謎の光と音にまつわる不穏な事実が分かった瞬間に、鳴り響く新たな警報。

 まもりが思わず息を飲むのも、無理はない。


「とにかく、音源になっている場所を見に行ってみるべきよね」

「うんっ」


 メイとレンがうなずき合えば、ツバメとまもりも続く。


「で、では、こちらです」


 この書庫のような空間には、さらに下層階がある。

 四人は王女と考古学者を連れて、階段を降りていく。

 警報の音を強く感じるのは、音源に近づいているからだろう。

 歴史の詰まった地下階は、広い。

 その最奥にあった部屋には、またもたくさんの本棚。


「何かありそうね」


 並ぶ本棚は、背後に壁を背負っている。

 しかしその中に、ちょうど本棚一つ分だけ空いた空間があった。

 メイが空いたスペースに隣の本棚を動かすと、並んだたくさんの本棚が一斉に移動を開始する。

 そして並びを替えたところで、一斉に床に埋まっていく。

 やがて本棚の天板が床の一部になったところで、そこに描かれていた魔法陣がつながり完成。

 床に新たな下り階段が現れた。


「すごーい……!」

「この演出、何があるのかワクワクするわね……!」


 四人はもちろん、階段を下る。

 たどり着いたのは、真っ白なホールだった。

 その真ん中には、最奥の扉へと続く青の絨毯。そして。


「……魔導甲冑」


 立ち塞がる個体の高さは、2メートルほど。

 遺跡特有の、光沢感がない軽金属は白色。

 各部を鈍い銀色のパーツでつないだ全身鎧は、かつて戦ったグリンデルの甲冑を、ずっしりとさせた様相をしている。


「王女様、これは?」

「追われるルアリアの民が、身を守るために生み出した『自動型』の『魔導鎧』のはずです」


 今の時点では、眠るように制止している魔導鎧。

 その手には、体高と同じ長さを持つランス。

 反対の腕には騎士盾。

 言わずとも、四人は得物に手を伸ばしながら絨毯を進む。


「起動したわ」


 兜の隙間に、輝く白色の魔力光。

 ランスを取り、メイたちがホールの中心まで来たところで――。


「きたよっ!」


 噴き出す魔力による高速推進で、一気に距離を詰めてきた。


「「「「ッ!!」」」」


 ホバー移動中に、突然の急加速。

 ランスによる特攻突きは、重い破裂音を鳴らすほど。


「【かばう】【地壁の盾】!」


 先頭に立ったまもりの盾と、ランスがぶつかり激しい衝突音を響かせた。

 その威力は高く、まもりは大きく後退。


「【跳躍】」


 しかしツバメは、ぶつかり合った両者の間に生まれる隙間を狙っていた。


「【剣速向上】【十二連剣舞】!」


 どこからでも出せる高速剣舞を、空中から披露する。

 大きな身体では、回避など不可能な剣速。

 凄まじい連撃に、火花が飛び散る。

 全弾ヒットによって大きく下がった魔導鎧に、レンが杖を向ける。


「十二連、見応えのある攻撃ね……っ! 【フレアストライク】!」


 すると魔導鎧は騎士盾でこれを受け止め反射、そのままツバメへの攻撃に切り替えてみせた。

 それは見事な技術。しかし。


「【電光石火】【斬り捨て】……御免!」


 迫る炎を接近斬りで霧散させて、突き進む。

 敵とどちらが先手を取れるかは、微妙なところだ。


「【紫電】!」


 そこで敵の攻撃が出始めていても、その途中で硬直を奪える攻撃を選択。


「【雷光閃火】!」


 そのまま、短剣を鎧の隙間に差し込んだ。

 飛び散る火花。

 ツバメが背を向けると、直後に巻き起こる爆発。

 宙を舞う形で戻ってきた短剣を、華麗に回収する。

 すると跳ね転がった魔導鎧は起き上がり、大きくランスを引いた。

 魔導鎧の前に、立ち塞がるように現れた魔法陣。

 輝きを増し、やがて水面のように魔力光が一度きらりと揺れた。

 直後、突き刺すランスが魔力を充填させた魔法陣を突き破った。

 大量の魔力光の破片が、一斉に飛び散る。


「範囲攻撃だわ……っ!」


 全員の間にかける緊張感は、後方に控える王女と考古学者を考えてのこと。

 HPゲージこそ出ていないものの、何かあってもおかしくない状況だ。


「【錬金の盾】【天雲の盾】!」


 早い反応はまもり。

 発動と同時に巨大化したまもりの盾は、一枚の大きな壁となる。

 放たれた大量の魔力片は凄まじい勢いでぶつかり弾け、派手な瞬きを見せながら霧散した。

 だが、まもりは止まらない。

 大型化した盾を手にしたまま、スキルを発動する。


「【チャリオット】!」

「「「っ!?」」」


 それは、迫り来る壁。

 ぶつかった魔導鎧をブルドーザーのような勢いで押し込むと、そのまま壁に激突させた。さらに。


「【フレアバースト】!」

【マジックイーター】で仕込んでおいた魔法を開放。


 盾からの爆炎で、魔導鎧を燃え上がらせた。


「すごい攻撃ですね……」

「あれもある意味、範囲攻撃でいいのかしら」


 とんでもない力技に、感嘆してしまうレンとツバメ。さらに。


「まもりちゃんっ!」

「おねがいしますっ!」


 大きな隙を晒した魔導鎧を前に、聞こえた呼び声。

 まもりは、大きなバックステップで後退する。


「【アクロバット】!」


 するとまもりの頭上を跳び越えて、前に出てきたのはメイ。


「【フルスイング】だああああ――――っ!!」


 叩き込まれる一撃に、盾は間に合わない。

 再び壁に叩きつけられ、深く深くめり込んだ魔導鎧は、そのまま静止。

 やがて兜の隙間でチカチカしていた、切れかけの電球の様な魔力光が消えた。


「さあ、行きましょうか。この先の部屋に何が待っているのか」


 軽いハイタッチの後、仲良くうなずき合う四人。

 その後ろで様子をうかがっている王女と考古学者も、その表情は真剣そのものだ。


「……この流れでも、扉を開ける時は私を先頭にすることで一致してるってすごくない?」


 流れるような動きで、ちゃんとレンの背後に隠れる三人。

 そしてそんな光景を前にしても、「いったいこの中に何が……」とか言っている王女たちに、レンは苦笑いするのだった。

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― 新着の感想 ―
魔導鎧回収して何かに利用できないかなと思ったけど、王女様がお望みじゃなかった気がするから難しいかな? ともあれ、迎撃が出てきたという事は、この奥に何かあるのは間違いなさそうですね。
クイズのヒント書いてなかったですね、本のジャンルは別のジャンルの方がやりやすいかな
魔道鎧はやっぱり敵w まあ女王がルアリアの王族とは言っても、その証明たる石も持ってないんじゃ、侵入者認定もやむなしか。 「ターゲット」で思い浮かぶのは、やはりサテライトキャノンこと月光砲ですかね。 …
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