1301.発信音の謎
飛行艇間での通信を行うための、機器作り。
そんな技師の仕事は、思わぬ妨害によって頭打ちとなっていた。
「でもこの音、何を知らせてるのかしら」
それは『特殊な石』による通信時に鳴り続く、謎の音。
「しばらくすると一周して、また同じ音が流れている感じがしますし、定型文を連続させている感じでしょうか」
思わぬ新展開の発見に、ワクワクするメイたち。
するとそこに、飛行艇の整備を終えた兵長が通りがかる。
「今度は何をしているんだ?」
「飛行艇間の通信実験だよ。邪魔な音がうるさくて使えないって言っただろう」
技師がため息交じりに応えると、兵長はしばらく『謎の音』を聞き、つぶやく。
「……これは、暗号か?」
「暗号!?」
出てきたワクワクのワードに、思わず尻尾がピンとするメイ。
「音の高低と長短で、何かを表している可能性がある」
兵長はそう言って、不思議そうに顔をしかめる。
「だが……どこの誰がこんなことを? 紅の翼は飛行艇同士での連絡に、空砲や狼煙の種類で暗号を送っていた。細かなやり取りが必要な時は、鳥を飛ばすこともある。だが今回我らは、世界に先駆けてこの石を使った通信の作成に取り掛かったはずだ。もちろんブライト以外に開発している者がいるという話は、聞いたこともない。それなら一体誰が……」
音声を遠くに飛ばすシステムを、試験的に実験しているのが機工都市ブライトだ。
「世界には、思わぬ天才学者がいたみたいな感じでしょうか」
ツバメが一つの可能性をあげるが、レンは首を傾げる。
「一応、この世界で技術的に一番進んでるのがブライトのはず。そのブライトよりも先んじてこのシステムを使っていた。それって、そういう天才がどこかにいる可能性もあるけど……ブライトより進んだ文明って可能性もない?」
「い、今一番進んでいるブライトよりも、進んだ文明……遺跡時代の話でしょうか」
「ということは、考古学者さんなら何か知ってるかも!」
「いいわね。ハズレてもいいんだし、行くだけ行ってみましょうか。光の紋様からの流れで出てきた話っぽいし、光と音がつながってくるかもしれない」
謎の光に続いて、暗号と思われる謎の音。
そして今もまだ、クエスト自体は始まっていないという事実。
『始まり』までに、ここまで手間の多いクエストは初めてだ。
めずらしい展開にメイたちは、勢いよく格納庫を駆け出して行く。
そのままブライトの街を出て飛行艇に乗り、一直線に王都ロマリアの東部へ。
「おおーっ! 飛行艇だ!」
夜の城下町を駆け抜けていく飛行艇に、あがる歓声。
手を振りながら、東部草原までひとっ飛び。
軒先に集まっていた猫たちにまみれながら、古い石造りの一軒家へ突入する。
「もごごががが! もがががががーっ!」
「考古学者さん! 一緒に来てくださいっ! とのことです」
猫だらけのメイの言葉を、ツバメが通訳する。
「機工都市ブライトに聞こえている暗号通信が、遺跡時代のものじゃないかと思うんだけど、ちょっと確認して欲しくて」
「遺跡時代の通信?」
その言葉に反応した考古学者は、二つ返事で了承。
四人はすぐさま、ブライトにUターン。
考古学者を引き連れて、再び紅の翼の格納庫へ戻る。
「音を使った暗号か……確かに前文明の時代にもあったが……」
そう言って考古学者は、持ち出してきた資料本を広げて、準備を開始。
「この暗号が、なんと言っているのか分かりますか?」
鳴り続ける謎の音を聞かせると、ページをめくりながら暗号を確認する。
しばらくすると、考古学者は一つ息をついた。
「……ダメだ、分からない」
「ダメですか」
「考古学者がここまで付いてきたのに、話が進まない……?」
特定の場所にいるNPCが付いてきた時点で、この選択は正解であり、物語も動いている。
ある種の確信を持っていたレンは、困惑する。
「……だが、何も分からなかったというわけではない」
「どういうこと?」
「この暗号がゼティアに関わる文明とは、別のものということだけは分かる。なぜなら、ゼティア時代のどの国の言葉に当てはめても意味をなさないからだ」
「どういうことなのかな?」
「なるほど、あの時代の各遺跡とは言語体系が違うのね」
そこまで言って、レンの中には一つの可能性が見えてくる。
「現代より進んだ文明、でもゼティア関連とは別ってことは――――」
「「「モナココ!」」」
続くメイたちの声に、大きくうなずくレン。
「確かモナココは元々ルアリアって名前で、あの時代にゼティアの流れとは違う、独自の文化で生きていたって言ってたわね」
「言っていましたね、確認に行ってみましょう!」
「わあ! つながってきたかもっ!」
「こ、これは気になりますねっ!」
謎がつながり、話が進んで行く感覚。
わき立つメイたちは、再び大きくうなずき合う。すると。
「それなら僕も連れて行って欲しい。モナココに旧文明があるというのなら、ぜひ話を聞きたいんだ!」
なんと考古学者が自ら、モナココへの追従を願い出た。
「もちろんですっ! 一緒に行きましょうっ!」
物語は、さらに進んでいく。
四人は考古学者を引き連れて、飛行艇へと走り出す。
もちろん行き先は、カジノの街モナココだ。
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