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1299.謎の輝き

「ただいま、戻りましたっ」

「おお! 【悪魔石】を、溶岩に放り込むことに成功したのだな!」

「はいっ! たくさんの尊い犠牲の上に……成し遂げましたっ!」


 モンドールという小国の、こじんまりとした城に報告に出向いたメイたち。

 王とその側近たちは、歓喜にわき上がった。


「これで【悪魔石】に封じられていた魔神の魂が、復活することはなくなった。我らは呪いから救われたのだ!」

「「「ありがとうございます!」」」


 深々と頭を下げる側近たち。


「よくぞやってくれた。これはほんのお礼だ。取っておいてくれ」


 そう言って王自ら、一つの宝箱を持ってきた。



【設置スキル大型化】:魔法や攻撃スキルの中でも、『設置』する形式のものの範囲を上昇する。



「あとこれは、路銀の足しにでもしてくれ」


【銀のブレスレット】:換金用のアイテム。美しい意匠が見事で、高価格で売れる。


「ありがとうございますっ!」


 こうして小国モンドールに隠れていたクエストを達成したメイたちは、飛行艇に乗り込みモンドールを離れる。

 するとモンドールの町をリターンポイントにしていたのか、【悪魔石】運びクエストを手伝ってくれたパーティを発見。


「メイちゃーん、楽しかったぞー!」

「また面白いクエスト見つけたら、いつでも【自爆】で助けるからなーっ!」


 そう言って、大きく手を振る。


「ねえ、この【銀のブレスレット】はメイからプレゼントしてもいいんじゃない?」

「そ、それはいいですね」


 それは完璧な演出で、クエストを盛り上げたパーティへのお礼だ。


「これ、今回のクエストでもらった報酬の一つですっ! 皆さんでどうぞーっ!」

「「「うおおおおおお――――っ!」」」


 メイが飛行艇から落とした【銀のブレスレット】を受け取り、歓喜にわく15人パーティ。


「そうそう。飛行艇と言えばメイちゃんたち、ブライト付近で目撃されてる謎の光って知ってるー?」

「謎の光?」


 メイは首と尻尾を傾ける。


「初耳ね」


 どうやらレンたちも同様に、初めて聞く情報のようだ。


「なんか夜になるとちょくちょく謎の光が浮かんでくるって、話題になってんだ。暇だったら見に行ってみてー!」

「はーいっ! ありがとうございますっ!」


 メイたちは大きく手を振って、モンドールを後にする。

 飛行艇の運転も、すっかり慣れたもの。

 風を巻き起こし、空へと去っていく四人を、大きく手を振って見送る自爆パーティ。


「どうする? ブライト付近ってことだけど、時間も夕方でいい頃合いだし、行ってみる?」

「そうですね。一度ウィンディアに顔を出してみるのもありだと思います」

「な、なにか新しい要素が見つかるかもしれませんねっ」


 クエストを終えた後、しばらくして見に行くと新たな展開があったりするのも、この世界の魅力。

 ツバメはまず、空賊として共に戦ったウィンディアの秘密基地を目指すことにした。

 夕景の空を飛び、一気にブライト国へ。

 大きな滝に飛び込む形で、ウィンディアの基地へと入り込む。

 今も開いている、セフィロト丸の格納スペース。

 滑らかに駐機して、四人は基地内へ踏み出した。

 まずは作戦の立案などにも使われる、大きなデスクへ。

 するとやって来たのは、ウィンディアのリーダーを務める青年エア。


「我らがエースの帰還だな。これはちょうどいい。実は君たちにも見てもらいたいものがあるんだ」


 どうやら、何か新たな展開が起きているようだ。


「どうしたのですか?」


 ツバメが問いかけると、遅れてやって来た整備士イスカが説明を始める。


「実はこれくらいの時間から、滝の上部の崖に紋様が浮かび出すんだ」

「紋様ですか?」

「ちょっと見てくれないか?」


 エアの言葉もあり、四人は一緒に基地内の登り階段へ。

 その最上部には、滝の側面にあたる岩壁に作られた、物見用の出っ張りがある。

 足場に踏み出すと、見えるのは青紫色の空。

 そして滝を形成する崖の一角に、輝く円形の紋様。

 大きさは、一メートルほどか。


「見たことのない紋様ね」

「これは……なんでしょうか」

「実は俺たちも最近偶然見つけて、その意味が分からず悩んでいた所なんだ」

「何か困ったことが起きてるわけでも、付近に変化があるわけでもないんだよなぁ」


 エアとイスカは、不思議さと若干の気持ち悪さを覚えているようだ。


「冒険者である君たちにも、見ておいて欲しくてね」

「どこからか、投影されているのでしょうか」

「ちょっと見てきますっ! 【装備変更】【モンキークライム】っ!」


 メイは【肉球グローブ】を装備して、するすると岩壁を上がっていく。

 そして謎の紋様のところまで行って張り付くと、壁を凝視する。


「特に何もないよーっ」


 しかし壁に触れても変化なし。

 魔法石などが埋まっている様子もない。


「やはり、分からないか」


 メイたちに謎の光を確信してもらったエアは、クエストを出すわけでもなく階段を降りていく。

 どうやら新たな何かが起きてはいるが、それがすぐさまクエストになるわけではないようだ。


「それじゃ、ゆっくりしていってくれよなっ」


 格納庫に戻ってくると、エアとイスカは仕事へと戻っていった。


「な、なんだったのでしょうか……」


 まもりもこれには不思議そうにしている。


「そう言えば【悪魔石】のクエストを助けてくれたパーティの人は、ブライト辺りでちょっと話題になってるって言ってたわね」

「ブライトでも見られるのかな?」

「少なくとも、ウィンディアでこの話を聞ける人はもういないだろうし、ブライトの方を見に行ってもいいのかもしれないわ」

「さっそく向かいましょう」


 ツバメは飛行艇を起動し、メイたちが乗り込んだのを確認して発進。

 まもりの視線が完全に街外れのスープ屋の方に向いているのに気づいて、ちょっとだけ寄り道。

 照明の魔法珠を吊り下げただけの、武骨な明かりの並ぶ町並みにワクワクしながらブライトの通りへ出る。

 スープ入りの缶を手に、謎の光を求めて進むと、たどり着いたのは――。


「格納庫……?」


 ブライト王国の飛行艇が並ぶ、新築の格納庫だった。

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