1294.帰り道
「それじゃあ、帰りましょうか」
「とても、名残惜しいです」
「本当だねぇ」
「ぶ、部活の合宿というものは、こういうものだったりするのでしょうか……っ」
モンスター・ワールドグランプリの日程を終えた翌日。
さつきたち四人は、いよいよ荷物をまとめて旅館の部屋を出る。
すると受付のある出入り口のところまで来たところに、運営チームが待っていた。
「ありがとうございました! イベント、本当に盛り上がりました!」
「こちらこそ楽しかったですっ! ありがとうございましたっ!」
「フェンリルの打倒は、大丈夫だったのですか?」
つばめが聞くと、案の定運営陣は「あいたたたー」みたいな顔をして笑う。
「モンスターバトルの象徴的な悪役として、最終的に倒される形を予想していたのですが、負けてしまいましたね」
「ですが、倒れた魔物をキャインがパワーアップして連れてくるという形式や新種を連れてくる形も、ありかと思っています!」
「何より……最高の素材がたくさん取れたので、問題なしです!」
やはりたくましい運営チーム。
昨夜のイベント終了後の作業も、これからのモンスターバトルや告知の展望などを踏まえて、盛り上がっていたようだ。
メイはもちろん、ツバメやまもりの相棒たちは見た目にも面白く、カッコいい成分はレンがしっかり補充。
今回得た素材で、どの角度からでも宣伝ができそうだ。
大きな幹線駅から、歩いて行ける距離が魅力の温泉旅館。
運営に手を振られて出た先で、さつきが不意に思い立つ。
「あっ! せっかくだし、おっきなポスターを見に行こうよ!」
「いいわね」
「そうですね、駅の方にあると聞いています」
「わ、私も写っていると考えると、ちょっと恥ずかしいです……っ」
そんなことを語りながら、四人で向かう幹線駅。
その改札へと続く通路は、天井が高く広い。
そしてそこには四枚の大判広告が、高い位置に縦一列で並ぶように掲載されている。
メイの広告はケツァールに乗り、飛行艇を先導するような構図がまさに主人公のよう。
続けてツバメの広告は【斬鉄剣】を放つ瞬間のクールな姿だが、刀のエフェクトで少し顔が隠れている。
まもりの広告はタヌキレストランで、料理に目を輝かせているところだ。
「メイちゃんいいな!」
「アサシンちゃんのカッコ良さよ……!」
「タヌキたちと盾子ちゃんの並び、最高ですぅぅぅぅ!」
足を止め、メイの広告に夢中になっているのは高校生の一団。
皆が写真を取ろうと、人の流れが落ち着く瞬間を狙っているようだ。
「えへへ……」
「少し照れますね」
「は、はひっ」
「…………」
さつきたちが笑い合う中、可憐は一人頭を抱えている。
黒い服の一団が集まっているのは、紋様を輝かせるカラスを腕に留まらせた闇の魔導士こと、レンの広告前。
その姿を見て、可憐はめちゃくちゃソワソワする。
なぜか小声で、口元を隠すようにして話す黒の一団。
突然スッと、片ヒザを突く。
「っ!!」
「――――ナイトメア様」
今出て行って「やめておきなさいよ!」と言えば、間違いなく面倒なことになる。
見ていることしかできず、さらに可憐はソワソワ。
実際は短時間だったが、無限にも感じる恥ずかしいタイム。
ちゃんと写真を撮っていく一団を見送ったところで、ようやく息をついた。しかし。
「恐ろしい時間だったわ……ん?」
そう言って安堵したところに、やって来たのは白い一団。
「果たして、敵か味方か……」
完全に、光の名を冠する者たちだ。
複雑そうな表情でポスターのレンを見つめた後、数人でうなずき合い、ちゃんと写真を撮影。
「まだまだ、監視が必要だ」
まるで行進するかのような足取りで、去っていく。
「ねえ。メイたちのポスターを見に来た人たちと、客層が違い過ぎない?」
白目をむきながら、白の集団を見送る可憐。
広告を見上げている集団がいなくなったのを確認して、あらためて自分のポスターの下へ。
じっくり見上げてみる。
黒と紫を基調としたポスターは、レンの白銀の髪が良く映える。
浮かべた妖しく自信に満ちた笑みは、影響される者が出るのも無理がないレベル。
メイたちとのポスターと毛色が違っていることを、あらためて確認する。
ツバメのものはカッコいいが明るいため、やはりレンの一枚があることで引き締まっている。
そんなことを考えながら、見つめていると――。
「……?」
隣に立ったのは、一人の少女。
黒レースの組み合わせで作られているかのような衣服に、飾りの赤紫色の薔薇。
真珠のチェーンで飾った少女は、隣に可憐がいることに気づいているのかいないのか。
静かな瞳で、ポスターを眺めると――。
「…………時が、来る」
そう一言だけつぶやいて、立ち去って行った。
可憐はもちろん、その横で白目をむいていた。
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