1286.大熊猫vs洗脳まもり
「エンシェントクロウ! 【エーテルレイン】だ!」
立ちはだかるスターダスト団を前に、拘束を解いた16組のモンスターたち。
樹氷の魔女の指示によって放たれた魔力の光線が降り注ぎ、先手を打つ。
「【火遁・紅蓮獅子】!」
そこに続くのは、アンズーの忍者タヌキ。
飛び掛かる炎の獅子が爆発し、炎上を巻き起こす。
8強をかけて戦った両者の連携が、スターダスト団のオオコマイヌに大きなダメージを与えた。
「今ぽよっ! 【硬化弾丸】!」
そこに飛び込んでいくのは、弾丸と化したスライム。
オオコマイヌを吹き飛ばすと、すぐさまサメの背びれに変形して動き出す。
こちらは一対一ではなく、混戦になっているようだ。
「いいぞ! いけいけーっ!」
「俺たちのモンスターを、取り返してくれーっ!」
拘束状態のプレイヤー達から上がる、祈りの声。
メイたち上位三人はキャインの打倒を目指す、メイたち上位3組。
そこに立ち塞がったのは、まもりとツバメだった。
「アサシンちゃんと盾子ちゃんが、洗脳されてるぞ……っ!!」
まさかの事態に、唖然とする掲示板組。
「やはりまずは、わたくし大熊猫からでありましょうな」
そんな中、踏み出したのはカンフーパンダ。
するとまもりは感情を失った表情のまま、ハムスターを前に出した。
「そういうことなら、私の相手は君になるのかな」
クローナは、大きなヒヨコを控えさせたツバメの元へ向かう。
「まもりちゃん、ツバメちゃん……」
大熊猫とクローナが作った道。
メイは二人の姿を目に焼き付けると、覚悟を決めるように大きくなずき、元凶であるキャインの元に走り出した。
「それでは、始めるであります」
自然と向かい合う、大熊猫とまもり。
「……あなたのパンダも、いただきます」
「キミが言うと、食べちゃう感じに聞こえるでありますな……パンダちゃん!」
そう言って笑い、モノクロを走らせる。
「先手、もらうであります! 【掌天破】!」
速い踏み込みでハムスターの懐に入り込んだパンダは、突き出した掌を叩き込む。
「……ハム次郎、防御を」
走る衝撃波が直撃し、腕を組んで守るハムスターを後退させる。
「続けて【肘閃】!」
そこから追いかける形で、雷光のような前方移動で放つ肘打ち。
「まだまだ! 【大回転】であります!」
さらに後退したハムスターに、身体を丸めてぶつかる体当たりで追い打ちをかけた。
「ダメージ、薄すぎではありませぬか?」
ハムスターは、防御時に受ける『削られ』がほとんどなし。
【敏捷】は低いが【耐久】はかなり優秀。
見事な防御に、大熊猫が苦笑いを浮かべる。
「ハム次郎【バウンドローラー】」
静かな指示に合わせて、ハムスターが身体を丸めて飛び跳ねる。
それはパンダの【大回転】に似たスキルだが、こちらは大型のタイヤが跳ね飛んでくるような形で接近してくる。
「パンダちゃん! 防御でありますな!」
その意外な勢いに、大熊猫は防御を選択。
「っ!?」
しかしぶつかった瞬間、激しい衝突音と共に後退。
どうやら防御を崩すことのできる攻撃のようだ。
「ここが好機……【首狩り前歯】」
大きく弾かれ隙を晒したパンダは、回避も防御もできない。
無機質な声から放つ一撃は、鉄より硬いハムスターの前歯。
パンダに喰らいつくと、そのまま巴投げのような形で放り投げた。
パンダが大きなダメージと共に転がれば、追撃のチャンス。
しかし足の遅いハムスターが追いかけても、そこに有利は生まれない。
「とにかく『成長の種』を食べ続けて……【蓄食】」
ここで早くも、種を食べることを選択。
夢中で食べるハムスターが、あっという間に頬をふくらませていく。
「…………おいしそう」
うっかり本音をこぼすまもり。
ハムスターは口いっぱいに頬張った種をゴクリと飲み込むと、その体躯を急激に膨張させた。
「【バウンドローラー】」
「っ!」
大型化したハムスターが球形と化し、その恐ろしい重量で跳ね飛べば、火力は語るまでもない。
「パンダちゃん! 右に回避ッ!」
大熊猫は慌てて回避させるが、ハムスターのバウンドは方向転換も可能。
「次は左に! そのまま後ろに飛び込んで!」
続けての回避でどうにか距離を取って、反撃を狙う。
「続けて【バウンドローラー】」
まもりは巨体時の火力上昇を有効に使おうと、続けざまの攻撃を選択。
そしてそれは、大熊猫の狙い通りだった。
「もらったでありますぞ! 【掌天破】!」
パンダが放つ掌底から、放つ衝撃波。しかし。
「アーマー効果!?」
大型化した状態で放つハムスターの回転攻撃には、敵の攻撃を弾くアーマー効果あり。
「パンダちゃん!」
再び弾き飛ばされたパンダは転がり、HPは早くも半分を割る。
「十二分に、強いであります……っ! でも!」
ここで負けたら、まもりは残り二人を攻撃に行くのだろう。
それは三位に入ったトレーナーとして、許せない。
「パンダちゃん! 前へ!」
向かい合った両者。
仕切り直しなら、先手は大熊猫が打てる。
「【掌天破】!」
「ハム次郎、防御を」
放つ衝撃波を、当然のように防御するハムスター。
「【肘閃】!」
続く速い肘打ち移動攻撃も、恐ろしい低ダメージで受け止める。
生まれた距離。
「【疾空瞬脚】を!」
「続けて、防御を上方に」
当然のように、組んだ腕で頭を守るようにするハムスター。
大熊猫の指示に『を』が着いた時、それは急降下蹴りをわざと手前に外すフェイントの指示だ。
「っ! 防御を手前に!」
「っ!?」
恐ろしいことに、まもり自身はこのフェイントにも反応。
わざと外した後に来る衝撃波に対して、前方への防御で備えるよう指示を出す。
まもり自身が防御をするのであれば、完全に間に合っていた。
しかし指示を聞いた動きの重いハムスターが、実際に防御を前方に向けるという手順を踏む形では、さすがに間に合わない。
迫る衝撃波に、体勢を崩す。
「【掌天破】【肘閃】!」
まもりの凄まじい反応の良さに驚きながらも、攻め手は緩めない。
続く二連の打撃が決まり、衝撃に大きく後退したハムスター。
「【大回転】!」
体当たりで追いかけ、さらにダメージを与えた。
ここで大熊猫は、さらに攻勢をかけていく。
「【疾空瞬脚】!」
再び跳び上がったパンダが、急降下蹴りで迫る。
「着地後を狙って【首狩り前歯】」
見てからの指示では間に合わない。
まもりは先読みで、着地後の反撃を狙うが――。
蹴りはハムスターの肩に突き刺さって、さらに大きく後退。
「【疾空瞬脚】を!」
「今度は……防御っ!」
しかし、再びのフェイント着地。
まもりの選んだ二択は、またも外れた。
衝撃波に、またもあおられるハムスター。
「【掌天破】【肘閃】【大回転】!」
叩き込む連撃に、ハムスターは後退し続ける。
見てからの指示では間に合わない以上、二択に挑むしかないという不利な状況。
大熊猫は続けざまの『選択肢攻め』に勝ち、攻撃を決めた。
ハムスターのHPは減り、危険な状況だ。
「それならこのまま削り切るのでありますな! 【疾空瞬脚】!」
「……勝負! 【バーストカウンター】!」
『を』という言葉がカギになっていることには、最後まで気づかなかったまもりだが、張った山は見事に的中する。
発動する奥義級のスキル。
ハムスターは強く胸を張り、強烈な『気』を発生。
タイミングを合わせるのが難しいが、打撃系の攻撃を容赦なく跳ね返し、敵の攻撃の威力に合わせたカウンター爆発を巻き起こすスキルで、反撃を決めた。
「パンダちゃんっ!」
イチかバチかの二択に勝ち、タイミングを合わせたまもりの反撃に弾き飛ばされたパンダは、残りHPが1割を切るところまで追い詰められた。
「――――【圧し掛かり】」
ここでまもりは、勝負をつけに行く。
さらに一つ『成長の種』を食べ、高く跳び上がったハムスターが、そのまま倒れ込んでくる。
直撃すればもちろん、かすめても敗北。
仮に避けても、生まれる衝撃波に飛ばされただけで敗戦確定だ。
「パンダちゃん! 走ってーっ!」
ここで大熊猫は、パンダを全力で走らせる。
その判断は功を奏し、かすめず済む位置までの逃走に成功。しかし。
巻き起こる衝撃波からは、逃げ切れなかった。
「パンダちゃんっ!」
大熊猫は、全力で呼びかける。
「――――【覇気開放】っ!!」
身体から放つ覇気で、敵の無形攻撃を打ち消すこのスキルは、身体全身から発する。
そのため後方から襲い掛かる衝撃波にも、対応。
「パンダちゃん、【掌天破】!」
振り返ったパンダが放つ掌底が直撃。
「【肘閃】!」
続いて肘打ちが炸裂。
「最後は【大回転】でありますっ!」
そして激しい回転跳躍撃で、激突。
見事ハムスターを打倒し、勝利を飾った。
「ハム次郎っ!」
まもりは叫んだ後、思い出したかのように無表情を作る。そして。
「……わ、私は、一体何を?」
今洗脳が解けた風の言葉を、慌てて紡ぎ出したのだった。
誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!
返信はご感想欄にてっ!
お読みいただきありがとうございました!
少しでも「いいね」と思っていただけましたら。
【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!




