1285.優勝ですっ!
「それでは今より、表彰式を始めます」
参加者たちが集まると、自然と各自のモンスターたちが現れた
舞台に立ったキャインが、各種の賞を読み上げていく。
すると舞台に上がったモンスターとトレーナーに、大きな拍手が送られる。
「ここからは、無差別級の表彰となります」
ここでスターダスト団員たちも一か所に集まり、キャインの後ろに並んだ。
「第三位! 大熊猫・カンフーパンダ組!」
呼ばれた大熊猫は、パンダと一緒に行進するような足取りでやって来て、舞台に立つ。
そしてあがる大きな拍手に、一緒にポーズを決めた。
「第二位! クローナ・レギアーラ組!」
続いて、穏やかな笑みを浮かべたクローナが舞台に上がる。
するとレギアーラが遅れて、低空飛行でその横に着地した。
激しい戦いを見せた最強トレーナーと、伝説のモンスターというコンビに、あらためて上がる歓声。
「そして栄えある第一位は……! メイ・リザード組!」
「「「おおおおおおおおおお――――っ!!」」」
発表と同時に、巻き上がる大量の紙吹雪。
レアなパンダや伝説のレギアーラを制したのがリザードであるという事実に、あらためて盛り上がる会場。
万雷の拍手が、見事な育成を戦いを見せたメイたちに送られる。
「お見事でした!」
「ありがとうございますっ!」
メイがリザードを掲げて見せると、誰もがその明るい笑みに目を奪われる。
「勝利の秘訣を教えてください!」
「はいっ! りーちゃんが、がんばってくれましたっ!」
「チャンピオンになった気分は、いかがですか?」
「すっごく、うれしいですっ!」
舞い散る紙吹雪が落ち着くのと同時に、インタビューも完了。
最高の盛り上がりを迎えたところで、表彰式は終了を迎えた。
「皆さま、ご参加ありがとうございました! これにてモンスター・ワールドグランプリを終了します!」
こうして拍手と共に、大きなイベントが幕を閉じた。
「……さてと」
キャインが息をつき、仲間の団員たちに視線を向ける。
「それでは、スターダスト団の仕事を始めましょうか」
「……仕事? なに、どういうこと?」
突然おかしなことを言い出したキャインに、観客も含めて参加者たちが困惑する。
スターダスト団員たちが、一斉に片手を上げる。
するとキャインも、その後に続いた。
「「「っ!?」」」
足元に生まれる、巨大な魔法陣。
会場を丸々飲み込む強烈な輝きを放つと、参加者たちの動きが魔力の縄で縛られた。
さらにモンスターたちも同じように、不思議な魔力の拘束によって動けなくなってしまう。
「おい! なんだこれ!?」
「どうなってるんだ!?」
「なによこれーっ!」
トレーナーたちからもあがる、困惑の声。
「おい! これはどういうことなんだよ!?」
向けられた問いにキャインは、当然のことのように答える。
「どうもこうもありませんよ。ここに集まったすべての優秀なモンスターを奪い取り、世界を支配するんです」
「「「ええええええええ――――っ!?」」」
メイも含め、盛大な驚愕の声が響き渡る。
「この世界には、強力なモンスターたちがたくさんいます。もしその力を余すことなく使うことができれば、どんなことだってできる。そう、この世界を征服することだってね」
キャインは、邪な笑みを浮かべて続ける。
「大規模な大会を開けば、多くのトレーナーがたくさんのモンスターを成長させた状態で持ってくる……その中には、伝説のモンスターまで! こんなに理想的な武器の調達方法が他にありますか?」
そしてその指を、パチンと鳴らす。
すると魔法陣の輝きが変わり、戸惑っていたモンスターたちが突然静かになった。
「我々の一番得意とするところは、洗脳なんです。こうすればどんなに聞き分けの悪いモンスターでも、言う事を聞かせることができる! そうです、最高の兵器となるのです!」
「なんてことを……!!」
まさか過ぎる展開に、驚きふためくトレーナーたち。しかし。
「そんなこと、させませんっ!」
そんなキャインの言葉に、反抗したのはメイ。
「りーちゃん!」
呼びかけると、隣で苦しんでいたリザードが魔力による拘束を解き、洗脳を打ち払った。
それだけではない。
「パンダちゃん!」
「レギアーラ!」
メイとリザードに影響されたかのように、クロナのレギアーラや、大熊猫のカンフーパンダまでもが呪縛を解き放ち、相棒の元へ駆けつける。さらに。
「目を覚まして! ぽんぽこちゃん!」
「正気を取り戻すぽよっ!」
必死に呼びかけるトレーナーの呼びかけに、一部の魔物たちが拘束と洗脳を解いていく。
「……洗脳を解きましたか。それはモンスターの強さか、トレーナーへの信頼ゆえか。さすがトーナメントでも、屈指の結果を出したモンスターたち」
メイたちから広がるように解放されていったモンスターとトレーナーは、上位16組ほど。
「思った以上に、拘束を解いたモンスターが多いですね」
キャインの言葉に、スターダスト団たちが一歩前に出る。
続々と戦いの構えを取り、モンスターを呼び出す。
始まるにらみ合い。
「頼む! 俺たちのモンスターを助けてくれ!」
「こいつを奪われるなんて嫌だーっ!」
今も拘束されたままのトレーナーたちの声が、聞こえてくる。
すると戦いの覚悟を決める16組のトレーナーを前に、キャインは右手を上げた。
「今回拘束を解いたモンスターたちは力づくで奪い取った後、あらためて直接洗脳させていただきましょう。この子たちのようにね――!」
「え、ええっ!? ええええええええ――――っ!?」
まさかの展開に、思わずメイが驚きの声を上げた。
メイたちの前に立ち塞がったのは、二体のモンスター。
大きなヒヨコと、丸々とした身体を持つハムスター。
その背後に立つのは、ツバメとまもりだった。
「う、ああっ! メイさん、すみません……っ」
「ど、どうやら私たちは、最初から狙われていたようです……っ」
「ツバメちゃん! まもりちゃん!」
「「あ、ああっ、あああああ――――っ!」」
キャインの手の中で、紋様を刻んだ魔法石が輝く。
メイは苦しそうに頭を抱えるツバメとまもりに呼びかけるが、二人の身体を駆けめぐる魔力を前に、声は届かない。
「この二人は冒険者としてはもちろん、トレーナーとしても非常に優秀だったので、利用させていただくことにしたんです。さあツバメさん、まもりさん、邪魔者たちを片付けてください」
キャインがそう言うと、静かになった二人はゆっくりと顔を上げた。
「……了解しました」
「……邪魔者を、排除します」
そして悪のアサシンのような笑みを浮かべたツバメと、感情を失った人形のようなまもりが、メイたちの前に立ちはだかった。
誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!
返信はご感想欄にてっ!
お読みいただきありがとうございました!
少しでも「いいね」と思っていただけましたら。
【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!




