1281.準々決勝ですっ!
「ついに、メイさんとの対決ぽよっ! ここまで来たかいがあったぽよーっ!」
気合で準々決勝にまで到達したスライムは、歓喜の飛び跳ねを披露。
するとそこに、メイがやって来た。
「スライムちゃん! よろしくお願いしますっ!」
メイは真っすぐにスライムを見て、ほほ笑みかける。
「そっちは、スライムぽよーっ!」
「ええっ!?」
案の定ここでも間違えられて、跳ねて自分の存在を顕示するスライム。
しかしモンスタースライムも一緒に飛び跳ねたため、やっぱり見分けがつかない。
そんな二人に観客が笑い出す中、スターダスト団の審判がやって来た。
「それでは、準々決勝を始めます!」
「よろしくお願いしますぽよっ!」
「こちらこそ、よろしくお願いしますっ!」
集まる注目の中、ベスト4進出をかけた戦いが始まる。
「メイ・リザード組とスライム・スライム組! レディー……ゴー!」
「【ウィンドクロー】!」
先手を取ったのはメイ。
リザードは即座に、空刃を連発する。
するとモンスタースライムは、これを見事な飛び跳ねで回避。
「もう一回! 【ウィンドクロー】!」
「【サメ】ぽよっ!」
今度は【サメ】で回避して、同時に接近を狙う。
「【硬化弾丸】!」
高速移動からの超高速特攻。
リザードはしかし、しっかり攻撃を見て回避。
即座に振り返ったモンスタースライムは、細かな跳躍で接近して、通常攻撃の体当たりへとつなぐ。
そしてメイとリザードの意識を『飛び掛かり』に引き付けたところで――。
「【サメ】ぽよっ!」
突然足元からの攻撃で、虚を突いた。
「りーちゃん!」
これを高いジャンプで回避したリザード。
すれ違った両者だが、振り返りが早かったのはモンスタースライム。
「ここぽよっ! 【硬化弾丸】!」
即座に振り返り際を狙った攻撃を仕掛ける。
回避は間に合わないタイミングだ。しかし。
「【マグマ・スプラッシュ】!」
メイはリザードを中心に、溶岩を噴き出す攻撃でカウンターを狙う。
モンスタースライムはその勢いを止められず、赤熱に弾かれ地面を跳ね転がった。
「さすがメイさん、反応と判断の速度が段違いぽよっ! でも……これでクールタイムが取れたぽよ!」
モンスタースライムはその形状的に、どうしても『自分を武器』にして突っ込む攻撃が多い。
スライムはカウンター攻撃として優秀な【マグマ・スプラッシュ】が、一時的に封じられれば御の字と考えたようだ。
「なるほど、喰らいはしたがしばらくは使えなくなる。ここは駆け引きどころだな!」
これには観客たちも、思わず唸る。
「反撃行くぽよっ! 【サメ】!」
「【ウィンドクロー】!」
カウンターがなくなったことで、攻め手に出たモンスタースライムは見事な回避で接近。
「ここっ! 【鉄拳】!」
「【縮小】ぽよっ!」
「ええっ!? 小さくなっちゃった!?」
思わぬ回避方法に、驚くメイとリザード。
「【硬化弾丸】ぽよっ!」
小さくなったままでも、威力は変わらない。
猛スピードで飛来する弾丸を、リザードは転がる事でギリギリ回避した。
「きたぽよっ! 【喰らいつき】ぽよ――っ!!」
「っ!?」
生まれた隙。
着地反転から、即座に放つ猛烈な喰らいつき。
膨張し生み出された巨大な口蓋が、起き上がった直後を捉える。
喰われたリザードは、放り出されて地面を転がった。
「やっぱこの【喰らいつき】、相当いいぞ!」
「しっかり相手を範囲に抑えれば、回避は早々できない!」
大会始まって以来の『直撃』に、ざわめく観客たち。
これにはメイも、「すごい!」と尻尾をブンブンさせる。
そして「よーし!」と両の拳を握ってみせた。
「りーちゃん!」
メイの合図に駆け出したリザードは、そのまま迫り拳を突き出す。
これをモンスタースライムが避けたところで、そのまま跳躍して繰り出すキック。
跳び下がっての回避を見せたモンスタースライムは、即座に反撃の体勢に入る。
「【サメ】ぽよっ!」
ヒレによる特攻は速い。
しかしリザードは、アクロバティックかつ低い前方跳躍でやり過ごす。
まるでメイが戦っているかのような見事な近接戦に、聞こえる感嘆の吐息。
「【ウィンドクロー】!」
「っ!」
その着地は早く、先手で放った二発目の斬撃がスライムをかすめた。
「今だよっ! 【猛ダッシュ】!」
生まれたわずかな隙に、メイは即座の特攻を指示。
「大丈夫ぽよ! 防御が間に合う! ……ぽよっ!?」
防御は確かに間に合った。
しかしダッシュだけを命じられたリザードは、そのままモンスタースライムの横を通り過ぎる。
「【カメレオン】!」
そして、姿を消す。
モンスタースライムが振り返った時には、リザードは消えていた。
「大丈夫! 消えたのはスキルの効果だから、慌てる必要はないぽよっ!」
この消し方では、トレーナーのスライムには『消えた瞬間』が見えていた。
すぐさま種を明かし、モンスターのスライムを落ち着かせる。
するとメイは一つ息を吸い、右手を高く掲げた。
「――――りーちゃん!」
「そのスキルの使い方は知っているぽよ! そしてこのカウンターに、方向は関係ないぽよっ!」
「方向関係なし!? そんなの優秀過ぎだろ!」
判定が全方向という優秀さに、あがる驚愕の声。
「【スライムカウンター】!」
メイの号令に反応し、すぐさまスライムはカウンターの体勢を取る。
すると【カメレオン】を解いたリザードが、姿を現した。
「「「っ!?」」」
しかし、攻撃の気配なし。
それどころか手を上げたままのメイの呼びかけに、同じく手を上げて応えてみせた。
まさかの事態に、再び驚く観客たち。
「し、しまったぽよ――ッ!」
優秀なカウンタースキルが『ミス』となれば、当然大きな隙を生む。
メイのあげた声が、単なる呼びかけフェイントだったと気付いた次の瞬間。
「【ウィンドクロー】!」
二発の斬撃を、近接で叩き込まれた。
そして狙い通り、後方に転がったのを確認してリザードは追撃に入る。
「【猛ダッシュ】からの【鉄拳】だああああ――――っ!」
叩き込まれた拳がモンスタースライムを弾き飛ばし、勝負あり。
「さすがメイさんぽよ……っ!」
「やったー!」
こうしてメイは、見事にベスト4へと進出することに成功した。
「い、今のフェイント、すごくないか……!?」
「呼びかけを攻撃の合図と判断しなかったのは、相当だぞ!」
「リザードでここまで息が合うのは、すごすぎるわ……っ!」
わき立つ会場。
こうしてメイは見事、準決勝へと進むことに成功したのだった。
◆
「「「おおおおおお――――っ!!」」」
上がった歓声に、思わず視線を奪われる。
「タロースちゃん! 【インビジブルアロー】!」
なーにゃの対戦相手は、今回の優勝最有力であるクローナ。
天使型の青銅製自動人形という、かなりめずらしい個体を使うなーにゃが、良い勝負を繰り広げている。
「レギアーラ、矢が放たれた瞬間に回避行動を。その後は高速で接近」
タロースの矢は弓を離れた瞬間に消失し、そのまま敵を狙うやっかいな攻撃。
しかしモーション自体がなくなるわけではないため、クローナは【敏捷】も高いレギアーラなら、回避が可能と判断。
タロースの手が弓を離れた瞬間、手でもある翼を開いて低空飛行を開始。
直後、【インビジブルアロー】が地面に刺さり炸裂した。
「タロースちゃん! まだまだ【インビジブルアロー】の連射ですな!」
言われるまま、自動人形は見事な連射でレギアーラを狙う。
しかし飛行速度は速く、一度飛び出してしまうと早々当たらない。
直進ではなく、わずかに左右に揺れながらの飛行は、王者クローナの育成のたまものだろう。
回避しながらの接近は見事だ。
「そのまま攻撃」
タロースの前にたどり着いたレギアーラに、出されるシンプルな指示。
「今っ! ここで【灼熱の抱擁】ですな!」
しかしなーにゃも、戦いという点ではトップ勢に数えられる猛者。
接近してきたレギアーラを目前に、逆転の攻撃を仕掛ける。
マグマのように赤熱したタロースは翼を広げ、そのまま飛びつきに行く。
「跳んで」
しかしレギアーラは、その目前で足を突き跳躍。
空中で回転して着地すると、振り返って翼の先を握って拳のようにする。
そして拳打。
続けて拳打。
翼の左右に作った拳で、タロースに連続で打撃を叩き込み、距離が生まれたところで両翼を開いての特攻。
その強烈な【筋力】によって弾き飛ばされたタロースは、そのまま弾き飛ばされて敗北となった。
「つ、強いな……さすがに」
「なーにゃも十分すぎるくらいだったのに……ほとんどダメージなしかよ」
始めたばかりのモンスターバトルなのに上手すぎると評判だったなーにゃを、ほとんどダメージもなく快勝。
圧倒的な勝利を見せたクローナは、当然とばかりのクールな表情で4強入りを決めた。
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