1280.混戦トーナメント!
「あと二つ勝てば、メイちゃんとベスト8であたる……!」
「負けられないぽよっ!」
コートの中心で向かい合うのは、マウント氏とスライム。
「あっ!」
通りがかり見覚えのある二人を見つけたメイは、手を振って応援する。
「二人とも、がんばってー!」
「「はいっ!!」」
聞こえたメイの声援に、思わず熱くなる二人。
最高のタイミングで、スターダスト団員が試合を開始する。
「それでは始めます! スライム対バンデットモンキー……レディー、ゴー!」
「勝負ぽよーっ!」
「勝負だーっ! 【回転剣舞】!」
叫び声と同時に先手を打ったのは、剣を振るう猿の魔物バンデットモンキー。
その場で二回転して、大きな斬撃を飛ばす。
「【サメ】ぽよっ!」
するとモンスタースライムは、サメの背びれのような形状に変化。
鋭い背びれは攻撃も可能だが、高速移動として使用することも可能。
斬撃の間を、見事にかわして突き進む。
「そのまま【硬化砲弾】ぽよっ!」
鉛のように固くなったモンスタースライムは、猛烈な速度で体当たりを仕掛ける。
「くっ!」
その速度は予想以上で、バンデットモンキーが弾かれた。
モンスタースライムは即座に反転っぽい動きをして、優勢を奪いに行く。
「もう一回【回転剣舞】を、『一発』お見舞いしてやれ!」
対してマウント氏は、再度の斬撃を指示。
モンスタースライムは一発目を跳躍してかわしたところで、すぐさま平らになって二発目に対応。しかし。
「……今っ! 二発目だ!」
二発目に対しての早い指示を逆手に取り、相手に回避態勢を取らせた後に、遅れて斬撃を放つ。
「っ!」
この攻撃は見事に、スライムの虚を突いた。
斬撃が直撃し、転がるモンスタースライム。
「まだまだっ! 続けるんだバンデットモンキー!」
放たれる、即座の追撃。
「【縮小】ぽよっ!」
対してスライムは即座の指示で、モンスターをピンポン玉ほどに『小型化』させた。
そして狙い通り、外れた斬撃が通り過ぎて行ったのを確認したところで――。
「【硬化砲弾】!」
【縮小】から放つ弾丸は、一直線に敵を狙い撃つ。
「避けろ! バンデットモンキー!」
まさに弾丸のような勢いで飛来したスライムを、猿がギリギリのところで回避する。
「【サメ】ぽよ!」
すれ違った両者は、すぐさま反転して動き出す。
「【火吹き】!」
迫るモンスタースライムに対し、マウント氏の攻撃はブレス。
範囲攻撃は、この状況下からの回避があまりに難しい。しかし。
「【喰らいつき】ぽよ――っ!!」
突然モンスタースライムが、その体積を膨張させた。
津波のように大きくなり、牙の並んだ獣の口となって襲い掛かる。
思わず「そのスキルの方がサメだろ!」と突っ込む観客たち。
【火吹き】のダメージは受けたものの、炎ごと敵を食ったモンスタースライムは猿を放り出した。
「……さすがだな」
大きなダメージを受け、ため息を吐くマウント氏。
「メイさんと勝負できる機会のため、敗けられないぽよっ!」
「それはこっちも同じこと。そして勝つのは……俺だ! 【スキルテイカー】!」
マウント氏が指示すると、広がる光がモンスタースライムごと付近を照らし出した。
「何が起きたぽよ?」
「バンデット、その意味を考えてみるがいい!」
「メイさんのためなら何でもする、無法者ってことぽよ?」
「賊だよ! 賊っ! 最後に相手が使ったスキルを奪って使用不可能にしたうえで、こっちが使えるようになる。そんなスキルだ。猿の【喰らいつき】じゃ範囲が狭すぎて、こっちが使うことはなさそうだが……スライムにとっては大技が消えるのは痛手だろう?」
「なるほど、その通りぽよ……!」
「さらに!」
優位を取り、笑うマウント氏。
「バンデットモンキー! 【挑発】だ!」
マウント氏が指示すると、猿は「やれやれ」といったポーズでモンスタースライムを挑発。
ものすごくマウント氏っぽいその態度に、ピキッとするスライム。
だがマウント氏は、【挑発】をやめない。
さらにバンデットモンキーは、左手をこちらに向けて「ほら、こいよ?」みたいに手招き。
ついにモンスタースライムが、その表面を怒りに波立たせ始めた。
敵モンスターが怒りで回避や防御がおろそかになりまくるが、攻撃力は上昇するこのスキル。
「ねえねえスライムちゃん、必殺の【喰らいつき】はもう使えない。そのうえ【挑発】されて負けるって――――どんな気持ち?」
なんとマウント氏は、バンデットモンキーと一緒に完璧な煽りを決めた。
「そうは……いかないぽよーっ! 【サメ】ッ!」
鋭いヒレに変化したモンスタースライムは我を忘れ、これまで以上の豪速で接近。
それを見て、笑うマウント氏。
「バンデットモンキー……【絶体絶命剣】!」
それは窮地になるほど、威力の上がる必殺剣。
HPが大きく減ったこの状況なら、火力範囲そして剣速までもが上昇。
「最後は、派手に決めろォォォォォォ――ッ!!」
「【スライムカウンター】ぽよ」
「…………えっ?」
それはスライムならではの【当身】攻撃。
敵の放つスキルの全てを吸収してそのまま返すという、モンスタースライムの奥義。
【絶体絶命剣】の持つ『危機による上昇』効果に、【挑発】による攻撃力の上昇。
その二つが合わさった一撃は、猛烈な火力をもった範囲攻撃となり、逃げ場すらなくなる。
「ぎゃ……ぎゃああああああああ――――っ!!」
そしてそのまま、バンデットモンキーを吹き飛ばした。
「勝負あり! 勝者スライム・スライム組!」
「「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」」
なぜか一緒に巻き込まれて吹き飛んだマウント氏に、会場から大きな歓声がわき上がった。
◆
一方こちらは一歩進み、ベスト8を決める戦いが山場を迎えていた。
「エンシェントクロウ! 【エーテルレイン】!」
樹氷の魔女が指示を出すと、広げた翼から放たれる無数の魔力光弾。
降り注ぎ、炸裂する魔力の輝きが爆発をつなげていく。
その中を逃げ回るのは、頭に葉っぱを一枚乗せ、背中に大きな巻物を背負った忍者タヌキだ。
広がる誘爆は逃げ場を奪い、タヌキの脚を弾いた。
「いまだ! 【シューティングクロー】!」
バランスを崩したタヌキが転がったところで、一気に突撃技で追撃。
輝く爪が倒れたタヌキに直撃して、エフェクトを起こすが――。
そこに残されていたのは、丸太のみ。
「【変わり身の術】ッ!?」
「【火遁・紅蓮獅子】!」
隙を晒したカラスに、すぐさまトレーナーの忍者少女アンズーが指示を出す。
すると飛び掛かる炎の獅子が爆発炎上し、直撃した。
巻き上がる盛大な炎の中、樹氷の魔女は正面から駆けてくる敵影を把握。
カラスが体勢を取り戻すのと同時に、先手を打つ。
「葬列の紫炎、輪廻転生の鐘、閃け闇の昏き輝きよ――――【鳳翼天華】!」
「っ!! 防御――ッ!!」
忍者タヌキは急停止して防御に入るが、紫の炎を受けて転倒。
「今だ!」
樹氷の魔女は、エンシェントクロウに攻撃を指示。
追撃のため、大きく翼を広げたその瞬間。
「……燃えろ、【風魔追討手裏剣】」
「ッ!?」
燃え上がった炎に隠れて投じられていた追尾の大型手裏剣が炸裂し、爆発炎上。
樹氷の魔女のエンシェントクロウは、忍者タヌキの前に敗れ去った。
「樹氷ちゃん、惜しかったなぁ……!」
「最後の手裏剣が見えないのは、もう仕方ないだろ!」
樹氷の魔女は、レンが使用した紋様が光るカラスという最高にカッコいいモンスターに『見た目が合うスキル』を優先したため、やや構成が甘くなり敗戦となった。
「でもベスト16は立派だな! 忍者タヌキの子は結構名前の知られた従魔士だし、十分健闘したぞ!」
「隠されたセンスが発揮されたね」
「これはまた使徒長ちゃんが一目置くんじゃない?」
掲示板組は、拍手で樹氷の魔女の健闘を称える。
「まだまだだ。この程度では――――かの領域には程遠い」
「顔が笑っちゃってるよ」
「こ、これは含み笑いだ」
しかし思った以上にトーナメントを進めた上に、掲示板組の評価も上々。
樹氷の魔女はうっかり、うれしさを顔に出してしまうのだった。
誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!
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