1279.トーナメントを進みます!
「アルミラちゃん! 【瞬刺殺】だーっ!」
黄金色のウサギに命じたのは、バニースーツに燕尾型の腰巻をしたトッププレイヤーの一人、バニーラビッツ。
すると角ウサギは、弾丸のような速度で突進。
鋭い角による刺突を狙って跳躍。
「――【ロケット頭突き】」
白く長いふわふわの髪に魔女帽を乗せた魔導士マリーカが、相棒のペンギンエンペラーに命じる。
すると雷のような毛を頭部に生やしたペンギンも、反撃体勢に。
アルミラージとペンギンエンペラーは空中でぶつかり、弾かれ合った。
「やるねーっ、さすが聖騎士の導き手!」
「――そっちも。狂気の兎娘の名は、伊達じゃない」
不敵な笑みを、浮かべる二人。
「すごいバトルだ……」
「ああ、すごい! でも……初心者階級なんだよな」
「ちょっとー! それ言わないでよーっ!」
「――無粋」
熱いトップの戦いは、実は初心者階級。
すぐさま言い返す二人の戦いに、また客席が笑い声をあげる。
モンスター・ワールドグランプリは、どこもかしこも大盛り上がりだ。
「続いてCブロック、二回戦第三試合。メイ・リザード組と、パクチ・スノーディア組です!」
そんな中で始まる無差別級の試合は、メイと青髪を結んだ青年。
その相棒のモンスターに、付近のプレイヤーたちが息を飲む。
「出たぞ! スノーディア!」
「文句なしの高ステータスモンスターだな! ホワイトバンビの進化形だ!」
メイの二戦目は、高ステータスで有名な強モンスター。
スノーディアは、白い毛並みに広がる氷の角と蹄がカッコいい鹿のモンスターだ。
初期ステータスが非常に高く、最初からできあがっているため、各所の練習バトルで無双。
初戦も、自慢の火力で押し切っての圧倒的勝利だった。
「あのリザードを勝てるモンスターにするとは、さすがメイちゃん。だがその快進撃も、ここまでだ!」
ここまで圧勝できたせいか、リザードを指差し余裕を見せるパクチ。
「って、全然聞いてねえ!」
一方リザードは、自分を応援する観客に手を振って応えていた。
これにはメイも「あはは」と笑う。
こうして話が一段落したところで、スターダスト団員が開戦を合図する。
「それでは始めます! 二回戦第三試合……レディー、ゴー!」
「スノーディア! 【特攻】だ!」
初手はいきなりの突撃。
リザード目がけて駆け出したスノーディアは、速い。
「まずは右は回避! 大きめに!」
スノーディアの角は刃のように鋭く、網のように広い。
頭を低くしての特攻は、それだけで立派な範囲攻撃だ。
これをリザードは、速い動き出して回避。
「まだまだ【特攻】連打!」
対してパクチは、連続での特攻を指示。
小回りも利くスノーディアが角を振り回しながら迫れば、リザードは逃げの一手を続けるしかない。
「【フロストバイト】!」
スノーディアが右前足を強く踏みつけると、地面に霜が降り、それが刃となって突き上がる。
リザードは慌てて下がって、距離を取る。
「まだまだ! 【氷刃乱舞】だ!」
すると離れた距離を利用する形で、スノーディアがその角を激しく振り回す。
生まれた冷気の刃が、付近一帯に放たれる。
「右! 左! しゃがんでジャンプ!」
立て続けの攻撃となったが、メイはこれを冷静に見定めながら指示。
どうにかギリギリでかわすことに成功した。しかし――。
「どうだ! これがスノーディアの攻撃力! もう一発! 【氷刃乱舞】!」
「もう一回っ!? ……でも、大丈夫!」
激しい攻撃も、メイにとっては単純な反復。
「左、左、しゃがんで右にステップ!」
今度は華麗な回避を披露し、体勢にも余裕あり。
「今だよっ! 【ウィンドクロー】でお返しだーっ!」
メイは反撃に、空刃の連射を挟み込む。
「っ!」
だがスノーディアは、【敏捷】にも長けたモンスター。
やや大柄な身体ながらも、柔らかなステップでこれを回避する。そして。
「【吹雪】だーっ!」
氷の角が割れ砕けると、巻き起こる吹雪がリザードを狙う。
その範囲は広く、リザードの肩口を氷片がかすめていく。
「さあ今だ! 【特攻】!」
わずかに体勢を崩したリザードを狙って、即座に仕掛ける攻撃。
「おい! 【特攻】だって!」
しかしここでスノーディアは、なんとパクチの指示を無視。
生え変わった角の様子を確かめるように、その場で頭を振ってみせた。
「来た! 動物値不足だ!」
「これまでは速攻で勝負を決められたけど、ついに指示を聞かないパターンが出てきたぞ!」
スノーディアは最初から優秀なステータスを誇るが、それだけ求められる動物値も高い。
戦いが長くなれば、こういう展開も普通に見込まれる。
「しかたない! もう一回【吹雪】だ!」
スノーディアはようやく、言われた通り【吹雪】を使用する。
「っ!?」
広がる吹雪は、ただ放出しただけ。
リザードを狙うのではなく、巻き起こした白煙で視界を埋めただけだった。
「……マズいな。こうなったらもう、とにかく全てのスキルを指示して、暴れ回らせて何かが当たることに期待するしかない……っ!」
パクチは破れかぶれな暴走攻撃を狙い、白煙が収まるのを待つ。
そして、視界が晴れたその瞬間。
「今だ! フロスト――ッ!?」
指示を出そうとして、驚愕する。
バトルの舞台に、リザードの姿はなかった。
「え? どういうこと?」
「リザードがいないぞ!」
これには観客たちも、辺りをブンブンと見回す。
「まさか……スキルか!」
そしてパクチが、その可能性に気づいたその瞬間。
「【鉄拳】だああああ――――っ!」
メイの声と共に【カメレオン】を解いたリザードが、その前脚に拳を叩き込んだ。
「っ!?」
殴り飛ばされたスノーディアは転がり、倒れ込む。
そこにすぐさま駆け込んでいくリザード。
「【氷刃乱舞】だ! 【氷刃乱舞】で足止めしろーっ!」
パクチは慌てて叫ぶが、リザードに比べてそもそもの反応が遅い。
「【猛ダッシュ】から、もう一回【鉄拳】っ!」
スキルを発動する前に二発目の拳が炸裂し、弾き飛ばされたスノーディアは一気に瀕死状態。
「それなら【フローズ・スタンプ】だ! やれ! やってくれーっ!」
叫ぶパクチに、ようやく応えての跳躍。
その踏みつけ攻撃は、直撃後に氷塊を突き上げる高火力攻撃。
勝負はまだ分からないかと、観客たちにそう思わせたが。
「【マグマ・スプラッシュ】!」
自らを中心に勢いよく噴き出した溶岩が、着地前のスノーディアに直撃。
攻撃はキャンセルされ、そのまま地に落ちたスノーディアは魔法陣に消えていった。
「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」
伝説級とは言わずとも、数は少なく有名な強個体をリザードで打倒。
「なるほど……こう見ると指示への反応速度とかが全然違うな」
「これが動物値、信頼の違いだな」
そんな見ごたえのある試合は、観客たちの歓声を生み出した。
「勝負あり! 勝者メイちゃんリザード組!」
「やったーっ!」
こうしてメイは、リザードを抱えてクルクルと回転。
「お見事ですっ!」
拍手で迎えるツバメたち。
二回戦も無事に勝利して、トーナメントを突き進む。
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