1275.のんびりタイムです!
「気持ち良かったねぇ」
「そうですねぇ」
ほわほわ状態のさつきがつぶやくと、隣りのつばめがゆっくりとうなずく。
今度は大浴場でのんびり過ごした四人は、部屋に戻ってきて息をつく。
「ここで、お仕事を終わらせちゃいましょうか」
可憐がテーブルに取り出したのは、運営から頼まれたインタビューを文字起こししたものの確認。
ちょっとしたアンケートのようなものがついている。
「やっぱりメイが強く記憶に残ってる出来事は、『真実に気づいた瞬間』なのね」
「ゴールデンリザードは何万体倒してもいなくならないって聞いた時は、頭が真っ白になったから……」
クク・ルルの悲劇を思い出し、さつきは「てへへ」と笑う。
「レンちゃんは……あっ、あの吸血鬼と戦った後の夜空だね! 覚えてるよーっ! すっごく綺麗だった!」
「あの時はまさか、こんなに楽しい時間が待ってるなんて思わなかったわね……」
可憐はそう言って、自分が使われたポスター用の黒い画像を見る。
「あの時はまさか、こんなに恐ろしいことになるなんて思わなかったわね……」
可憐はそう言って、白目をむく。
「ツバメちゃんは、ジャングルで最初に会った時なんだね」
「はい。やはりそれまで誰も気づかなかった【隠密】を見破られて、初めてプレイヤーに声をかけられた瞬間だったので」
「ジャングルの冒険も楽しかったねぇ」
「今でも召喚のクマさん親子を見ると、あの時のことを思い出します」
「まもりちゃんはー?」
「ど、毒沼だらけのフローリスが、花の都に戻った瞬間ですね」
街が色づいていく瞬間、その中心にいたメイを思い出して自然と笑みがこぼれる。そして。
「ああっ! その前に勘違いして『メイちゃんカフェ』と答えた時のことも、そのまま載ってます……っ!」
うっかり一番おいしかった記憶を話して、運営に爆笑されたことを思い出すまもり。
「ですが、こうして自分の動画を多くのプレイヤーが見ていたり、広告に出ているのは不思議な感じですね」
「は、はひっ」
「卒業アルバムでは、集合写真にも写っていなかったのですが」
「それはそれで気になるわね。どうしてそんなことに……」
「私の前に背の高い人がいて映らなかったパターンと、集合に遅れていたのに気づかれなかったパターンですね」
つばめは、現実でも見事な【隠密】を決めているようだ。
「今では、写真や動画をまとめるのが大変なほどです」
正直に言えば今も撮影の類は得意ではないのだが、さつきたちと一緒なのであれば、それを残しておきたいという思いでいる。
それほどに、今が楽しい。
ただ、つばめは知らない。
自分の兄は、つばめのさらに十倍の写真や動画などを所持していることを。
「こうやって色々遡れるのはいいわね」
これまでの冒険の写真も飾られたインタビュー記事には、大きな活躍をした際の一枚も載っていて、一緒に見るのが楽しい。
「本当だねぇ」
そこには、これまで戦ったトップ勢の姿も見られる。
アルバムとして考えるのであれば、これ以上の楽しみ方はないだろう。
「今回のイベントも、新たな一枚になるのですね」
「そうでしょうね」
「パ、パンダと一緒だったところも見たいです」
「パンダちゃん可愛かったねーっ!」
大熊猫の連れていたカンフー使いのパンダを思い出して、うなずくメイ。
「星屑はクマが二足歩行になりがちなの、いいわよね。動きもなぜか愛嬌のある子が多いし」
「あのパンダも結構レアなようです。魔力は上がりにくいようですが【筋力】は高く、【敏捷】も結構上がるようです。上手に育てればかなりの強敵になりそうですね」
「バ、バイセルで出会った、翼と手が一緒になったモンスターも気になりますね。伝説級と言われていましたし」
「初期ステータスの時点からかなり強いみたいよ。そのうえでしっかり言う事を聞かせられる動物値を持つプレイヤーが一緒。間違いなく優勝候補でしょうね」
「わあ、カッコいいね!」
すでに上がっている様々なモンスターの画像を見ながら、わいわいする四人。
各所に散ったプレイヤーたちは見つけたモンスターを続々と公表していて、外からでもイベントの盛り上がりがうかがえる。
「最初に集めたものだけでなく、交換用のスキルもそろったし、実はバイセルでオマケに買っておいたスキルもあるの。トーナメント開始が楽しみね」
「……もうちょっとだけ、ステータスアップしてみよっかな」
すると我慢できなくなってきたのか、さつきがそんなことをつぶやいた。
「お供します」
「わ、私もいきますっ」
「構わないわよ。とりあえずアンケートは埋まったし」
話し始めた結果、また少し遊びたくなったさつきたちは、最後のステータス上げをすることにした。
さっそく『星屑』にログインして、相棒を呼び出す。
「りーちゃん!」
右手を掲げたメイが【トレーナーグローブ】を起動すると、すぐさまリザードが飛び出してきた。
「登場の仕方が、より元気になってますね」
「メ、メイさんの雰囲気がすごく出ています……!」
「そうそう、私ちょっと確認しておきたいことあるから少しだけ出てくるわね」
「はい」
そう言ってレンは、一度離脱。
メイたちはそのまま、もう少しだけリザードのステータス上げをして遊んだのだった。
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