1269.次の目的地は!
「やったー!」
盗賊のキャラバンから、呪いの宝珠を取り返したメイたち。
何気に難易度の高いクエストを達成して、よろこぶメイに研究者が差し出したのは――。
【超雷光蹴り】:足に雷光をまとって放つ飛び蹴り。【筋力】と【知力】によって威力が上昇する。
「おおーっ! 何だか強そう!」
面白くなりそうなスキル書だった。
「ありがとうございました。これで悪王の呪いを研究することができます。いつの日か必ず封じ込めてみせますよ」
そう言って研究者の一団は、去っていく。
「このクエストの前に、もう少し難易度の低いものでスキルやステータスを上げた方が良さそう……」
リザードの活躍に呆然としていたオルトロスパーティも、別クエストに移ることにしたようだ。
「それにしてもリザードがこんなに良い動きをするなんて……メイちゃんすごいですねぇ」
「いえいえー」
恥ずかしそうに頭をかく、メイとリザード。
オルトロスパーティは、その姿を見て笑いながら新クエストの探索に街へ戻っていく。
「私たちはどうしましょうか」
「今日はまだ、スキル探しをする余裕がありますが……」
「そ、それなら他にも、メイさんたちが訪れてきたマップが見てみたいです」
「そういう事なら次は……グランダリアとかどう?」
「いいと思いますっ」
こうして四人は、行き先をグランダリア大洞窟に決定。
セフィロト丸に乗り込み、そのまま現地へと向かう。
やがて見えてきたのは、深い森林地帯。
そこに、長い幅を持つ壮大な滝が現れた。
滝を作り出している、切り立った円形の台地。
その脇には、地下へと向かう半円型の穴が開いている。
ここが、グランダリア大洞窟だ。
「た……大変なことになってる――――っ!!」
メイが思わず叫び声を上げた。
グランダリアの出入り口となる、半円状の穴。
その付近には広場があり、露店が今日も賑わっている。
そしてそんな探検者たちを見守るのは、石造りのダンジョンギルドの近くに建てられた、メイの大きな銅像だ。
耳と尻尾はもちろん、裸足に毛皮のマント姿で剣を掲げる姿勢は、完璧な野生児だ。
「今回は、広場から少し離れた草原地帯に飛行艇を留めましょう」
出入り口から百メートルのところにセフィロト丸を留めて、四人は広場の方へ。
「……なんとか、ツタでグルグル巻きとかにできないかな」
『祝・グランダリア初制覇』と刻まれた銅像にそーっと近づきながら、つぶやくメイ。
辺りには、この場所を待ち合わせにしている冒険者や、メイの聖地として見に来ているプレイヤーもいる。
「今は無理そうねぇ」
ここで突然本人が出てきて、大勢の前でツタを張るのはさすがにムリだろう。
レンはくすくすと笑う。すると。
「よいしょっと」
「「「「っ!?」」」」
突然メイ像の横に、一人の少年が姿を現した。
まさに突然、ワープでもしてきたかのような登場に驚くメイたち。
「困ったな……」
大きなリュックに、登山でもしそうな作りのブーツ。
要所のみを守るレザーの防具をつけた少年は、息をつく。
「どうしたんですかー?」
メイがたずねると、その声の主に気づいた付近のプレイヤーたちが目を見開いた。
「実はダンジョンで見つけた素材を、ダンジョン三階に落とした状態で【帰還の宝珠】を使ってしまったみたいでね。置きっぱなしになっちゃったんだよ」
そう言って少年は再びため息をつくと、思いついたように手を叩いた。
「そうだ! 君たちは冒険者だよね? 拾ってきてくれたら……モンスター用のスキル書をあげるよ。それでどうかな?」
少年がそう提案した瞬間、一斉に広がるウィンドウ。
「あれ? 俺たちも?」
どうやら付近のモンスター連れプレイヤー達にも、見えているらしい。
「もちろんだよ。落として来た【光魔石】は、十五個ほどかな。一人一つ、早い者勝ちでどうぞ」
「「「っ!?」」」
それは意外にも、複数参加の競争型クエスト。
「場所は三階層の端だよ。それじゃあ、よーい……スタート」
そのまま容赦なく、【光魔石】回収競争が始まった。
「メイちゃんたちと競争できるぞーっ!」
「ひゃっほー!」
大喜びで、ダンジョンへと飛び込んでいくプレイヤーたち。
しかしメイは、動かなかった。
すると、一人の少女がやって来た。
「あっ、パンダだーっ! 可愛い!」
白黒のモコモコした耳付きパーカーに、黒のタイツと白ブーツというパンダ装備の少女。
大きな団子を左右に結った黒髪も、良く似合っている。
思わずメイが目を輝かせると、パンダ少女が問う。
「うぇひひ、メイちゃんは行かないのでありますか?」
「ど、どうぞお先に」
「それでは、失礼するであります」
メイがそう言うと、パンダ少女は敬礼をして駆けて行く。
なんと彼女は、連れているモンスターまでパンダだ。
白黒の身体に結んだ黄色い帯が、そこはかとなくカンフーっぽい。
「ふふ、私たちも追いかけましょうか。この隙にツタで隠しても……原状復帰で元に戻るわよ」
「ああっ! そうだった!」
驚愕の事実に、ハッとするメイ。
名残惜しそうに野生児像を見上げながらも、先行したプレイヤーたちを追う形で走り出す。
そしてそのまま、久しぶりのグランダリアに飛び込んだ。
1階から5階までは、基本岩場の道が続く。
「今回は行き先を考えると、前回とルートを変えても良さそうです」
取り出したマップに【地図の知識】が活きれば、自然と道が見えてくる。
今回選んだのは、岩場を駆け降りる形のルートだ。
「おい、メイちゃんだ! やっぱグランダリアを踏破しただけあって早いな!」
「でもリザードの足では、さすがに追いつけまい!」
前回得た地図が、役に立った。
ちょっとしたショートカットで追いついた、先行のプレイヤー二人は、鹿と豹のモンスターを連れている。
当然移動能力は高い。しかし。
「【バンビステップ】! りーちゃんも【猛ダッシュ】!」
「「っ!?」」
まさかの事態に、驚く二人。
「いやいや、メイちゃんが速いのは知ってるけど! リザードがリザードの速度じゃねえ!」
「こっちは速度重視のモンスターなんだぞ!?」
小型のモンスターが砂煙をあげながら爆走する姿は、ちょっとコミカル。
スピード自慢の二体を、そのまま追い越していく。
「ていうか、池ルートに行くのか!?」
「リザード、絶対言うこと聞かないだろ!」
池ルートなら短い距離で地下2階に着けるが、魔物がいる上に、モンスターによっては泳ぎができない個体もいる。
こういう時リザードは、『得意の道』でなければ、付いてきてくれないのが定番だ。
そのために気になって、思わず足を止める二人だが――。
「せーのっ! それーっ!」
躊躇なく、メイと一緒に飛び込んだ。
その勢いは「夏到来! 初めてのプール!」みたいなノリ。
するとそこに、少し遅れてレンたちも到着。
「泳いでいくのね」
そのまま三人も、澄んだ水が綺麗な池に飛び込む。
「それでは行きましょうっ! 【装備変更】!」
メイは【海皇の槍】を右手に持ち、左手でリザードの手を取ってスキルを発動。
「【ドルフィン・スイム】!」
そのまま華麗な泳ぎで、池を進んでいく。
「……これ、ヤバいな」
「ああ、メイちゃんたち一気にトップに躍り出るぞ!」
洞窟ルートのまま、慌てて目標地点を目指す二人。
メイたちは早くも、トップ争いに名乗りをあげていく。
誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!
返信はご感想欄にてっ!
お読みいただきありがとうございました!
少しでも「いいね」と思っていただけましたら。
【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!




