1266.実戦ですっ!
今回バイセルで買い付けたモンスター用スキルから、使用したのはこの五つ。
【鉄拳】【猛ダッシュ】【ウィンドクロー】【マグマ・スプラッシュ】【カメレオン】
「これでひとまず、スキルも積めた形ね」
「これからどうしよっか?」
「まずはクエストを受けて、各スキルの使用感を見ながら新スキルも回収って感じかしら」
「より良いものを探すのですね」
「手の内がバレた頃に、しれっと変えるためにね」
「ト、トーナメント等で手の内がバレた際に、スキルを変える。やっぱりレンさんは策士です……っ」
レンの言葉に、大きくうなずくまもり。
四人はリザードと一緒に、行き先を考える。
「そうだっ」
するとメイが、ポンと手を叩いた。
「久しぶりに、前に行ったマップを見に行ってみるっていうのはどうかな!」
「楽しそうですね」
「いいわね」
そんなメイの提案に、うなずくツバメたち。
猛烈な勢いで、ステータス上げやスキルクエストの情報が拡散されている現状でも、四人はマイペースだ。
さっそくバイセルから、ポータルでの移動を開始する。
「そういう事なら、まずはここから」
「わあ! 久しぶりだねーっ!」
たどり着いたのはウェーデン。
雪の町ではヴァイキングとの大きな戦いを制し、さらにシオール達トッププレイヤーとの激しい戦闘も行った。
ポータル広場は、城の中。
一歩外に出れば、そこは一面の銀世界だ。
「やはり、温かな雰囲気のお城から出た瞬間に広がる雪の町の感じは、とても良いですね」
「はひっ。暖かい料理が欲しくなりますっ」
温かみのある色使いの、石造りの建物が続く街並み。
今回も変わらず、散歩に出た犬のようにはしゃぐメイに、笑みがこぼれる。
「心なしか、狼系のモンスター連れが多く見られるわね」
そんなことを話しながら、ウェーデンの町を進んでいくと――。
「どうしたものか……」
つぶやきながら歩く、一人のNPCを発見。
「どうしましたかー?」
メイがたずねると、NPCの青年が語り出す。
「実は悪い大猿がいてね。この冬はエサが少ないのか、うちの家畜を狙いにくるんだ。何度か立ち向かおうとしたんだけど、人間を見るとすぐに逃げてしまってね」
「なるほどー」
「……君が連れているのはモンスターだね。良ければ、猿の打倒に力を貸してもらえないかな。成功したら、モンスター用の本をあげるよ」
「はいっ!」
完全にモンスターバトル関連のクエスト。
四人はうなずき合い、そのまま青年の住む家畜小屋へ。
木製の小屋には、豚たちが並んでいる。
「その子は、そこの雪山に隠れてもらえるかい?」
「しばらく、ここで静かにしててね」
メイがそう言うと、リザードは盛られた雪の小山の背後に隠れる。
ここで動物値が足りないと、我慢できずにモンスターが動いてしまい、猿が逃げてしまったりする。
しかしリザードに、その気配はなし。
「僕たちはこっちに。そろそろヤツが現れる時間なんだ」
青年に言われるまま、メイたちは用具小屋に隠れる。
「こういうのってドキドキしちゃうね」
「は、はひっ」
楽しそうに笑うメイ。
一方まもりは、真横のメイに笑いかけられて、二重にドキドキしてしまう。
「来た……!」
青年が声をもらす。
用具小屋の隙間からのぞく四人。
家畜小屋に白毛の大型猿が、近づいてくる。
その体躯は2メ-トルに届かないが、その身を包んだ白毛の影響もあり、かなり大きく見える。
たてがみが見事な白毛猿は付近を見回し、そのまま家畜小屋へ。
それに合わせて、リザードは雪山を壁にする形で対角線の位置を取る。
そして、白毛猿の斜め後方につけたその瞬間。
「今です!」
「りーちゃん! ゴーッ!」
扉を開け放ち、メイが声を上げた。
驚きに、付近を見渡す白毛猿。
その目に、特攻してくるリザードの姿を発見。
観念したのか、そのまま戦闘態勢に入る。
「直接の手助けは控えてください! 多対一になってしまうと、逃げられてしまいます!」
「出来ることは、指示のみってことね!」
レンはすぐさま状況を把握し、分かりやすく言い換える。
白毛猿は、直線の低い跳躍と共に拳を振り上げた。
「りーちゃん、バックステップで下がって!」
白毛猿は、右の拳を豪快に振り降ろす。
リザードはメイの指示通り、バックステップで後退。
すると白毛猿は、さらにもう一度跳躍。
「もう一歩!」
全力の振り降ろしで、地面にめり込む一撃を放った。
しかしメイの指示通り下がったリザードは、これも難なく回避している。
「踏み込んで【鉄拳】!」
リザードは一気に距離を詰め、小さな拳を引く。
そしてそのまま、白毛猿の胸元に拳打を叩き込んだ。
「「「っ!!」」」
その威力に、白毛猿が弾き飛ばされる。
地面を擦るようにして跳ね、雪山を砕いて転がったところで、ようやく停止。
慌てて体勢を立て直し、顔を上げたところで――。
「【ウィンドクロー】!」
リザードが、左手を振り上げる。
生まれた四本の斬撃が飛来するのに気づいた白毛猿は、これを前への跳躍で回避する。
そして着地と同時に走り出し、人の身長を跳び越えるくらいの跳躍から空中回転。
【回転爪撃】で、リザードに飛び掛かる。
「もう一回!」
しかし【ウィンドクロー】は、左右二回の連撃が可能。
振り下ろす右手の爪から放たれた斬撃が、空中の白毛猿を切り裂いた。
斬られて落ちた白毛猿は、それでも両肘をついて着地。
そしてその手に取った雪を、投じようとしたところで――。
すでに目の前に迫っていたリザードの姿に気づく。
「そのまま【鉄拳】だああああ――――っ!!」
顔面に叩き込まれた拳の一撃は白毛猿を転がし、いまだ手つかずの雪原に高々と白煙を巻き上げた。
「やったー!」
HPゲージはゼロ。
白毛猿は、倒れ伏したまま動かない。
メイはリザードを抱え上げて、初勝利を祝うようにクルクル回る。
「鋭い動きと、強烈な一撃。メイを思わせる戦いぶりね!」
「お見事です。メイさんの指示はとても的確でした」
「こ、こんなに息の合った戦いは、なかなか見られないと思いますっ」
とても初めてのクエストとは思えない、見事な戦い。
間違いなく良い成長を見せているリザードを囲んで、四人は喜び合うのだった。
そして何となく受けたこのクエストが、実は結構レベルの高いものであることを、メイたちは知らない。
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