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1262/1376

1262.撮影と食レポと

 さつきたちは運営の広報部と共に、モンスター・ワールドグランプリのイベント動画を撮影していた。


「メイさん速すぎますっ! 映像がブレてますーっ!」

「はいっ」


 言われてメイは、スピードダウン。

 遅れてくるホワイトタイガーに、速度を合わせる。


「最高……! これは良い動画になりそうです!」


 すると一転、ホワイトタイガーの迫力とメイの身軽さが調和して、最高の映像になった。

 一方、少し離れた岩場ではレンの撮影が進む。


「レンさんもっと、闇の雰囲気があるポーズをお願いします!」

「そんなものもう捨てたつもりなんだけど……こう?」

「さすがです! 運営の使徒たちも喜びます!」

「運営の使徒たちって何!?」


 まさかの言葉に、白目をむくレン。


「あれ、ツバメさんは……?」

「ここにいます」

「あ、モンスターの陰になってますね。三歩ほど右にお願いします」

「こうでしょうか」

「またモンスターが、ツバメさんの前に……」


 ツバメはモンスターと仲がいいのに、なぜかカメラの前に割り込まれて、やや撮影が遅れ気味。


「まもりさん、それは動物値上げ用のエサです」

「ええっ!?」


 そしてまもりは、休憩用の飲食菓子と一緒に置かれていたアイテムを食べようとして笑いを起こす。


「皆さん、ありがとうございました!」


 こうしてイベントの第二弾動画と、新ポスターの撮影は滞りなく終了した。

 しかし、これだけでは終わらない。


「まもりさんは、このままレポート動画の撮影に入らせていただきます。短めですが、よろしくお願いします」

「は、はひっ」


 緊張の面持ちで、向かうは星屑内の特設セット。

 今回はメイたちの現在地を考慮して、並ぶ木々と綺麗な花々の見える場所に、キャンプ風のテーブルとイスにランタンを設置。

 背の高いワンポール型のテントが、雰囲気をよく出してくれている。

 たき火が弾けて心地よい音を鳴らせば、そこはすっかりおしゃれ空間だ。

 もちろん、みんなで様子を見に行く。


「それでは始めます。まもりさんの新作料理レポート、まずはリハーサルなので気軽に」

「はひっ」


 リハーサルという事は、実質食べるだけ。

 わずかに緊張が軽くなる。さらに。


「まずは簡易の料理キットでも作れる、こちらからどうぞ。一品目は【スペアリブ】になります」


 目の前に置かれた骨付き肉に、すぐさまその目を輝かせる。


「最近はハウジングからの引用で、お皿などにもこだわりが出てきて、目でも楽しめます……っ」


 淡い青緑の皿に盛られた骨付きの豚肉には、程よい焼き目。

 肉汁が弾ける感じがたまらない。


「それではさっそく、いただきますっ!」


 まもりはそのまま【スペアリブ】を手に取って、嚙り付く。

 そしてその目を大きく見開いた。


「おいしい……っ! ニンニクと生姜の風味がしっかり効いていますね! まず香りで食欲を誘っておいて、食べたところに期待通り、焼き肉のたれをつけて焼いたような濃い味付けが来る……柔らかくも程よい噛み応えもあって、最高ですっ!」


 満面の笑みを浮かべるまもり。

 いきなり運営も満足する、楽しいレポートになった。


「続いて、メイドなどが持つ料理スキルを使うと作ることができる【パエリア】になります」


 すでに両手にスプーンという状態になっていたまもり。


「はああああっ、おいしそうです!」


 黒く武骨になったフライパンのような調理器具は、スキレット。

 そこに赤みを帯びたサフランライスが乗っている。

 アサリとイカとエビ、そしてパプリカとパセリで彩られた【パエリア】に、さっそくスプーンを伸ばす。

 そして思わず、両手で頬を抑える。


「とってもおいしいです! 海鮮の出汁が効いていて、サフランの香草ならではスパイシーさによく合っています! さらにトマトや玉ねぎといった野菜の旨味も一緒になって、いっぱい食べられてしまいますっ!」


 二品続けての当たりに、まもりは嬉しそうだ。


「今回は新料理二品を試していただきましたが、いかがだったでしょうか」


 そんな運営の問いかけに、笑みを浮かべたまま応える。


「防御しながらでも、食べたいですっ!」

「「「おおおおーっ!」」」


『防御しながらでも食べたい』

 そんな聞いたこともないワードを口にしたまもりに、運営陣は即座に「来た!」と笑顔になる。

 思い浮かぶのは、片手に持った盾で防御しながら、空いた手で持って食べるまもりのポスター。

 そんな構図、使わない理由がない。


「ドラゴンの強大なブレスを受け止めながら、満面の笑顔で【スペアリブ】に嚙り付くまもりさんの図で、間違いなしですね!」


 傍から見れば、まもりを焼こうと火を噴くドラゴン。

 しかし当の本人は、焼いた豚の肉を食べているという構成も良い。

 運営はもう、確信を得た表情だ。


「いつものメイの動画に負けじと、楽しいものができそうね」

「レンさんの写真も、毎回とてもカッコいいですよ」

「ちょっと何を言っているのか分からないわね」


 今回も『闇の魔導士が、黒の身体に紫の紋様を輝かせるカラスを使役する』感じの動画ができあがることを、知らないレン。

 もちろん熱烈な使徒勢が、駅に張られたレンのポスターを持ち去る事件が起きることも知らない。

 ここではしっかり、すっとぼける。


「で、では、ここからは撮影ですか?」


 いよいよ緊張で、固くなるまもり。


「いえ、念のため今のリハーサルにも録画入れてたので、そのままいこうと思います」

「ええっ!?」


 驚くまもり。

 一方レンは「やるわね……」と、息をつく。

 リハーサル時点の、まだ緊張の薄いまもりを撮っておくという作戦は、良い動画作りの鍵になりそうだ。

 近くでメイたちが楽しそうにしてるのも、むしろ「あり」だろう。

 三人が見切れたりしていれば、それもまた楽しい。


「今日のお仕事はここまでになります! ありがとうございました!」

「お疲れさまでしたー!」


 四人楽しく運営の依頼仕事を終えて、一息。

 ここからはまた、のんびりできる時間だ。


「また時間が空いてしまいましたね」

「……せっかくだし、この後もう一周りくらいリザードのステータス上げいきましょうか!」

「いきましょう!」

「はひっ。夕食まではまだ時間に余裕があります……っ」


 こうしてメイたちは夕食までの時間で、さらにリザードを強化しておいたのだった。

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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― 新着の感想 ―
クイズですが、かえってややこしくしてるかな、そうですね…プレーヤーとはどういうものか考えると良いかも、現在ならではかも。
運営にまで闇の使徒が!? スタッフ「…いっそ、手持ち料理に限り、腕に嵌めるガーダータイプの盾なら守りながら食べれるようにするか?」
クイズですが、プレーヤーとかそっち方面の考えで大丈夫ですよ、メイ達を外した理由は、まあ五月晴れは、あれしてますからね…。
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