1260.リザードの初陣
「クイズが早く解けたおかげで良い本がもらえたし、【知力】もかなり上がったじゃない?」
そう言ってレンとメイが、リザードの方を向くと――。
「――――恐縮です」
「わあ! しゃべったぁぁぁぁ!!」
これにはメイも、さすがに驚愕する。
「……ツバメでしょ?」
「バレてしまいましたか」
当たり前のように低めの声で、いくらなんでもリザードが選ばないだろう言葉を持ってくるツバメ。
素直に驚くメイとのやりとりに、まもりがくすくすと笑う。
「これで【知力】も150くらい上がったから、普通にステータスだけ見ても優秀な感じだけど……」
「【幸運】も、どこかに無いでしょうか」
クク・ルル村を一通り歩いてみても、ステータス上げのクエストらしきものは、もう見つからない。
四人はそのまま一度村を出て、再びジャングルに戻る。
そして今度は北部へ。
かつてメイが戦いの限りを尽くしていた、ジャングルの危険区域だ。
連なる木々と、その間に見られる大きな花をつけた植物。
つる植物が結ぶアーチは、独特な空間を生み出している。
「蛇が来るかも」
メイがそうつぶやくと、数秒後。
現れたのは、人間くらいなら飲み込める大きさの大蛇。
頭を持ち上げ、攻撃の体勢に入ったのを見てメイが前に出る。
「大蛇の噛みつきは、斜め下に来るから【アクロバット】!」
噛み付きであれば、持ち上げた頭がプレイヤーより高くなる大蛇は、噛みつきの軌道がどうしても同じになる。
メイはバク転で、噛み付きを余裕の回避。
「外から回り込んでくる攻撃は、そのまま締め付けにつなぐための流れだから、真横に逃げれば問題なしっ【バンビステップ】!」
メイは横への速いステップで、ポイズンパイソンの狙いを先んじてけん制する。
すると大蛇は、その口を開いた。
「離れた距離で口を開くのは、毒液の前兆っ!」
メイはササッと、サイドステップして移動。
毒液は直線的な攻撃のため、横への回避で問題なし。
するとポイズンパイソンは頭を低くして、地上を擦るような高速移動で接近してきた。
そのまま放つ、高速の喰らいつき。
「【ラビットジャンプ】【アクロバット】からの――――!」
しかし正面からの喰らいつきは、頭上がおろそか。
「【フルスイング】!」
首元への叩きつけ一つで、あっさりとポイズンパイソンを打倒してみせた。
そんなメイの戦い方を、じっと見つめていたリザード。
「そっち! 来てるよーっ!」
メイがリザードに向けて迫る、一頭のジャガーを発見。
銀色に模様の入ったシルバージャガーは、華麗なダッシュで迫り来る。
「メイ、指示を出してみて!」
「りょうかいですっ! 走って来ての接触の場合、必ず飛び掛かりになるからしゃがんで!」
リザードは言われたまま、その場に身を低くする。
するとシルバージャガーが、頭上を通り過ぎて行った。
すぐさま振り返り、構えるジャガーと向き直るリザード。
わずかなにらみ合いの後、シルバージャガーが先手を打ちに行く。
「踏み出しながらの【連続喰らいつき】は、バックステップで!」
リザードは言われるまま下がる。
「いち、に、さん!」
そして連続バックステップで、三連続の攻撃をかわしたところでメイは反撃を指示。
「攻撃だーっ!」
リザードは速い踏み込みから、そのまま手ではたく形で攻撃。
「「「っ!?」」」
思わず驚くレンたち。
横に払うような攻撃を喰らったシルバージャガーは、草の上を跳ね転がった。
「強くない!?」
「素手でも十分以上に高い攻撃力を持つのは、いいですね」
見事な攻撃に、わき立つレンたち。
するとシルバージャガーはすぐさま立ち上がり、魔力を弾けさせての高速移動。
放つのは爪でも牙でもない【高速特攻】
それは高い威力はもちろん、体勢を崩して追撃へとつなぐこともできる嫌らしいスキルだ。
「ここは防御でお願いしますっ!」
メイは無理せず防御を指示。
するとリザードは両手を組み、腰をしっかり下ろして【高速特攻】に対応。
直撃のエフェクトが派手に舞うも、的確な防御でダメージは少なく、体勢の崩れもない。
「ないすーっ!」
「防御も上手ですっ!」
【耐久】の高さが、しっかりと活きているようだ。
「いけいけーっ! ここで必殺の一撃だーっ!」
必殺スキルは、的確な防御や回避をされてしまうと隙が大きい。
この隙を逃さず、リザードは先ほどのメイを思わせるダイナミックな跳躍で接近。
剣もスキルを持たないため、そのままヒーローのようなジャンプキックを叩き込んだ。
見事な跳躍から放たれた飛び蹴りで、シルバージャガーは大きく跳ね転がって木に激突。
あがる砂煙と共に、そのまま粒子になって消えた。
「……つ、強いです」
「ステータスを考えれば、これくらいはおかしくないんだけど……さすがに驚くわね」
「メ、メイさんのような華麗な動きが、カッコいいです……っ!」
「それでいて、防御の的確さはまもりみたいだったわ」
スキルも使わずに圧勝。
早くも見せ始めた大器の片りんに、思わず感嘆してしまうレンたち。
「すごーい!」
見事な勝利を飾り、嬉しそうに拳を突き上げるリザードを、メイは抱きかかえてクルクル回る。
こうして皆で、華麗な初陣の戦果を喜んでいると――。
「「きゃああああ――っ!」」
さらに聞こえてきた悲鳴。
うなずき合い、駆け出すメイたち。
視線の先にはクク・ルル島のボスの一体である、ジュエルタイガーがいた。
モンスターの捕獲に来た二人の少女は、思わぬ高レベルボスとの邂逅に、瀕死の状態だ。
もちろん魔物は容赦などしない。
華麗な動きで、二人の少女に襲い掛かる。
「リザードちゃん!」
レンが杖を構え、メイとリザードが駆け出したその瞬間。
「っ!?」
変わった形状をした翼を持つ、体高2メートルに届かないほどの白竜が飛来。
そのままタックルで、ジュエルタイガーを弾き飛ばした。
跳ね飛んだ後、すぐさま体勢を立て直した大虎は、サファイアのような牙で反撃に入る。
猛烈な勢いの喰らいつきは、ボスならではの火力を誇る強烈な一撃だ。
「【テールウィップ】」
現れた女性プレイヤーは、短く簡素に指示。
するとムチのようにしなった竜の尾が、目にも止まらぬ速度で、青い牙の大虎を斬り飛ばした。
「無事、みたいだね」
ボス級の魔物を、一撃打倒。
少女たちの安否の確認だけ済まし、女性プレイヤーはクールにその場を立ち去って行った。
「今のって、クローナさんじゃない!?」
「そうだよね! 優勝候補のクローナさん!!」
その後ろ姿に、わき立つ少女たち。
「すごーい」
高い攻撃力には、メイも思わず感嘆する。
「トーナメントに出てくるなら、間違いなく強力なライバルになるわね」
「気合が入ります」
「は、はひっ! スキル選びも頑張りましょうっ!」
「おーっ!」
思わず垣間見ることになった、優勝候補の強さ。
メイとリザードは、元気に拳を突き上げる。
「さて、そろそろ一段落かしらね。記事用の書き物なんかも提出しなきゃいけないし、一度上がりましょうか」
「……【幸運】関係のクエストは、見つかりませんでしたね」
「まあ、この後スキル探しとかもあるし、そこで見つかるかもしれないわ」
なぜか【幸運】関係と縁がないメイたち。
魔法陣を展開すると、リザードはメイのように大きく手を振りながら帰って行く。
「すっかり、メイっぽさが出てきたわね」
四人は笑いながらログアウト。
ここからはしばし、旅館で過ごす時間になりそうだ。
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