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1259.クイズですっ!

「これで【技量】も392だっけ? 本当に伸び自体は良いのね」


 いよいよ、『成長させるのが難しい代わりに潜在能力は高い』のではという予想が、確信になり始めたリザード育成。


「そろそろ時間も遅くなってきたし、最後にもう一つくらいクエストができるといいんだけど……」


 そんなことを言いながら歩いていると、村の隅の家の前に、一人の女性が座り込んでいるのが見えた。


「どうしたんですかー?」


 さっそくメイがたずねると、20歳くらいの女性が顔を上げた。


「なに、今日は少し歩きすぎてしまってね。普段動かないものだから、めまいが……君たちは冒険者のようだね。ちょっと肩を貸してもらえないか」

「はいっ」


 メイがすぐにお姫様抱っこの形で抱えると、ちょっと照れた表情を見せる女性。

 そのまま建物に入り、本だらけの部屋に置かれたソファーに座らせると、一つ息をつく。


「ありがとう。お礼と言っては何だが、クイズでもしていないか? 正解すれば私の本を一つ差し上げよう。見れば君のリザードも、本に興味を持っているようだ」

「そーなの?」


 見ればリザードは興味深そうに本を開き、首を傾げている。


「モンスターが知識を求めるというのは非常に面白い状態だね。そこでどうだろう。私の出すクイズに答えることができたら、リザード君が読めそうな本をプレゼントしよう。そうすれば【知力】が上がるかもしれないよ」

「いい流れですね。ここで【知力】上げのクエストのようです」

「めずらしい内容だし、受けてみましょうか」


 レンが言い、皆がうなずく。

 すると女性は、一枚の紙片を差し出してきた。

 受け取るとそこには、見慣れぬ文字が並んでいた。


「古代文字ですか」


 ここに書かれた内容を調べるとなると、考古学者のところまで行って文字を確認する必要がある。しかし。


「ちょっと待って」


 ここで、レンが取ってきたメモが役に立つ。


「これはゼティアの流れで見た文字ね。内容は……数字になっているみたい」

「すうじ?」


 レンはメモを見ながら、紙片に書かれた古代文字を現代語に訳していく。


「『25』『1』『13』『1』『 20』『15』で一区切り。『11』『21』『18』『15』『9』で一区切り。『5』『11』『9』『20』『1』『9』で全部になるわね」

「……なんだろう」

「な、なんでしょうか」

「並んだ数字の穴を埋めるとかだったらまだしも、シンプルに数字を並べられて意味を読み解けっていうのは、少し難しいですね」

「そうね」

「ああそうだ。このクイズはかかった時間で本の内容を変えさせてもらおうかな。もちろん早く解いた方が良いものになるよ」

「「「「っ!?」」」」


 突然始まったタイムレース。

 そう言って女性は、楽しそうにする。

 メイとまもりは、数字をにらみながら首を傾げる。

 それを見て、リザードも同じように頭を傾けた。


「ええと、何かしらの言葉になるんだとしたら……変換は当然文字よね」

「数字と文字をつなぐ方法としては、『あいうえお』に1から順に数字を振っていく形ですが……最初の区切りは『のあすあとそ』なので違いそうですね」


 ツバメが首を振った後、レンがメモを手につぶやく。


「……英語だわ。しかも英単語だと思って考えると最初の数文字で『英語じゃない』って思わせる罠付き。これはローマ字読み」

「おおっ! なるほどー!」

「1をA、26をZで当てはめると最初の並びは『YAMATO』、続いて『KUROI』、最後に『EKITAI』になるわ」

「ヤマトの黒い液体ですか」

「しょ、醬油ではないでしょうか!」


 言われて、まもりがすぐに反応。


「さ、最近ヤマトで発売されたんです! 種類もいくつかあって、こだわりがすごいなって思ってたんです」

「間違いなさそうね!」


 レンの言葉に、すぐさま動き出すメイとツバメ。


「古代文字からの変換。さらに数字を英語にしてローマ字読みで解読。出てきたクイズに答えて現物を持ってくる。なかなか骨が折れるクエストね!」

「行ってきます! 【バンビステップ】!」

「【疾風迅雷】【加速】!」


 そして二人が、最速で駆け出したその瞬間。


「ここにありますっ!」

「メイさんっ!?」


 すでに持っていたまもりが醤油を手に取り出し、それに気づいたメイが急停止。

 その背中にツバメが追突。


「わあっ!」


 二人はそのまま、仲良くすっ転んだ。


「あの、これでいいですか?」

「やるものだねえ……まさかこんなに早く答えられてしまうとは」


 そう言って女性は、一冊の本を取り出し差し出した。

 受け取ったメイが渡すと、リザードはもらった本を読み始める。


「でも、こういうクエストはなかなかないし、結構楽しいわね」

「そ、そうですね」

「もう一問、受けてみてもいい?」


 起き上がったメイとツバメがうなずくと、レンは女性に問いかける。


「もっとクイズを解きたいんだけど、何かない?」

「もちろんだよ。それならこれでどうだい? これは答えだけでいいよ。持って帰ってくるのが難しいだろうからね」


 そう言って、新たな紙片を差し出した。


『ufhrnrwlf wv vgz zrgvnfszmzmr』


「ええっ!? なにこれ……?」


 一気に複雑になった問題に、いよいよ首を傾げるメイとまもり。

 どうやら今度は、なかなかの難問のようだ。

 これにはツバメも硬直する。しかし。


「……アトバシュ暗号でしょこれ」


 そんな中で、気づいたのはレンだった。


「あとばしゅ暗号?」

「旧約聖書で使われた暗号で、AをZに、BをYに、CをXに。XをC、BをYに、ZをAに、みたいな逆順で並べた文字に置き換えるのよ」

「変換すると、どのような文章になるのですか?」

「ええと……置き換えると『fusimidou de eta aitemuhanani』になるから、意訳すると『ヤマトの伏見堂の競争でもらった物は何?』ね。この問題は私たちの過去のクエストに基づいてるみたいだけど、まもりには難しくない?」

「レンちゃん……こんな難しい暗号を使えるなんて、やっぱり闇の――」

「違うの! これは中二の時に、日直の日誌にこの暗号を使って……ああっ! 頭がっ!」


 聖書に使われた暗号で日誌を書いてしまう自分に酔っていたこと、温かい目でそれを受け取った担任のことを思い出して、頭を抱えて座り込むレン。


「「分かりました」」


「まもりさんも、分かったのですか?」

「は、はひっ」

「では、お任せいたします」


 その時は一緒にいなかったまもりが、答えを分かると言った事実に驚き、解答を任せるツバメ。


「答えは――――『金いなり』です」


 まもりの答えは、見事に正解。

 過去に遡る問題でも、食べ物なら当てるまもりに、感嘆するツバメ。

 レンという尊い犠牲は生まれたが、二問目も解答自体は余裕なものとなったのだった。

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さすが使徒長! 自分のノートどころか日誌にまで書くなんて! 普通を超越した個性! そこにシビれる憧れるゥ! 「先生、可憐さんが書いた日誌なんですが…」 「……あぁ、アトバシュ暗号か。懐かしいなー」 …
リザードのステータスが、ジャングルを出てラフテリアに初めて着いたメイちゃん並みになっている恐怖。 そしてお手柄だけど、おいたわしやレン上w
>『25』『1』『13』『1』『 20』『15』で一区切り。『11』『21』『9』で一区切り。『5』『11』『9』『20』『1』『9』で全部 中段に3文字しかないので『KUROI』にはならないかと …
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