1258.連続防御です!
「君たちのおかげで、入会申し込みがいっぱいだよ!」
デモンストレーションクエストを終えると、クエスト主は嬉しそうに事務仕事を開始する。
「まだ修練場は空いてるから、自由に使ってくれていいぞ! 盾は色んな攻撃をたくさん防御するほどいい練習になるだろうな」
見事な盾の演武を終えたメイたちは、さっそく修練場へ。
するとリザードが、置かれていた盾を手に取った。
それと同時に、時間の表示が現れた。
「デモンストレーションで見せた装備品を使うことで、【技量】を上げるのね」
「『たくさん』と言っていましたし、やはり防御回数が多いほど経験値がもらえる形でしょうか」
「時間が『0』からじゃないってことは減っていく形。この時間内にどれだけ多く防御させられるかがカギになるわけね」
「体勢を崩させてしまうと、立て直す時間がロスになるわけですね」
「れ、練習が一度だけできるようですし、まずは一度やってみましょう」
さっそく、盾を持ったリザード。
メイのように「どうぞ!」と、大きな動きで構える。
「【連続魔法】【ファイアボルト】!」
さっそくレンは、放つ連続の魔法で一気に数を稼ぐ。
するとそこに駆けつけるのはメイ。
「【キャットパンチ】パンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチパンチッ!」
激しい連打も、火力は低めのためリザードも安定。
距離が離れる限界まで叩き込んだところで、ツバメに交代する。
「【八連剣舞】!」
ここで二刀流で放つ、速い斬撃が続く。
ここまでだけでも、すでに数十発の攻撃を防御したことになる。
そしてツバメの剣舞が終わればまた、レンが魔法の準備を終えている。
「【連続魔法】【フリーズボルト】!」
容赦のない連続攻撃は、火力が低い分とにかく速い。
リザートはただ盾を持って立っているだけで、怒涛の攻撃を受け止めている形になる。
「続きます【四連剣舞】!」
さらにツバメが連続で攻撃して距離を調整。
あとはメイが限界まで【キャットパンチ】を叩き込み、残り二秒まで来たところで。
「【フレアストライク】!」
最後に上級魔法を使用。
リザードは盾を上手に合わせ、三歩程下がったところで止まった。
「時間切れね」
制限時間表示が『0』になり、スキルなどの仕様が一時的に制限。
そのまま続けて、上昇する【技量】ステータスの数値が表示される。
「59……?」
それを見て、レンが首を傾げた。
「普通のクエストなら、十分高い数値だけど……」
そもそも一つのクエストでステータス値が二けたも上がること自体が、かなりめずらしい。
そう考えれば59という上昇も、群を抜いて高いことになる。
「手前のまもりの大成功から、メイの連打を含めての連続防御回数を考えると、物足りないのよね」
もちろん、割りに合わないクエストもたくさんある。
メイもよく分からないけど、リザードを抱えたまま「どういうことなんだろう……」みたいな顔をする。
「まあ、そういうものと考えて本番いってみる?」
「そうですね。火力が高くなれば体勢が崩れてしまって、そもそもの防御回数が減ってしまいそうです」
こうして同じ流れで本番を迎えようとしたその時、まもりがそっと手を上げた。
「あ、あの、色んな攻撃をたくさん防御っていうのは、拳打だけとか魔法だけみたいな形だと伸びないって感じではないでしょうか」
「なるほど……確かに数だけなら、攻撃速度重視の武道家コンビなんかが異常に有利になるものね」
盾を持ったリザードに、同一の速い攻撃をぶつけ続けるだけでは伸びない。
まもりの指摘は、そういうことのようだ。
「数値の上がり方も、攻撃の種類が変わる瞬間に伸びていたように見えました」
「そういうことなら、ぶっつけ本番になるけど違う組み合わせにしてみる? 連続回数は減ると思うけど」
「そうですね、賭けてみましょう」
「いいと思いますっ!」
「そ、そういうことでしたら、レンさんの魔法が間に入るような形がいいと思います……っ」
「そうね、それでいきましょう」
「りょうかいですっ!」」
うなずき合い、練習と違う流れでの連続攻撃を構想。
「がんばろうね」
メイが声をかけると、リザードもブンブンとうなずく。
そして、本番が始まった。
「【フリーズボルト】!」
始まりはレンの単発魔法から。
これを受け止めた瞬間、続いたのはメイ。
「【キャットパンチ】!」
「【電光石火】!」
それから一瞬遅れて、ツバメが短剣の斬り抜けを盾にぶつけていく。
「【フレアアロー】!」
続けてレンが放った炎の矢が炸裂し、狙い通りリザードが一歩下がった。
「【装備変更】【尾撃】!」
そこに飛び込んだメイが、尾で盾を叩いて角度を変える。
「【反転】【投擲】!」
すると即座にツバメが、【ブレード】を盾の角にぶつけて続いた。
「【低空高速飛行】! はあっ!」
ここで接近してきたレンが放つのは、【魔剣の御柄】による攻撃だ。
「【投石】!」
そしてメイが盾に石をぶつけてたところで、再びツバメが接近。
「【稲妻】!」
今度は刀による斬撃を、ぶつけて通り過ぎる。
「【解放】っ!」
そしてレンが【フレアストライク】をぶつけてつないだ。
「いい感じだねっ!」
「はい!」
三歩ほど下がりながらも、リザードが防御を成功させたところで――。
「「「…………」」」
『次は誰かが続くかな』で、突然攻撃が途切れる。
「「「っ!!」」」
三人が慌ててつなごうとして、やっぱり他の二人が動いたから止まろうとしたところで――。
「【ストライクシールド】!」
まもりのとっさの盾投擲が続いて、もう一回りの流れができた。
「助かったわ! 【ファイアボルト】!」
「まもりさん、お見事です! 【加速】!」
レンが炎弾をぶつけると、距離を詰めたツバメが放つのはトリッキーな一撃。
「【隠し腕】!」
「【装備変更】!」
ここでメイが【白鯨の弓】で、矢を放つ。
「まもり、もう一度お願い!」
「はひっ! 【ローリングシールド】!」
「ルーン発動!」
駆けつけたまもりが、【氷結のルーン】で氷の剣山のようになった盾をぶつけたところで、ひらめくメイ。
残り時間は二秒。
「【装備変更】!」
その手に取ったのは【ダイナボーン】
レンは意図に気づいて走り出す。
「それっ!」
メイはスキルを発動せず、『オブジェクト』扱いのダイナボーンでリザードの盾を打つ。
「はいっ、お疲れ様」
すると大きく弾かれたリザードを、先回りしたレンが受け止める。
「オマケです」
最後にツバメの投じた【風ブレイド】がぶつかり、付近を風が駆け抜けていった。
「ルーンの発生物をぶつけた後に、オブジェクト振り回しの防御。最後に風武器まで。これが良い結果につながるといいのですが」
リザードを転倒させない程度の攻撃で、とにかく攻撃のパターンを変えての連携。
いかに防御が得意なNPCでも、どこかで崩されるであろう攻勢に、生まれるやり切った感。
レンはリザードの肩に手を置いたまま、ステータス値の動きに集中する。
「さあ、どうでしょうか」
「数は減ったけど、『色々な防御』っていう意味なら、間違いなくパターンは多かったはずよ!」
祈るような気持ちの中、現れた【技量】のステータス向上は、なんと『103』
ここでも三ケタを達成した。
「やったー!」
「まもりさん、よく気づきましたね!」
「は、はひっ! 良かったです!」
リザードはまたも、大きくステータスが上昇。
レンも思わず、その背中を強く抱きしめた。
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