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1239.二つのフロート

「紅の翼は、魔物の一団に対して飛行艇全機をあげての総力戦を展開! ブライト上空は大火が上がっています!」


 慌ただしい、ウィンディア基地。

 聞こえてきたのは切羽詰まった様子の、クルーの声。


「戦況は?」


 レンの言葉に、クルーは首を振る。


「劣勢です。紅の翼のエースたちが善戦を見せるも、敵数の多さと度重なるレーザーに押されています」

「エアたちはどうなったの?」

「同様です。一時的に押し返しかけましたがそれも長くはもたず、ブライト王国に向けて押されている形です」


 いよいよ緊迫する、ウィンディア基地内。

 激しい戦いは、飛行艇団の劣勢にあるようだ。


「このままだと、ブライトを潰すくらいはするでしょうね」


 これまでのクエストの大掛かりさと容赦のなさを考えて、つぶやくレン。

 危機にある戦い。

 それにもかかわらず四人は、セフィロト丸の修理をこの場で待ち続けるという状況だ。


「修理、時間かかりますね。やはりあのレーザーは避けなくてはいけなかったのでしょうか」

「そうは思えないけどね。あの暴風を受けた後で、初見の横薙ぎレーザーを回避できるとは思えないわ……」

「は、はひっ! 私もそう思います!」

「ツバメちゃんで無理だったら、誰もできないよ」


 レーザーを受けなければ、早い段階から参戦できたのではないかと、ツバメが悩む。

 するとそんな空気を打ち破るように、メイたちのもとにイスカが駆けてきた。


「皆、セフィロト丸の準備が終わったよ!」

「待ってました!」


 メイが跳び上がって応える。

 するとイスカが、クルーたちに合図するかのように大きく手を上げた。

 同時に、すっかり暗くなっていた基地内にライトが輝き出す。

 そして改修を終えた、新たなセフィロト丸が照らし出された。


「「「「っ!?」」」」


 思わず、四人息を飲む。


「わあ! カッコいいーっ!!」

「すっかり元通り……いえ、フラップ等が増していますね」

「もしかして修理だけじゃなく、改良もしてる?」

「そーなの?」


 メイがたずねると、イスカが答える。


「あの巨竜と戦うなら、それだけの速度とパワーを持った機体が一機は必要だと思う。敵を翻弄し、高い火力で不利な戦況を穿つ。そんな新たな力が」

「それって、もしかして……」


 レンの視線に、イスカがうなずく。


「新たなセフィロト丸には、搭載させてもらったんだ――――新システム、ダブルフロートを」

「「ダブルフロート」」


 レンとツバメが、ノドを鳴らした。


「一つの機体に一つのフロート。その原則を破って一機に二つ積むことで、速度とパワーを向上させた新機体だよ」

「は、半壊の機体を改修して、パワーアップさせたんですか……」

「わあ! すごいね!」


 これには、まもりとメイも意気を上げる。


「そしてダブルフロートを扱うことは、エースと呼ばれるような飛び抜けたパイロットでなきゃ不可能なんだ。二つのフロートに振り回されるんじゃなく、増えたフロートを使いこなすだけの技量が必要になる」


 そう言い残して、歩き出すイスカ。


「頼むよ。ウィンディアが誇る最高のエースパイロット。またおばちゃんの店のスープが飲みたいんだ。私たちの故郷を、ブライトを救ってくれ!」

「おまかせください」


 四人は互いを見合って、うなずく。

 ここで見送りのイスカが、自らガイド用のランプを持って出航ルートへ駆け出す。

 メイたちはさっそく、改修を終えたセフィロト丸に乗り込み、ツバメが舵につく。

 そして舵の中心にある宝珠に触れると、魔力が流れ出した。

 イスカは、基地内全域への放送を使用。


「ダブルフロートシステム、正常稼働を確認。進路クリア! 外部空域異常なし!」


 基地内に響く、イスカの声。


「セフィロト丸・リヴァイブ――――発進どうぞ!」


 聞こえてきた声、振られるガイドランプを目に、動き出す二つのフロート。

 セフィロト丸が浮かび、基地内を風が駆け抜けていく。


「ウィンディア三号艇セフィロト丸・リヴァイブ。ツバメ――」

「メイ!」

「まもり」

「レン」

「「「「いきます!」」」」


 これまでの基地への出入りで、完全に距離感をつかんでいるツバメは、二つのフロートを一気に稼働。

 クルーたちが期待の視線で見送る中、滝から落ちる水しぶきを豪快に弾き飛ばし、暗くなり始めた空へ飛び出した。

 そしてそのまま加速を続け、驚異的な速度でブライト王国へと進行する。


「本当に速いですね。これまでとはレベルが違います」


 空は青と紫と。

 一番星が最も強く輝く空を、一直線に突き進む。


「見えたっ! あの光は、レーザーの前に灯るやつだよっ!」


 メイがブライト上空の戦闘を発見。

 すると敵の魔物たちがこちらに気づき、一斉に迎え撃ちに動く。

 しかし地上よりも方向転換や『動き出し』が遅くなる空では、攻撃に入った時にはすでに、セフィロト丸が通り過ぎた後。

 後を追おうにもすでに、取り返しのつかない距離が生まれている。


「な、なんだ、あの速度!?」

「魔物たちが追い付けない……!?」


 ツバメはそのまま炎弾などの攻撃もかわし、巨竜の前まで雷光のように接近。


「これは、あいさつ代わりよ!」


 搭載された魔力砲を、レンが発射する。

 巻き起こる盛大な爆発。

 今まさに強烈な輝きを灯していた巨竜の頭部に、魔力光弾を叩き込んだセフィロト丸は、そのまま後方へと抜けていく。


「そういうことですか。開戦から長らく待たされたのは、この改修機を使うため……!」


 ツバメは長らく待たされた意味を、ここで確信。


「見ろ、速度が大幅に上がってる!」

「それだけじゃない。魔力を乗せた砲台での攻撃も可能になってるのか!」

「止まったぞ! レーザー攻撃が!」


 度重なるレーザー攻撃によって、不利に傾きつつあった戦況。

 セフィロト丸・リヴァイブはそこに、いきなり風穴を開けてみせた。


「あの機体がいれば、流れが変わる!」

「攻勢に出ろ! あの機体と共に、戦況をひっくり返すんだ!」


 最強のエースの登場に、戦場が一瞬で沸き立った。

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おや、セフィロト丸で出撃ですか。 では大型船には別の用途が…? 輸送船? このままでも押し切れそうですが、月光砲の使い所が気になる…。やはりトドメが有力ですが、決死のレーザーと相殺するのもアツいか。 …
もしかしてフロート1つに飛行珠1つ使ってパワーアップしてる? まもりちゃん「こ、これゲン担ぎですっ!」  っコーヒーフロート  っコーラフロート  っソーダフロート  っメロンソーダ
ドジっ娘メイドと貴族令息の話改め、お屋敷の怪異(三話完結)を投稿しました、直接文を張るのも考えたけど、一応挿し絵ありなので、基本の流れは、オチが分からないと怖い話をベースにしてます。 リンクはこれね…
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