1237.機工都市の危機
「操縦が……難しいです!」
魔物の放ったレーザーのごとき一撃は、セフィロト丸を弾いていった。
凄まじい勢いで本体の一部を吹き飛ばし、フラップ等の破損によって運転が高難度化。
ツバメは速度を落とし、ゆっくりとウィンディアの基地に戻っていく。
特に付近への接触を避けるため、出入り口は慎重に。
「傘にしましょう」
一応まもりが、大きな盾を掲げてツバメの横へ。
傘代わりにして、滝の水流から身を守る。
こうしてツバメとまもりは、どうにかウィンディア基地への帰還に成功した。
そして二人が視線を滝の方に向けると、メイたちの乗った大型飛行艇が入ってきた。
「「「おおおおっ!?」」」」
その光景を見て、驚きの声を上げるウィンディアのクルーたち。
「本当に大型ですね」
「はひっ。相当な人数が乗れそうです」
大型飛行艇を入れるため、三機ほどの飛行艇が外へ出ていたが、それでもギリギリでの収納だ。
「ツバメちゃーん! まもりちゃーん! 助けに来てくれてありがとー!」
「メイさん!」
「助かったわ。まさか【斬鉄剣】で、あの魔物を斬るとは思わなかったわね」
「ぶ、無事に帰ってこられて良かったです!」
互いに飛行艇から飛び出した四人は、そのまま駆け寄り抱きしめ合う。
それからあらためて、メイたちの乗り出して来た大型飛行艇を眺める。
「飛行珠を持ち出すのに、飛行艇ごと動かしてきたのですね」
「メイが両手で抱えて来るくらいの大きさだったのよ。それに飛行艇自体は、まだ生きてたし」
「この飛行艇、操舵室が中にあって壁が透明になるんだよ!」
「なるほど、本体の中に艦橋がある形なのですね」
ツバメ、即座にその光景を理解する。
「これが……洞窟に眠っていた飛行艇か」
「すごい大きさだね。しかもなんだか、基本的な構造が違うような……」
そこにやって来たのは、エアとイスカの二人。
メイたちが持ち帰った大型飛行艇を見て、感嘆する。
「とにかく、見事な回収だった。この大型飛行艇で乗り出し、魔物の攻撃の中を持ち帰ったというのは大したものだ」
「まったくだね!」
イスカはうなずき、その視線をセフィロト丸に向ける。
「こっちはすぐに修理に入らないとだね」
「よろしくお願いいたします」
「四人は休んでて。ただ何があってもすぐ動けるように準備頼んだよ! 現状を見るに、エースパイロットが動けるかどうかは、今後を大きく左右しそうだからね」
「りょうかいですっ!」
スタッフを集めて、何やら話し出すイスカ。
どうやらもう、改修の流れを説明し始めているようだ。
エアの方はさっそく、大型飛行艇を見て回る。
改修が再び始まり、騒がしくなる基地内。
四人は空いているデスクに集まり、洞窟内で見たものや展開を共有。
それから全員で、今後に向けて道具やスキルなどの空戦使用アイデアなどを話し合う。
「これで何が来ても大丈夫ね」
こうして四人で息をついたところに、クルーが飲み物を持ってやって来た。
「待機は万全ですか?」
「はいっ!」
「それでは、こちらを飲んで英気を養ってください」
そう言って残していったのは、厚いグラスに入ったレモネード。
「へえ、自作のレモネードって感じでいいわね」
「おいしいーっ!」
「ロゴ入りのジョッキが、空賊の雰囲気を出していていいですね」
「これは場所を限定する飲食メニューですね! メモしておかなくては……っ!」
こうして四人、エース機体のチームとして待機を始める。
そしてひとしきりの休憩を、終えたところで――。
「例の巨竜が、空の魔物を引き連れて現れました!」
一人の哨戒クルーが、大慌てで駆け込んで来た。
「あの巨竜が、仲間を連れてきたというのか……!?」
即座にエアが、状況を確認。
「狙いはどこだ?」
「ゆっくりですが確かに、ブライト王国へ進んでいます」
「ブライトへ!?」
「ただしその軌道の先には、この基地もあります。正直どちらが狙いなのかは、現状では分かりかねるのですが……」
「だが仲間を連れた魔物がブライト王国を目指すとなれば、当然……」
「続報です! ブライト王国は接近する魔物に対し、紅の翼での応戦を決定! 少しずつですがブライトの前数百メートルの上空に、飛空艇を展開しつつあります」
「やはりそうなるか」
「ブライト国民の避難は済んでいないでしょう。また大型の魔物等が落ちれば城や工場地帯はもちろん、民家にも被害が及びます」
「そうなればブライト王国も、そこに住む人たちも、大きな被害を受ける可能性が高い」
「エア……」
イスカも心配そうな表情だ。
「もちろんこのままにはしておけない。飛行艇やフロートの件でぶつかってはいるが、俺たちもブライト出身だ。あの場所には仲間や親せきもいる。国が崩壊するようなことになれば……ここのクルーも、帰る場所をなくす者が多い」
沈痛な面持ちを見せた後、すぐに意識を切り替える。
「よし、一部クルーは先行してブライトの援護に向かえ! 紅の翼側に早い『援護』の意思を見せることを忘れるな!」
「「「はいっ!」」」
パイロットたちは即座に動き出し、巨竜との戦いに向けて飛行艇へを走り出す。
「俺もすぐに、ブライトに向かう!」
そしてエアも、パイロットたちに続く。
「わたしたちはどうするのーっ!?」
「ブライト王国を守るには、エースとなるパイロットの力が必要だ。セフィロト丸の改修が済み次第、援護を頼む!」
「分かったわ」
「……この戦いが終わったら、ブライトとは一度話し合いの場を設けよう。君たちがこれまで飛行艇を駆り、紅の翼との勝負を続けていくのを見て思った。我らは共にこの力を守っていくべきだと」
「急なフラグ台詞なんだけど……」
「不吉な言葉が出てきました」
「い、生きてください……っ!」
これには、思わず息を飲むレンたち。
「これよりウィンディアは、巨竜からブライト王国を守るために戦う! 各機は俺とブルーウィングに続け!」
「「「おうっ!」」」
激突直前の巨竜と紅の翼。
そこに駆けつけるウィンディア。
始まる激しい戦いを前に、メイたちはセフィロト丸の改修を待つこととなった。
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