1231.管制塔の中には
競争の気配がする、飛行珠の回収クエスト。
メイとレンは、量産型の魔力鎧を打倒に成功。
メイの『想定を崩す』攻略法で、一足飛びにここまで来た二人は、発着場のような広い空間にある建物に踏み込んでいく。
すると一階にはたくさんの本が置かれ、様々な設計図などがデスクに何枚も乗せられていた。
「ここは飛行艇の設計なんかをしていた場所かしら」
「設計事務所だったの?」
綺麗な直線を引くための道具などが並んだ光景を見ると、どうやらそんな感じだ。
「こう見ると少し、今の飛空艇とは違った趣ね」
「本当だねぇ」
設計図を見ると、船は反ったクジラの骨格のようにも見える。
そしてメイたちの飛行艇よりも、もっと大型だ。
「船の下層部、中央に描かれているのが飛行珠で間違いなさそうね」
目当ての飛行珠の位置を確認して、さらに二人は色付きの完成図を確認。
「おおーっ! カッコいいーっ!」
そこには、クジラの骨格の表面を得意の軽金属のようなもので覆った大型の船が描かれていた。
「これなら確かに、他の文明を上回る魔力技術を持っていたと言っても過言じゃないわ」
「レンちゃん、上も見てみようよ!」
メイの言うまま、二人は螺旋階段を上って二階へ。
「おおー……っ!」
そこはまた一階とは趣が違い、発着や待機をさせるためのものであろうホールを、一望できるガラス張り。
そしてそんな窓の前には、飛行艇らしきものの模型と、付近数か国までが描かれた地図が置かれている。
「ここで飛行艇の出発や待機を考えたり、指示していたのかしら」
「でもレンちゃん、こっちの地図は……」
メイの言葉に、デスク上の大きな地図を見る。
そこにあったのは、付近のマップではない。
刻まれたいくつもの数字は綺麗に並び、図は星座の位置を示すかのような形だ。
「なんだか、モナココの地下を思い出すわね」
「ここで何をしてたのかな……っ」
楽しいのだろうメイは、尻尾をフリフリしながら地図を見る。
「発着の計画を立ててたのはそうだと思うんだけど、色違いの駒二つは……【月光砲】の反射板かしら」
地図上には、飛行艇ではない台形の駒が二つ。
「とりあえず、この辺に何度も出てきてる文字。これは一応控えておきましょうか」
レンは古い文字の中から、複数回出てくるものをメモしておく。
その近くに並んだ文字も、一緒にメモすることで何か面白い情報でも出てくるかもしれない。
「何よりこの辺は、モナココとルアリアの関係で見た文字に雰囲気が似てるし」
そんなことを考えながら、一通りのメモを済ませる。
「それじゃあ行きましょうか。ここで見たものが後で効いてくることを願いつつ」
「りょうかいですっ!」
こうして二人は、管制室兼研究室のといった面持ちの建物を後にする。すると。
「「っ!」」
続く大きな道の先から聞こえた来た、爆発音。
「……プレイヤーの足音がしてる」
「やっぱり、競争になったわね」
得られた情報が、意味のあるものになりますようにと祈りながら、駆けるメイとレン。
現実の都市にある『大型展示場』のような空間に、道順などを示すためのガイドラインが光っているようなこの場所。
二つの『区画』は、厚い軽金属の壁で仕切られている。
二人は走って、隣の区画へ。
「わあーっ!」
「これは……すごい迫力ね」
思わず二人、広い空間の端に置かれた『船』に息を飲む。
そこには先ほどの設計図で見た、尾を跳ね上げたクジラのような飛行艇が残されていた。
異形の船は、濃い灰色の本体に、黒と黄色で飾られた各部のパーツ。
現実の豪華客船の横幅を大きくしたようなサイズ感は、見る者を圧倒する。
「あとはこの船から、飛行珠を持ち出せばクエストクリアなんだけど……」
レンがそう言ったその瞬間、ホールの壁が吹き飛んだ。
「そうはいかないみたいね」
そこにやってきたのは、艦隊戦でもぶつかったナギとディアナの二人。
「競争になってたのか……! こいつは面白くなってきたな!」
そう言ってナギは、くわえたスティック菓子をパキッと鳴らして笑う。
「今回は敗けねえぞ!」
そして十字の槍をこちらに向けて、威勢よく宣言した。
「まあこういう空間だとナギは【グレートジャンプ】が使えないから、手数が減りがちなんスけどね」
「言うなーっ! 言わなきゃバレねーだろ!」
「闇の使徒ちゃんは、間違いなく気づいてるっスよ。戦闘中に指摘されるよりはマシじゃね?」
「……とにかく、天井があるならあるなりの戦いがある!」
二人の視線も、もちろん大きな飛行艇に向いている。
やはり艦隊戦の後、飛行珠を地上ルートで回収に向かうというクエストは、紅の翼でも出ていたようだ。
「まあ、ここまで来たら敗けらんないっスよね」
そして二人は、自然と並んで構えを取る。
「メイ」
「レンちゃん!」
メイもレンと二人、武器を取り出し構える。
広い第二の発着場。
走り出す緊張感。
パーティの前衛であるメイとナギが、戦いの始まりを告げる一歩を踏み出した、その瞬間。
「「「「っ!?」」」」
ナギたちが壊して入り込んできた壁を、さらに破るような形で入って来たのは、大型の魔導鎧。
「見るからにボス級って感じだけど、これは三つ巴の状態を御して、飛行珠にたどり着けってことかしら?」
二つのプレイヤーパーティと、ボスの魔導鎧、そして静かに待つ飛行艇。
誰が飛行珠を持ち出すのか。
魔導鎧が魔力光を激しく噴き出し、戦いが始まった。
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