表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1223/1381

1023.空中戦

 黒竜ラグナリオンと、巨鳥ケツァールが宙を舞う。


「この時を待っていましたわ! メイさんと騎乗による対決!」


 メイの帝国での空中戦を千回見て、その五倍死んで練習した白夜。


「【紅蓮砲弾】!」


 さっそく火炎弾を三連発で放って、先手を打つ。

 これをケツァールと共に弧を描く飛行でかわしたメイに、白夜は一気に接近。


「【エアブースト】【エーテルジャベリン】!」


 すれ違い際に放つ、六本の光槍。


「【アクロバット】!」


 メイはこれを大きな前方回転跳びでかわして、再びケツァールの上に着地する。

 すると白夜はラグナリオンを、渦を描くような飛行で上昇させて、メイたちに狙いをつけた。


「【ツインストライク】!」


 一気に加速して坂を下るような角度の飛行で接近すると、白夜は跳躍。

 先行して黒竜が突撃してくる。


「はいっ! 【ラビットジャンプ】!」


 ここでメイも大きく前方へ跳躍。

 ケツァールと『分離』するように上下に分かれて、黒竜の突撃を回避する。


「ここですわ! 【ライトニングスラスト】!」


 再びその背中に着地した瞬間を狙って、放つ高速飛行突き。


「わっ!」


 その上手な一撃は、メイの肩を斬っていった。


「これで直撃が取れないとは……さすがですわね!」


 ラグナリオンに着地した白夜は、感嘆の息をつく。

 離れる両者。

 ケツァールには突撃と蹴りくらいしかできることがないため、基本的にはメイ自身が主な戦闘を行うことになる。

 また速度に差もないため、一方的に【紅蓮砲弾】を撃てば基本的に負けはない。


「もちろん、そんな興ざめなマネは致しませんけど! 【エアブースト】!」


 間髪開けずに、ケツァールのもとへ接近していく白夜。

 メイが与えたのは騎乗での戦いだけではなく、その大胆さ。

 この距離なら再び【ツインストライク】か【エーテルジャベリン】か。

 そう考えて身構えるメイ。


「【ツインストライク】【ライトニングスラスト】!」


 やはり高速飛行突き。

 メイは回避のために姿勢を整えるが――。


「ええええっ!?」


 なんと白夜はそのままケツァールに乗り込み、レイピアでの攻撃を放つ。

 慌てながらも、これをかわすメイ。


「ラグナリオン!」


 呼ばれた黒竜はそのまま頭で、ケツァールの側部に【頭突き】をかました。


「うわわわわっ!?」

「もう一度! 【ライトニングスラスト】!」


 メイの腕をかすめていくレイピア。

 白夜はそのまま落下し、ちょうど下に来ていたラグナリオンに着地した。


「あと少しというところでしたわね……!」


 息をつき、滞空。

 しかしこの時メイは、反撃の動きを開始していた。


「っ!?」


 影がかかり、白夜は慌てて上空を見上げる。

 そこには真上から、ほぼ直角に落下してくるケツァールとメイ。

 すでに、滞空状態からの回避は難しい距離だ。


「マズいですわね」


 そしてラグナリオンに攻撃が直撃すれば、そこで騎乗戦は敗北となる。


「【フルスイング】!」


「他に手はありませんわね!」


 これを白夜は、防御で対応。


「っ!」


 HPを5割持っていかれた上に大きく弾かれて、ラグナリオンから転落した。

 その事実に気づいた黒竜は、即座に速い縦の回転で主の白夜に向けて降下。

 高い動物値が功を奏して、見事に白夜を拾い上げる。


「さすがの一撃でしたわ……メイさんは……!?」


 白夜は急いで空中を見上げるが、ケツァールの背にメイはなし。


「メイさんは、一体どこに!?」


 あり得ない事態に、慌てて辺りを見回しすが、やはりいない。

 白夜が慌て出した、その瞬間。


「よいしょーっ!」

「なっ!?」


 なんとメイは落下する白夜を追いかけていたラグナリオンに、【ターザンロープ】を引っ掛けて随行。

 ここでまさかの『乗り込み返し』を成功させた。


「それっ! それっ!」


 メイは剣による攻撃を二発ほど繰り出し、白夜がこれを黒竜の頭部側に下がることで回避したところで、剣を掲げた。


「っ!?」


 ここで【ソードバッシュ】を繰り出せば、勝敗が確定。

 敵の従魔にロープを巻いて追ってくるという、奇想天外な行動が戦いを決着づける。


「【スピリット・イーグル】!」

「「ええっ!?」」


 ここでイチかバチかの攻撃を放ったのは、【ダイナブラスト】で吹き飛んだ後、運よく船尾に天日干しのような形で引っかかっていたディアナ。

 落下してきた鷲の霊はラグナリオンの背に直撃し、大きく体勢を崩したことで両者共に落下となった。


「ありがとうーっ!」


 しかしすぐさま飛んできたケツァールに受け止められて、メイは無事。


「どうせならもっと、華麗に落ちたかったですわね……」


 一方白夜は、頭を下にする形でクルクルと回りながら落ちていく。

 ラグナリオンは鷲霊の攻撃によって白夜を見失い、ここからのフォローは不可能だ。


「敗北決定を覆す可能性に賭けた援護をしてもらいましたが……ここまでのようですわね」


 白夜はそんなことを言いながら、パラシュートを使用。

 落下での敗北という形になった。


「白夜も相当うまいけど……メイの騎乗戦はもう、地上と同じような『当たり前』の感覚なのよね」


 そのため気負いが一切なく、敵の従魔にロープでぶら下がるみたいな常識外れも、余裕で敢行できる。

 戦いの結末を見届けたレンが、感嘆しながらつぶやく。

 そしてパラシュートでふわふわと降りていく白夜の姿がちょっと優雅で、笑ってしまうのだった。


「さあ、勝負を決めましょうか」

「メイさんっ!」

「お、おねがいしますっ!」

「りょうかいですっ!」


 どちらも飛行艇もそれなりに数を減らしたが、紅の翼はエースたちが戦えない状態。

 対してウィンディアに、ケツァールに騎乗中のメイが残っている時点で、勝負は決定的だ。


「いきますっ!」


 メイはすでに倒れている紅の翼の面々も見惚れる、華麗な飛行で旗艦に接近。

 放たれる無数の砲弾を当然のようにかわし、そのまま船の真正面に突撃するような形で【世界樹の剣】を振るう。


「必殺の……【ソードバッシュ】だああああああ――――っ!!」


 大空を駆け抜ける衝撃波と共に、メイは旗艦の後方へと斬り抜けていった。

 紅の翼の旗艦のゲージがなくなり、これで艦隊戦も勝負あり。


「やりました!」

「はひっ!」


 セフィロト丸で、笑い合うツバメとまもり。

 レンも杖を掲げて喜ぶ。


「……なんだ?」


 しかし紅の翼の旗艦は、ゲージを1ドットだけ残して落ちなかった。

 ナギが甲板で、不思議そうに首を傾げる。

 どうやらこの戦いは、どういう形で斃れても、死に戻り先が飛行艇になっているようだ。


「……ん?」


 そんな中で異変に気付いたのは、やはりメイだった。

 注目の的になっていたメイの怪訝な表情に、他のプレイヤーやNPCたちも合わせて視線をそろえる。


「お、おい、なんだあれっ!?」


 あがる声。

 空のかなたからやって来たのは巨大な有翼の魔物と、その脇を固めるワイバーンたち。

 灰色の岩盤を貼り付けて作った竜のような魔物は、緩やかで大きな羽ばたきと共に接近。

 艦隊戦の現場から、百メートルほどの距離のところまでやってきて滞空。


「嫌な気配がしますね」


 そんなツバメの言葉に応えるかのように、頭部の結晶に集結していく魔力。

 直後、放たれた魔力のレーザーが艦隊の合間を通り過ぎていった。


「「「おおおおおおおお――――っ!?」」」


 遅れてめちゃくちゃな暴風が吹き荒れ、艦隊は散り散りに。

 それを見て、もう興味はないとばかりに去っていく有翼の魔物。

 一方魔力砲の余波に弾かれた紅の翼の旗艦は、大きく回転。

 誰かがその甲板から転落し、敵陣から大きな悲鳴が上がった。

脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
クイズ行きますね。 Xさん、Yさん、Zさんの3人がいます。Xさんの血液型はA型、Yさんの血液型はAB型、Zさんの血液型はB型です。遺伝の法則によると、XさんとYさんからA型の子供が生まれる確率が50…
スピンオフ、五千回死んだ白夜ちゃん。 1話1回5分形式で、こなくそとへこたれない白夜ちゃんをこっそり応援する番組。 空中戦はまるでロマサガ3のグゥエイン共闘vsビューネイのよう。 ってパラシュート付…
最後のミリ残しは、この後の演出用か…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ