1215.目指せ第二の中継点
ナギたちの飛空艇を先頭に、真後ろにセフィロト丸。
遅れてジャルル、白夜、そして並ぶイスカと兵長。
そんな並びで、一つ目の中継点を駆け抜けた飛行艇レース。
「いい勝負ですね」
ツバメは舵を取りながら、現状を顧みる。
「ワクワクだよーっ!」
メイはプロペラの柱に飛びついて、状況を確認。
すると、前方から迫り来る黒い何かに気づいた。
「鳥の群れかな?」
メイの予想は正解。
カラスほどの大きさの鳥の群れが、一斉にこちらに向かって飛んでくる。
そしてそのまま先頭のナギたちに狙いをつけ、攻撃を開始。
「うおおっ!? なんだこいつら!?」
「ナギは動かないで! 【霊光砲】!」
魔物への対応は、ディアナが担当。
伸ばした手から放たれた霊力が爆発し、舵付近を飛び回っている『刃カラス』を吹き飛ばす。
すると一斉に『刃カラス』が、ディアナに狙いを変更。
同時に飛び掛かっていく。
「【霊障】!」
自分中心に衝撃を巻き起こすスキルで、さらに数を減らす。
生き残った個体も、くらうと何かしらの状態異常に罹患するスキルによって痙攣、または毒によってとどめを刺された。
そんな中、ディアナの死角にいた一匹の個体がナギを攻撃。
シンプルな突撃が、腹部にヒットする。
「うおおっ!?」
その勢いは思った以上で、ナギはその場に転倒。
口にしていたスティック菓子を噴き出すのと同時に、ペダルが足から離れ、飛行が慣性によるものになる。
それによって前に出たのは、メイたちのセフィロト丸。
そこにやってくるのは、刃カラスたちのボスとなる巨鳥だ。
「【フリーズストライク】!」
レンはすぐさま、氷砲弾で先制を仕掛ける。
『大刃カラス』が翼を広げて放つのは、【暴烈風】
「「「「っ!?」」」」
吹き荒れる風は氷砲弾を大きく反らし、甲板を駆け抜ける。
その凄まじい勢いにレンが跳ね転がり、そのまま甲板から放り出された。
「レンさんっ!」
「まもり!」
その手を捕まえたのはまもり。
体勢自体は安定していることを、うなずき一つで通達する。
「【バンビステップ】」
それを見たメイは、大刃カラスの打倒を優先。
連続で放たれる【烈風弾】を、かわしながら接近して跳躍。
「【ラビットジャンプ】! からの【フルスイング】だああああ――――っ!」
強烈な剣の叩きつけで、大刃カラスを一撃で粒子に変えた。
「ツバメちゃん! あっちをお願いしますっ!」
「はいっ! 【連続投擲】!」
ここで突如として飛んできた、大型の炎弾。
ツバメは【風ブレード】を使用して弾き飛ばした。
メイの早い気づきによる危機の回避に成功したが、ツバメが一時的に離れたことで速度が下がる。
「先行すれば、当然魔物に狙われる。とにかくトップを駆ければいいというわけではないのですね」
本来一番速いジャルルが中列にいるのは、これを見越してだったのだろう。
「ですが!」
しかし白夜は、ここでナギやメイたちに並んでいく。
どうやら賢く中列にいるよりも、レンたちとの勝負に参加したい欲が勝ってしまったようだ。
そしてそんな白夜の思いに、クエストが応える。
横から回り込むようにしてこちらに追従してきたのは、四枚羽のラージワイバーン。
先ほどの炎弾を放ったのは、この飛竜だ。
正面からではなく、横から寄せてくるような飛行で距離を詰めると、突撃を仕掛けにくる。
「ここだ」
ジャルルはここで、高速飛行を開始。
なんと船の側面を軽くラージワイバーンに擦るように飛ぶことで、体当たりを止めてみせた。
「手助けしながら先に行く。やりますわね!」
戦いを任せていく形だが、手助けはする。
そんな小賢しいやり方に、笑う白夜。
「貴方! 船はこのまま最高速で、ラージワイバーンの左後方に並ぶ形で直進してください!」
ここで飛行艇をラージワイバーンに寄せた白夜は、船員NPCに運転を任せて甲板を走り出す。
「【エンジェライズ】!」
小さな翼を生やし、大きなストライドで加速。
そのまま甲板から飛び出した。
「マジかよっ!!」
「うわ、ヤバッ!」
それを見て、思わずナギとディアナが声を上げた。
「【ライトニングスラスト】!」
放つのは、空中からでも使用可能な高速飛行突き。
一直線に飛んだ白夜のレイピアが、そのままラージワイバーンの左肩口に突き刺さった。
「【極光乱舞】!」
直後、爆破と共に舞う燐光。
この一撃にラージワイバーンは、大きく体勢を崩した。
「やるわね!」
「かっこいいー!」
爆発に任せて後方へ跳んだ白夜はなんと、近くにいたメイたちのセフィロト丸に着地。
「なかなかのものでしょう?」
「ふふっ。その決め顔がなければ、もっと良かったと思うけど」
四人に満面の決め顔とポーズを見せた白夜は「失礼いたしました」と言って走り出し、再び【エンジェライズ】で自らの飛行艇に帰還。
すぐさま運転を代わり、一気に前へ出る。
敵船に挨拶して帰って行くという破天荒な動きに、メイは拍手で盛り上がる。
「普段驚かされてばかりのメイさんに喜ばれるのは、ちょっと嬉しいものですわね」
笑う白夜の一撃で大きく失速したラージワイバーンは後、飛行艇の一団の遥か下方で体勢を立て直し再上昇。
メイたちの飛行艇の前で、反転してみせた。
「ブレスだよっ!」
しかしこの状況でも、メイはその意識をしっかり敵のモーションに向けている。
ラージワイバーンは、その口に煌々と輝く炎を溜めて滞空。
爆発的な火炎が、付近一帯に広がっていく。しかし。
「【シンバル】!」
メイが先行して危機を伝えていたため、問題はなし。
まもりが二枚の盾で起こした衝撃波が、炎を霧散させた。
「うおおっ!? さっすがだな!」
「白夜ちゃんも、メイちゃんたちも、本当にヤバいんスけど!」
白夜の空を空と思わない戦い方に、巨大な炎を吹き飛ばすまもり。
驚きに目を見開くナギたちだが、やっかいなワイバーンにはここで追撃を入れておきたい。
「【降雷】!」
ナギは任意の地点に雷を落とすスキルで、ラージワイバーンを狙い撃ち。
強烈な電撃で、再び大きく体勢を崩させた。
「【フリーズストライク】!」
もちろんこの隙を、レンは逃さない。
頭部に直撃した氷砲弾によって、ラージワイバーンはまたも墜落。
「「「「っ!?」」」」
しかし、ここで不運。
落下したラージワイバーンがセフィロト丸の舳先に当り、飛行軸が大きく下がった。
「わあっ!?」
それによってポーンと、飛行艇後方から前方に投げ出される四人。
「くすくす。思わぬ形になりましたわね」
シーソーみたいな反動で甲板に転がったメイたちに、思わず微笑む白夜。
これによって減速したセフィロト丸は、わずかに遅れる形に。
「あははははっ」
「全員で転がるとは思わなかったわね」
「お、驚きました……っ!」
予想外の形で転がって、笑う四人。
これで白夜とジャルルが、先頭を形成することになった。
さらに前方の戦いに絡まなかったイスカと兵長も、ほぼ真後ろまで詰めてきている。
「思ったよりいい勝負です……!」
「本当ね」
今度は、そのまま逃げ去っていくワイバーン。
いよいよ飛行艇レースは、混戦模様になってきた。
「二つ目の中継点、トップで通過ですわ!」
二つ目の中継点を、先頭で通り抜けたのは白夜。
そのままジャルル、ナギたちが続き、セフィロト丸は四番手で光の輪を抜けていく。
そしてレースはいよいよ、最後の中継点を目指して過熱していく。
ご感想いただきました! ありがとうございます!
返信はご感想欄にてっ!
お読みいただきありがとうございました!
少しでも「いいね」と思っていただけましたら。
【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!




