表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1205/1381

1205.ブルーウィング

 空賊ウィンディア初の飛行艇ブルーウィングは、軽快に空を飛ばす。


「気持ちいいーっ!」


 髪を揺らしていく風に、思わずメイが笑みをこぼす。

 ブライトからモナココの方へと進み、間の山脈をはるか下に臨む飛行は、何とも言えない楽しさだ。

 モナココの海には多くの船が並び、海面はキラキラと輝いている。

 美しい光景に、四人甲板の前部に並んで笑い合う。


「飛行艇、なかなかのもんでしょ?」


 得意げに言うのは、ハチマキ少女のイスカ。


「一度飛んだらもう、この感覚は忘れられないんだよなぁ」


 そう言って、余裕の笑みで飛行艇の縁に飛び乗って――。


「うあっ!」


 足を滑らせた。


「「「「っ!?」」」」


 まさかの事態に、口から心臓が飛び出そうになるメイたち。

 イスカはギリギリで縁をつかんでいて、足を引っかけて甲板へ戻る。そして。


「そそそそうは言ってもここは空だからな、あまり気を抜かないことが大事だぞ」


 冷や汗だくだくで言うイスカに、思わず苦笑い。すると。


「魔物発見!」


 クルーの一人が、空を指差し叫ぶ。

 するとこちらに向けて飛んでくる、黒いグリフォンの姿が見えた。


「行くぞ」

「はいよっ」


 ガンブレードを持ったクルーと、イスカがすぐさま対応。

 一直線に襲い掛かってきた黒いグリフォンに向けて、武骨な男がガンブレードを向ける。


「【ファイアシェル】!」


 放つ炎弾は炸裂し、炎のショットガンのようになってグリフォンに直撃。

 体勢を崩したグリフォンは、そのまま甲板の上に落下した。


「ここはあたしがっ!」


 飛び出したのはイスカ。


「【裂空斬り】!」


 取り出したやや小ぶりなガンブレードを振るって斬撃を飛ばし、そこからは魔法弾を連発。

 一気にグリフォンのHPを削っていく。


「レンちゃん!」


 いち早く気づいたのはメイ。

 本来ここで、時間差で来る二体目の黒グリフォンが手間になるのだが――。


「【誘導弾】【フレアストライク】!」


 飛行中に炎砲弾の炸裂を喰らった二体目は、体勢を大きく崩して落下。

 そのまま視界から消えていった。


「ギャオオオオオオ――――ッ!!」

「「っ!?」」


 瀕死で立ち上がった一体目が上げた咆哮に、硬直する空賊たち。

 それを見た革パイロット帽のエアが、状態を『滞空』にしたまま援護に駆けつける。


「【クイックジャンプ】【雷光斬り】!」


 手に取ったガンブレードに走らせた雷で、グリフォンを打倒。

 危機を乗り越えた、その直後。


「「「「っ!?」」」」


 飛行艇が何かの体当たりでも喰らったかのように、大きく揺れて傾いだ。

 見えたのは、風弾を吐き出した大型のワイバーン。


「頼む、誰か舵を切ってくれ!」


 大きく傾いた船では、落下しないようにするので精いっぱい。

 甲板を転がってきたエアが、縁につかまったまま叫ぶ。


「【浮遊】!」


 ここでレンはすぐに『足場の傾き』など関係ないスキルで、舵へ一直線。

 飛行艇の傾きを、修正する。


「あのワイバーンを、落とせばいいのね!」

「舵、変わりますっ!」


 うなずき合うレンとツバメ。

 ここで舵取りを、駆けつけたツバメに交代する。


「【誘導弾】【フレアストライク】!」


 すぐさま攻撃に入るレン。

 しかしこれを大型ワイバーンは、高速の回転飛行で回避する。

 そしてそのまま、飛行艇の前へ。


「この動き、ブレスだよ……っ!」


 大きな呼吸のモーションで、すぐに気づいたメイが上げる喚起の声。


「【シンバル】!」


 直後に噴き出した豪炎は、まもりが二枚の盾を叩き鳴らして起こした衝撃波が霧散させる。


「せーのっ!」


 それを見たメイは、即座に【王樹のブーメラン】を手に回転。


「それええええええ――――っ!!」


 投じた大きなブーメランは、消えていく炎を割って突き進み、そのままワイバーンを弾き飛ばした。

 大きく体勢を崩したこの隙を、レンは逃さない。


「新スキルの、これ以上ないお試しチャンスね! 【聖槍】!」


 伸ばした杖から放たれた、まばゆい光の槍。

 翼を広げた鳥のような形状の刃に、聖剣の柄を思わせる装丁のような見た目をした光槍は、とても美しい。

 まずは先端が深く突き刺さり、直後に光の爆発が巻き起こる。

 舞い散る光燐がどこか神々しさを感じさせる一撃に、ワイバーンはそのまま落下して消えていった。

 一方のメイは、しっかりとブーメランを回収。

 そのまま「やったー!」と、ブーメランを両手で抱きしめた。


「レンちゃん、カッコいい魔法だねっ!」

「二度の攻撃判定と高い火力を持っているのはいいけど、ちょっと演出がやりすぎじゃない?」

「いざという時のまもりさんは、やはり頼りになります」

「い、いえ、ツバメさがすぐに舵を取ってくれたので……っ!」


 四人はいつものように、ハイタッチ。

 実はワイバーンは船の体勢を直した後、ブレスを耐え切りさえすれば空賊との連携で追い返すことができるのだが、打倒までいくのはメイたちならではだろう。


「……なんという見事な戦闘、そして操船能力だ」


 モナココでもらった海用の船は、ちょくちょく全員が交代で運転していたこともあり、ツバメも見事な操舵を見せた。

 さらに空中での戦闘はこれまでの経験が活き、ダメージは『クルー』含めてなし。

 その完璧な戦闘を見たエアは少し考えて、深くうなずいた後、こちらに向き直った。


「実は我々ウィンディアでは、二号艇と三号艇の開発も同時に行っている」

「うぇっ!? それを教えるってことは、もしかして……っ!」


 イスカが、「ハッ」とした顔をする。


「ブライト王国の紅の翼は、今後も我らを狙ってくるだろう。そこで君たちに――――飛行艇の一機を任せたい」

「ええええええええ――っ!!」

「飛行艇を、駆れということですか……!」

「これは驚きの展開ね」

「は、はひっ」


 まさかの、パイロットとしての空賊への加入。

 しかも飛行艇の一機を「任せる」という思い切った待遇。

 それは今もブライトを始めとした星屑の各所が、飛行艇の話題で持ち切りの中で見つけた、まさかのクエストだ。


「どうだろう。頼まれてくれるか?」


 すでに、目を輝かせているメイ。

 三人がうなずけば、元気に返事をする。


「もちろんですっ! 何卒、よろしくお願いいたしますっ!」


 こうしてメイたちは、ブライト王国に対抗する空賊ウィンディアで、飛行艇を駆ることになった。

誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
【聖槍】のエフェクトが ???「神技ニーベルン・ヴァレスティ」 のイメージにしかならない
空飛ぶ海賊船とかあったらレンがものすごく喜びそう…。 ゴーカイジャーのゴーカイガレオンみたいに。
クイズの二問目のヒントは、ロウソクのシーソー 一問目のヒントは…何が同じなのか 
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ