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1184.帽子男の狙い

「さあ、今度は何かしら」


 ガーゴイルたちを片付けたメイたちは、地下通路を進む。

 洒落た模様の入ったタイルが並ぶ道を進むと、壁のような光が前方から迫り来る。

 その厚さは紙一枚分ほどだが、四人を『スキャン』すると――。

 突然、足元のタイルの隙間から赤い光がもれ出した。


「足元! 崩落の可能性が高いわ!」


 すぐさまメイは、まもりの手を引く。


「【バンビステップ】」

「【疾風迅雷】」

「【低空高速飛行】」


 ここで仮にレンの言葉が当たろうと当たるまいと、対応できる行動を取るのがメイたちのやり方。

 直後、始まる床の崩落。

 スタートの速さが、功を奏する。

 四人は崩れ落ちていくタイル床の波に対して、猶予を持って動き出すことができた。


「上から来ますっ!」


 それによって、天井部につけられた宝珠による足止めにも、落ち着いて対応することが可能だ。

 同時にいくつもの宝珠が、青く輝く。

 するとタイルの道に、突如として生み出される氷塊の壁。

 先行したのはメイ。


「【フルスイング】!」


 炎の魔法で対応したいが、爆発を伴えば足元の崩落を早める恐怖がある。

 また物理攻撃の場合は、単体向け攻撃スキルだと『回数』が求められる。

 そんなやっかいな壁は、メイの『振り払い』が一気に消し飛ばす。


「お見事です!」

「助かるわね!」


 こうして『落下』との勝負になる、疑似的な強制スクロールトラップを一つ潜り抜けた三人。

 すると今度は、それなりに横幅のある通路の左右のタイルから光の槍が突き立ち、道を狭めていく。

 狭くなってしまった道。

 その先に登場したのは、ミノタウロス型のゴーレムだ。


「武器はハルバード。狭めた道で攻撃をかわして反撃するのは難しい。そういう形ですね」


 左手に持った、金属製のバックラー。

 こちらが崩落に巻き込まれるよう、時間稼ぎをするために作られた敵で間違いない。


「あの盾、ミスリルなので魔法は減衰ですっ」


 まもりが盾の種類を見て、メイの背後から告げる。


「了解です。そういうことでしたら【加速】【リブースト】!」


 ツバメは一人、一気に超加速。

 そのままミノタウロスの攻撃範囲へ踏み込む。

 突き出されるハルバードは、豪快なエフェクトと共に。

 防御しても大きく弾かれるその攻撃は、完全に『空いた穴』に落とすためのもの。


「【スライディング】【反転】【紫電】」


 しかしツバメは、場の形状から攻撃は『突き』以外にないと予想。

 そのままミノタウロスの背後に回って、電撃で敵を硬直に追い込んだ。


「それっ!」

「はあっ!」


 そこに斬りかかったのはメイと、【魔力剣】を持ったレン。

 粒子になって消えるミノタウロスを置き去りに、二人は軽くハイタッチをかわして駆ける。

 すると、道の左右端に柱が並び出した。

 レンは、ゴール地点が近いことを示唆するものだと考え、そのまま道の中央を疾走する。しかし。


「あれは何だろう」


 メイの言葉に、レンも目を凝らす。

 すると道の先には、大型のガーゴイルが鎮座していた。

 襲い掛かってくるタイプではないようだが、その意図は何か。

 そんなレンの疑問は、ガーゴイルの口が開かれたことで明らかになる。


「そういうこと……っ!」


 口内に輝く、白色の輝き。

 直後、吐き出されたのは道を埋め尽くすほどの氷嵐。

 これを回避するための逃げ場が、左右の柱の陰だったんだと理解する。

 ここはおとなしく防御して、ダメージを受け入れるのが通常。

 ただし、氷嵐が噴き出す時間の長さは分からない。

 長ければそれだけHPを削られ、さらに崩落がドンドン近づいてくるという仕掛けなのだろう。


「こっ、ここは私が!」


 ここで声を上げたのはまもり。


「どうぞっ!」


 急いでメイの前に出て、盾を前面に向けて構える。


「【コンティニューガード】【天雲の盾】……【チャリオット】!」

「その手があったわね!」


 ここまでは格好いい感じで来た四人だが、ここではまもりを最前にして、『電車ごっこ』のように前の人の腰をつかんで駆ける。

 その光景が楽しくて、思わず笑みがこぼれるメイとツバメ。

 吹き荒れる氷嵐は予想以上に強く、そして時間も長かった。

 だが、止まらない。

 四人はそのまま烈風が止まるまで走り続け、氷嵐噴きガーゴイル像の横をあっさりと駆け抜けた。


「タイルの崩落も止まったわね」


 振り返ると、崩落はまだかなり後方。

 かなりの余裕を持ってのクリアとなった。

 見たところ、ここで『王家の関係者かどうか』のチェックはなさそうだ。

 四人は再び、舗装された地下通路を進む。


「み、道が大きくなってきました」


 楽しくなってしまった三人がまだ『電車ごっこ』状態のため、先頭のまもりがつぶやく。


「こういう時は――」

「敵が出てくる可能性があるかも?」

「そういうことね」


 メイもRPGが少し分かってきたらしく、うれしそうに尻尾をブンブンさせる。

 四人は注意しながら、ホール並みに広い岩の空間を進む。


「……足音」


 メイが耳をぴくぴくと動かす。

 さすがにホール中央まで進んでしまうと、隠れる場もない。

 するとホールの出口側から出て来たのは、四人のハンタープレイヤー。


「メ、メイちゃんだ……っ! 本当にこっちから来るのかよ!」


 予想では、ワインレッド帽に任された見回りクエストは本当にただの確認業務で、入り込んでいた魔物と戦うくらいだろうと思っていた四人。

 驚きながら、宝珠を掲げる。


「「「「っ!!」」」」


 それは見知らぬ宝珠。

 強く輝くと、岩が揺れ出し崩れ出す。

 すると四人組が来た道が埋まり、大型のゴーレムが二体、岩肌から生み出された。


「これで戦えってことか……!」

「この屈強さ、悪くないぞ! いける!」


 うなずき合い、覚悟を決める四人組。

 するとゴーレムの腹部に生まれた魔法陣に、魔力が集まっていく。

 そして魔法陣の輪の内側に一つ、火が灯った。

 枠で仕切られた陣に点いた炎は、どこか時計を思わせる。


「……あれって、制限時間じゃないか?」

「ていうかこの魔力の集まるエフェクト、『自爆岩』と同じなんだけど……」


 そう言って四人組は閉じられた道を見た後、互いを見合わせた。


「「「「俺たちごと!?」」」」


 見れば、出入り口は塞がれている。

 どうやらそれで、間違いなさそうだ。


「あの帽子野郎……そういうクエストだったのかよぉぉぉぉ!!」


 死ぬならもろ共のクエスト。

 四人組の怒りの声が、ホールに響き渡った。

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