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1177.鍵を求めて

「その町にいるのは、元海賊の仲間で鍵師なんだ。もともとは錬金術師で、どんな扉でも開く『鍵』を作る能力を持ってる」


 メイたちと分かれ、船で進むレンとまもり。

 整備士が、クエストの内容を説明する。


「なるほどね」

「そこに見えてる町にいるんだけど、その前に一つ必要なものがある。鍵のもとになる【可変銀】さ。これで作った鍵は一度だけ、錠前が求める形状を取るんだ」

「一回限りだけど、どんな扉でも開ける鍵になるってわけね」

「ど、どのように手に入れるのでしょうか……」


 さぞかし入手の難しい金属なのだろうと、まもりは息を飲む。しかし。


「そんなに難しくないよ。ただ放っておくと固まっちまうんだ。だからそこの町の特産になってる感じだな。そして今、売買はされてない」

「どういうこと?」

「往来の商人か誰かに譲ってもらうしかないってことだ」

「そういうこと……指名手配犯が、プレイヤーから売ってもらうってわけね」

「き、厳しいですね」


 クエストの方向性に気づき、息を飲む二人。

 ハンターに声をかける形になれば、捕まるか足元を見られることになるだろう。

 大事なのは【可変銀】を持ち、かつ自分たちが手配犯と知らないようなプレイヤーとなる。


「さあ、船がつくよ!」


 整備士は、町の裏手にそっと船を寄せて二人を下ろす。


「【可変銀】が手に入ったら、鍛冶師のところへ行くといい。バルディスの名前を出せばやってくれるはずだよ」


 そう言って整備士は、船の掃除を始めた。


「行きましょうか」

「は、はひっ」


 本来であれば、ある程度の緊張感を持ったクエストといった感じなのだろう。

 だが手配を受けたのがメイたちだったため、ハンターの数は圧倒的に増加。

 どこか可愛らしい丸い石畳が綺麗な港町が、痺れるレベルの緊張を与えてくる。


「っ!」


 まもりが慌てて顔を背けた。


「この辺は綺麗だよなぁ」

「本当だね」


 通り過ぎていく二人組は、別にこちらを狙っていない。

 それでも、視線を感じると思わずドキドキしてしまう。


「い、一体どなたに声をかければいいのでしょうか……っ」

「おそらく【可変銀】はこの町の特産で、色んなクエストの報酬なんでしょうね。でも持っている人を探して回れば、当然それだけ目立ってしまう」


 やはりこのクエスト、ドキドキさせるように作られている。

 直接聞いてみて、「持ってるよ」と返事。

 取り出したのが【捕縛の宝珠】のパターンを考えると、震える思いだ。

 二人は進み、そんなプレイヤー早々いないと分かっていながらも、【可変銀】を持ち歩いている者を探す。

 しかし、見つからない。


「そういうことなら、仕方ないわね」


 町を一通り見て歩いたところでレンは、一つ覚悟を決めた。


「話を聞くなら、一人でいる魔導士」


 なかなかの広さを誇る町。

 レンは目をつけた魔導士を追い、裏通りの方に進んで行くのを確認して後を追う。


「魔導士タイプなら、近接の高速移動攻撃を使われる可能性が低い」


 仮に使えても、魔導士が前衛レベルの使いこなしはしてこないはず。

 そしてレンにも近接攻撃の手段があるため、すぐに負けるということにはなりにくい。


「それに中距離戦で遅れを取る相手でも、まもりが入れば優位に立てるから」


 二対一なら、早々負けることはない。

 そう踏んでレンは、魔導士が付近のプレイヤーの視界から完全に離れたところで、一歩踏み出した。

 実は数的優位意外にもう一つ、その魔導士を狙った理由があった。

 レンは気合を入れて、「全力を尽くさないのはナシだから」と自分に何度も言い聞かせる。

 そして、魔導士の前へ。


「……少しいいかしら?」


 レンに声をかけられた魔導士は、全身黒づくめの少女。

 装備の一部に黒のレースを使い、黒バラをあしらった黒のヘアバンドを装着。

 さらに黒のストッキングという、完全装備だ。


「聞きたいことがあるのだけど」


 レンは中二病モードで、意味深な笑みを浮かべる。


「貴方、【可変銀】について何か知っているかしら? 知っているなら、少し聞かせて頂きたいのだけど」


 そこまで言って、不意に声量を絞る。


「これは闇の聖戦に関すること。知っている限りでいいわ。葬務機関に聞かれている恐れもある」


 雰囲気のある話し方に加えて、『闇の聖戦』『機関』という二つのワードで揺さぶる。

 すると黒づくめ少女は息を飲み、わずかな動揺を見せた目で口を開いた。


「あ、その、私は手に入った装備が雰囲気強めだったんですけど……闇の組織とかそういうのに詳しい感じじゃなくて……その、ごめんなさい」


 申し訳なさそうにする、黒づくめ少女。

 ハンターではなかったようだが、『装備が偶然そっちに寄っただけ』で、中二病でもないらしい。


「……まもり」

「はひっ」

「今すぐ私をランスで消し飛ばして。記憶ごと」

「レ、レンさん、落ち着いてくださいっ」


 恥ずかしさに顔を真っ赤にしたレン、HPではなく『本人の心』が大ダメージを受ける。


「あ、でも【可変銀】については私のパーティ仲間が持っていると思うので、何とかなると思いますよ」


 すると少女の言葉を聞いたまもりが、すぐさまフォローに入る。


「で、でもレンさんのおかげで、話がつきそうですよ!」

「お願い、今すぐに消し飛ばして……」


 しかし、どうやらレンの受けたダメージは深刻だったようだ。


「お願い! お願いだから早くっ! 私が羞恥で狂わないうちにィィィィ!」

「レンさーん! 落ち着いてくださーいっ!」

脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
ああ! レンちゃんの(心の)HPが!
おー、ゲームでよくある1回使うと消えるけどアイテム欄を1つずつで無駄に圧迫する鍵! 葬務機関…! 葬られるはレンちゃんの記憶!w これは運営の切り抜き確定だw
やっちまったー! 『同志』を狙ったのにまさかの不発! 「え…? あ、これが厨二病? うわぁ…」 という哀れみの目線が心を抉るww だがここに、ここにツバメが居てくれれば! 「大丈夫です、レンさん」と…
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