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1173.洞窟内の攻防

「メイちゃんだ! メイちゃんたちがいたぞーっ!」


 響き渡る声。

 メイたちは、続く狭い洞窟を駆けて行く。

 目の前に見えたのは三つのパーティの構成員たち十数名。


「【ファイアダーツ】!」

「【エーテルストライク】!」

「【サンダーアロー】!」


 狭い道では、けん制攻撃の回避も難しい。


「よっ、はっ、それっ!」


 しかしメイはこれを、避けながら進むという妙技を見せる。


「かわしながら接近してくるのか! それならっ! 【パラライズ・ブレイザー】!」

「「っ!!」」


 地面に対し、垂直に展開する小型の魔法陣。

 狭い空間で機関銃のように放たれるのは、『麻痺』効果付きの魔力弾。さらに。


「「「【罠の宝珠】!」」」


 足元に生まれる、いくつもの魔法陣。


「くらうと厳しくなりますね……!」


 その全てが、当たれば『隙を晒す』ことになる攻撃だ。

 道の狭さゆえに、戦闘能力の差が出づらくなるこの状況。

 明確に不利なメイとツバメに、ハンターたちは【捕縛の宝珠】を用意する。しかし。


「【壁走り】!」


 止まらずツバメは壁を走り、そのまま天井を駆けることでその全てをかわしていく。

 そのまま時計回りで走り抜け、ハンターたちの目前に到着。


「【紫電】!」

「しまっ……!!」


 狭い空間を駆ける電撃が、ハンターたちを硬直させた。さらに。


「【連続投擲】【跳弾投擲】!」


 洞窟の左右に壁にぶつける形で投じた四本の【炎ブレード】と【風ブレード】が炎を大きく起こし、後方にいたハンターたちの視界を塞ぐ。


「【火渡り】」

「っ!?」


 だが敵も侮れない。

 炎の中から飛び出してきたのは、最後方から駆けつけた武道家。


「【爆砲正拳突き】!」


 放たれた拳から巻き起こる衝撃波が風の障壁を生み出し、足を止められるツバメ。

 ここで武道家は【リジッドタッチ】での攻撃に変更。


「【拳速上昇】」


 速い打撃で、硬直を奪おうとしてくる。

 右拳を身体をひねってかわし、左拳を反対にひねることでかわす。

 そして踏み込みからのアッパーに、ツバメはバックステップで距離を取った。


「リーチは短いですが、さすがに拳打は速いですね……【投擲】!」

「っ!?」


 下がりながらの投擲は【雷ブレード】


「【心頭滅却】!」


 武道家はこれを、とっさに属性防御スキルで受ける。

 見事な対応で感電硬直を防いでみせた形だ。しかし。


「やああああ――っ!」

「ぐああっ!」


 魔法陣を走り幅跳びで越えて来たメイの、シンプルな飛び蹴りを喰らって大きく後退。


「くっ!」


 すぐさま目前に駆け込んで来たメイに対し、防御態勢に入る。


「【カンガルーキック】!」


 しかしメイは、これを崩して着地。


「【加速】【アサシンピアス】」


 続くツバメの一撃に倒れ込んだ。

 あっという間の攻防。

 ツバメの起こした炎が消えると、ハンターたちは構えた【捕縛の宝珠】を発動するが――。


「おねがいっ! いーちゃん!」

「「「うわああああああ――――っ!!」」」


 すでにメイの前で仁王立ちしていたいーちゃんが起こす暴風に、転倒。


「【バンビステップ】!」

「【加速】!」


 この隙に二人は疾走し、残ったハンターたちを置き去りにした。

 抜けた先は、またもホール。


「……こっちにいっぱい来てる」


 続く道からは、こちらに向けて駆けてくるハンターたちの足音。

 その数は、これまでよりさらに多い。


「ツバメちゃん、ちょっといいかな?」


 するとメイはちょっとイタズラな笑みで、そう言った。


「この辺だ! この辺からメイちゃん発見の声が上がったはずだ!」


 ホールにやって来たのは、二十人ほどのハンターたち。

 その先頭にいるのは、黒い毛のヤギを連れた従魔士だ。

 大きく禍々しい角を持つ黒ヤギは通称『バフォメット』と呼ばれ、その高い魔力が恐れられる従魔。

 使う多彩な魔法は味方にして頼もしく、敵にしてやっかいな存在だ。

 さらに集まったハンターたちは見るからに装備がよく、戦い慣れした雰囲気をしている。


「でも、面白いことになったな」

「ああ。ちょうど先日のボス戦のおかげで物理防御スキルも持ってるし、後衛組も高火力魔法を持ってる」

「なんだったら、崩落覚悟で全部を叩き込むのもありかもしれないね。運良く生き残れば、【捕縛の宝珠】で捕まえられる可能性がある」


 ハンターたちはうなずき合い、続く道の先にいるであろうメイたちが、いつ出てきてもいいように構えて進む。

 左右に高速移動スキルが使えるプレイヤーを置き、【リジッドタッチ】での攻撃も可能だ。

 心構えに隙はない。

 仮にメイたちが駆け込んできても、間違いなく対応できる。

 そして実際にそうなれば、宝珠等を使うことで奇跡を起こす可能性もあるだろう。ただし。


「よいしょっ」

「「「は……っ!?」」」


 それはメイたちが、正面から来た場合。

 ハンターたちの目前にいきなり落ちてきたのは、【肉球グローブ】でホールの天井にぶら下がっていたメイと、そのメイに抱き着いていたツバメ。

 まさかの『真上』からの登場に、ハンターたちは判断が遅れた。


「がおおおおおお――――っ!!」


【肉球グローブ】を付けたメイはうっかり、両手を招き猫のようにしたポーズで【雄叫び】を発動。


「「「ッ!!」」」


 システム、驚き、そして見た目の可愛さという三つの方向から、ハンターたちは硬直に追い込まれた。


「【加速】」


 この隙を突いてハンターたちの真ん中に飛び込んだのは、メイのポーズ付き【雄叫び】に、完全に目を奪われていたツバメ。


「【アクアエッジ】【瞬剣殺】!」

「「「うおおおおおお――――っ!!」」」


 ハンターたちをまとめて斬り飛ばし、転倒を奪い取る。


「まだだっ!」


 しかし駆け出したメイとツバメの前に、偶然二人の進行路の方に転がった剣士が立ち上がり、構える。

 ここで若干でも足止めができれば、戦況を立て直せる可能性もあり。


「【超強撃】だああああ――っ!!」


 それは剣スキルの中でも、とにかく全力で振り下ろして高い火力を生み出すという乱暴な攻撃。

 地面に叩きつければ大きく砂煙をあげ、足場を割るほどの威力を誇る。

 そしてそれはメイが避けていた、『高火力攻撃による崩落』を起こす可能性もある。

 もはやメイたちを捕らえられる可能性があるなら、『予想外の事態』からしかないという考えは良案。

 ベテラン冒険者らしい的確な判断だ。しかし。


「【裸足の女神】!」

「【加速】【リブースト】!」

「は、やっ……!?」


 派手な発動エフェクトを見たメイとツバメも、崩落の危機を予知。

 なんと振り上げた剣を下ろす前に、剣士ハンターの懐に飛び込んでいた。


「【スライディング】」


 ここでツバメは、先んじて場を譲る。

 するとメイは、耳と尻尾と【肉球グローブ】という野生装備で攻撃を開始する。


「【キャットパンチ】! パンチパンチパンチパンチパンチ! パンチパンチパンチパンチパンチ! からのーっ!」

「か、からの?」

「【尾撃】だーっ!」


 そのまま【肉球グローブ】による格闘系攻撃の威力上昇で、あっという間に敵HPを削り切った。


「か、可愛い上に、この威力……っ」


 尻尾に頬を叩かれて倒れる剣士の言葉に、深くうなずきながら駆けるツバメ。

 そのままメイと共にホールを抜け、別れ道を右へ左へ。

 進んだ先にあったのは行き止まりと、海中へと進む穴。


「メイちゃんたちはどこだ!?」

「ホールの先だ! 急げ!」


 聞こえてきた声にうなずき合い、そのまま海中に進むことを決定。


「【装備変更】っ!」


 ルルタンで使用した水着に着替えて、メイが穴に飛び込んだ。


「…………」


 ツバメも少し悩んでから、水着に装備を替えて後を追いかけるのだった。

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クイズはもう少し詳しい方が良いけど正解ですね。 模範解答と模範解法は 解説 =====出題者より===== A151 目を凝らしてよ~く読むと…この↑「凝」の字の中に、カタカナの「ヒント」が入っ…
肉球グローブでがおーーーーーー! 可愛い そしてキャットパンチからの尻尾攻撃! 喰らって幸せ 掲示板に自慢できるゾ
がぉぉー!(にゃおぉぉー!) 三重拘束は重篤なデバフ、しかしバフォメットがレンちゃんに見つからなくって良かったw しかし尾撃で倒された戦士は本望だろう。
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