1159.勝敗は
ブラックジャックは、これまで敗北なし。
見事な勝負を見せているが、三戦目にグラムが一人引き分けとなった。
三人での勝負では、一歩後退だ。
「ふざけるな! 星屑最強は誰かを、ここから教えてやる!」
一歩出遅れたことに、気合を入れるグラム。
「望むところだ!」
「望むところだーっ!」
アルトリッテとメイが応えて、勝負は四戦目へ。
ディーラーの開示手札は『5』と中途半端。
そんな中、メイの手元に来たのは『4』と『5』だ。
「ひっと!」
もう一枚要求して、カードを確認する。
来たのは『1』だっため、メイは少し考えてこれを『11』で計算。
「すたんど!」
合計『20』でまとめることにした。
「私はもここでスタンドだ!」
アルトリッテは手札二枚の時点で、勝負に出ることを決定。
「よこせ、ヒットだ」
グラムはもう一枚要求し、「よし」とつぶやいた。
「スタンドだ!」
こうして三人は勝負に出る。
ディーラーは自分の手札を確認し、合計三枚でスタンド。
全てのカードをオープンする。
手持ちの合計は『18』だ。
「やった!」
「あぶなかった。『19』でギリギリか」
「フン、差はつかないか。おいディーラー、すぐに次の勝負に入れ」
グラムは『21』で勝利。
全員が当然のように勝利し、メイたちは続けて五戦目に入る。
ディーラーの手札の片方は『10』
「どうしようかな……」
メイは悩む。
現状は『18』で、何とも言えない数値だ。
勝負する場合『1』『2』『3』以外ならバーストで敗北となる。
『18』という数値は勝利を狙うには心もとないが、バーストならはその場で敗戦だ。
メイは息をつき、スタンドを決意。しかし。
「……あれ?」
走り出す、不思議な感覚。
「なんか急に大丈夫な気がしてきた。ひっと!」
なんとなくという理由で、もう一枚要求した。
「これは、厳しい勝負だな」
アルトリッテは悩む。
実はこちらも、合計『18』という厳しい数字。
『4』以上の数値を引いたら即敗北だ。
「スタンド……だ!」
アルトリッテはここで、ディーラーのバーストもしくは引き分けを狙うことにした。
そしてグラム。
手札の合計は、なんとこちらも『18』
これも、分の悪い勝負になる。しかし。
「神槍のグラムに、受け身の敗北などありえない……っ! 必ず、メイを超えてみせる!」
グラムはメイの上に行くため、勝負に出た。
「よこせ! ヒットだ!」
もう一枚受け取って、始まる勝負。
ディーラーが手持ちのカードを見せる。
驚くべきことに、その合計はまたも『18』で、メイたちの初期値と同じだ。
「くっ!」
キープを選んだアルトリッテは、引き分け。
「ふざけるなー!」
グラムの三枚目は『6』で合計『24』となりバースト。そして。
「『3』だ! やったー!」
メイは合計『21』で奇跡の一人勝ち。
「なぜだなぜだなぜだー!」
地団太を踏んで悔しがるグラム。
「メイに勝とうと意識しすぎたな」
「うるさい!」
「ぬはははは! ギャンブルは感情に振り回されていたら勝てないぞ」
グラム、アルトリッテの言葉に分かりやすく頬をふくらませる。
「お前だって引き分けだろ!」
「だが、次でメイが負ければ逆転できるからな」
こうしてメイが五連勝。
アルトリッテが一分け、グラムが一敗一分けとなった。
そして、六戦目が始まる。
ディーラーは二枚の手札の内、強カードである『1』を開示。
「スタンドだ」
頬ふくらましたグラムは、二枚で早々で勝負手を完成。
「うーん……」
一方メイの手札は、『10』と『7』の二枚。
勝負するには厳しい手札だ。
だが追加して『5』以上が出てしまった時点で、敗北。
ディーラーはバーストしない限り必ず『17』以上にしてくるため、かなり厳しい数値と言える。
選らんのだのは、もう一枚要求。
「ひっ……」
メイは手を上げ、「ひっと」と言いかけたところでピタリと動きを停止。
「……んー、やっぱりこのままでいこうかなっ」
なんとなくという理由で、ヒットを取りやめた。
合計『17』というあまりに厳しい数値で、勝負に出る。
「ぬははははっ」
一方アルトリッテは、絵札2枚で『20』という良手が完成。
勝利を確信しながら、宣言する。
「よし! ここでヒットだ! ……あっ、違う! スタンドスタンド!」
アルトリッテ、うっかり『ヒット』と『スタンド』のコールを間違える。
慌てて訂正するが、すでに遅い。
無慈悲にも送られてきた一枚のカードは『10』
「合わせて『30』になってしまったではないか!」
圧倒的なバーストをぶちかますアルトリッテ。
「わっはっはっはっは!」
これにはグラムが、腹を抱えて笑う。
「いつものことだな、聖剣」
「いつもではない!」
グラムに言い返されて、拳をブンブン振りながら反論するアルトリッテ。
一方、初手が『1』で強カードを得ていたディーラー。
「ヒット」
三枚目のカードを取り、確認する。
「合計『23』ですか。バーストです」
なんと、ここでディーラーもバーストした。
「引き分けか!?」
「いいえ。ディーラーは手持ちの札を1枚見せるという不利を背負っていますので、バースト同士の場合ディーラーの勝ちとなります」
「ぬああああああーっ!」
「やったー!」
メイ、なんと『17』でも勝利をつかむ。
これには、メイの手札を見たグラムとアルトリッテが驚愕する。
「『17』で勝っただと!?」
「おお、見事だ……」
こうして六戦目が終わり、全員がディーラーを上回るという見事な勝負を見せた。
三人の勝敗は、メイが六戦全勝。
アルトリッテが四勝一敗一分け。
グラムも四勝一敗一分けとなった。
差は二勝。
これで、ブラックジャック対決は一段落だ。
「メイが勝つのも、いつも通りだな」
「えへへ」
「「これが……野生の力か」」
「違います!」
「だが最後の2ゲームは、『野生の勘』レベルの引きだったではないか」
なんとなくでもう1枚要求して勝ち、なんとなくの『17』勝負で勝利。
グラムとアルトリッテにはもう、『野生の勘』が働いたようにしか見えない。
「そっ、それは頭をクールにしてくれる、コーヒーの効果ですっ」
ほらほらと、ほとんど減ってないコーヒーを持ち上げて見せる。
それでなくても、匂いや雰囲気で夕食を当てる特殊能力を得てしまった疑惑があるメイ。
そのうえ『野生の勘』まで身についたら、いよいよ『理想のメイさん』からは大きく後退だ。
メイは、しっかりと否定する。
「そのコーヒーも、自分で豆を育てて摘んできたんだろ?」
「違いますーっ!」
「ぬはははははっ!」
グラムの言葉に、笑うアルトリッテ。
「フン、まあいい。今回の勝利は譲ってやる」
アルトリッテから思わぬ大きな笑いを取れたことで、グラムも留飲を下げたようだ。
少し得意げに、そう言った。
「だがいい勝負だったな。さすがメイだ!」
「えへへへへ、ありがとうございますっ!」
勝負を終えて、イスに座ったまま語り合う三人。
「なんか、最強前衛の三人楽しそうだな」
「うーん、かわいい」
そして通りがかりのカジノプレイヤーたちが、そんなメイたちを見て思わず目を奪われたのだった。
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