1152.いざ、タヌキレストランへ!
「間違いなくメイね」
「メイさんですね」
別れたポイントが、待ち合わせ場所。
鳳の一角で待っていたレンとツバメは、こちらに向かってやってくる大きな卵を見て笑う。
「あの大きさだし、落としたら割れる感じのクエストだったんじゃないかしら」
「メイさんたちにお願いして、正解でしたね」
「お、お待たせしましたっ」
レンたちに気づいたまもりが、小走りでやってくる。
するとメイも、卵を抱え上げたまま走り出した。
「卵、手に入ったよー!」
「こっちも鉱石の入手に成功したわ」
「それにしても、大きな卵ですね」
ツバメは見上げるほどの卵に、感嘆する。
「メ、メイさんでなければ、持ってくるのも大変でした」
「多分だけど、山の下か途中に荷車とかがあったんじゃない?」
「「ええっ!?」」
メイとまもり、声を合わせて驚く。
もちろん、山の下層に台車を貸してくれるNPCは存在する。
「まあ抱えて運んでもいいみたいだし、とにかく戻りましょうか」
こうして四人は、タヌキレストランのあるトリアスへの道を戻る。
「……メイちゃんが、卵を抱えてるぞ」
すると大きな卵を持ったメイに、付近のプレイヤーが気づいた。
「さすがメイちゃん。卵はあの大きさのをペロリって感じか」
「このスケール感のある狩り。やっぱ野生児はこうでなくちゃ!」
「わあー! 違います! 荷車を借りるのを忘れちゃっただけで、これはクエストなんですっ! 卵はタヌキさんたちが必要としてるんですっ!」
「メイちゃんは、クエストを動物から受けるのか……さすがだ」
「ええっ!? それはええと……で、でもオシャレなタヌキさんたちなんです! 野生のではなくて、都会タヌキみたいな!」
言い訳が、追い付かなくなるメイ。
皆の注目を集めながら、ポータルへと向かう。
レンとツバメは、そんなメイの姿に笑うのだった。
◆
メイが大きな卵を抱えていたため、多くのプレイヤーたちを引き連れての帰還になった。
トリアスの街では、そんなちょっとした集まりを見つけて、さらに観客が集まって来る。
「こんなところにクエストが……?」
「ていうか、クマが立ってる?」
メイたちがタヌキレストランに向かうと、その前にクマの鍛冶屋がやってきた。
厚い帆布の前掛けが、なかなか決まっている。
「どうやら【クロニウム鉱石】を手に入れたみたいだな」
「よろしくね」
レンが渡すと、クマの鍛冶屋は「まかせとけ」と言って、工房へ帰っていく。
「皆さんこっちです!」
そしてタヌキたちは、店の前にレンガで作ったかまどを準備していた。
そこにはすでに、薪も用意されている。
「かわいいーっ」
「何あれー! すごーい!」
コロコロと可愛いタヌキのシェフと一緒のメイたちという姿に、観客が一瞬で心をつかまれる。
特に女性プレイヤーたちは、目がない状態だ。
「これはまさしく【金鶏の卵】! 見事手に入れることに成功したのですね!」
興味深そうに、卵を見上げるタヌキたち。
すると小竜が、もはや虎の敷物のようになった魔狼フレキを引きずってきた。
「あははははっ、何よこれ!」
くたくたのペラペラになったフレキに、思わず笑ってしまうレン。
ツバメは手を持ち上げたり下ろしたりするが、完全にされるがままだ。
「オムレツを食べるという誓いのもと、それ以外は口にせず、空腹と戦っていたのですね……!」
「その覚悟、分かります」と、まもりは大きくうなずく。
タヌキたちは、道具の用意を開始する。
四匹がかりで抱えて持ってきたのは、大きなボウル。
二匹でタンカを運ぶようにして持ってきたのは、泡立て器だ。
今回は様々な料理器具が、大きいのが特徴だろう。
「なんだ、あれ」
その様子を見て、首を傾げるプレイヤーたち。
このサイズの調理道具を見るのは、現実と星屑を合わせても初めてだろう。
するとそこに、クマの鍛冶屋が駆け込んできた。
「できたぞ!」
その肩に担がれたのは、これまた大きなフライパン。
それは両手で持っても、扱いきれないほどの大きさだ。
「なあ、あれってもしかして……」
高さ2メートル半にもなる大きな卵に、直径2メートルを超えるほどの大型フライパン。
そして、全てが大きな調理器具。
「これ、料理クエストなのか!?」
「多分そうだろうけど、こんな規模のものみたことないぞ!」
面白くなりそうな気配に、盛り上がり始める観客たち。
「メイちゃーん! 何を作るんですかーっ?」
タヌキたちが、レンガで作ったかまどに火をくべだす。
すると『タヌキレストランとメイ』という組み合わせに、はしゃいでいた少女プレイヤーが問いかけた。
「大きなオムレツを作りますっ!」
「「「おおおおおおおおおお――――っ!!」」」
そして皆が期待した通りの答えに、大きな歓声が上がる。
「料理クエストって、こんな形式もあるか!」
「各所で最近盛り上がってきてるけど、巨大オムレツなんて初めて聞いたぞ!」
「こんな大きな卵を使うなんて、楽しみーっ!」
メイはクマの鍛冶屋から受け取った大型フライパンを、高く掲げる。
「それではオムレツ調理クエスト、始めますっ!」
絵本のような料理クエストは、星屑初の試み。
メイの宣言に、全ての観客たちが目を輝かせた。
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