1151.帰り道が本命です!
【クロニウム鉱石】を手に入れ、帰路を進むレンとツバメ。
「「っ!!」」
ヒビ割れていた壁が落ち始め、最初に来た道が塞がれてしまった。
「帰り道は、やっぱりそう簡単にいきそうにないわね!」
「はいっ!」
始まった崩落に、道を変更。
二人は昇りのルートを選んで、走り出す。
するとすぐさま、アンデッド炭鉱夫たちが立ちふさがってきた。
「【連続魔法】【フリーズボルト】!」
「【電光石火】!」
打倒までする必要はない。
敵を適当に片付けながら、坂道を駆け上がる。
「「っ!」」
大きな揺れと共に、追ってくる崩落。
岩が落ちる形ではなく、道が塞がれる形式は『飲まれたら即死』で間違いない。
「思ったより崩れが早い。後衛の足だと難しい速度だけど……」
二人は上り坂を駆け上がる。
すぐ後ろまで迫っている崩落。
するとたどり着いた先には、どこまでも続く暗い道と、一台のトロッコ。
「そういうことですか!」
「いいわね! やってやりましょう!」
完全なる窮地だが、思わず笑い合う。
映画のような展開に、ワクワクしてしまう。
二人はトロッコに飛び乗るとうなずき合い、ブレーキを外した。
すると加速が始まり、迫る崩落の速度といい勝負になる。
「この魔法珠燈が流れていく感じ、たまらないわね!」
「はいっ!」
あっという間に時速数十キロに達したトロッコは、ジェットコースターを思わせる勢いで疾走。
実はここから、選択の間違い一つで死に戻ってしまう厳しいクエストが始まる。
目前に迫るのは、突き出した岩。
「「っ!!」」
二人は慌ててトロッコ内にしゃがみ込んで、これを回避。
安堵の息をつくが――。
「待って! あれはトロッコごと弾かれるでしょ!」
次に迫り来る岩は、明らかにトロッコ自体が引っかかる大きさだ。
「レンさん、岩にヒビが入っています!」
「そういうこと! 【連続魔法】【ファイアボルト】!」
「【連続投擲】!」
レンはすぐさま炎の魔法を解禁して、岩に打ち込む。
ツバメも【風ブレード】による属性効果で、火力を援護。
すると目前の大岩が砕け散り、トロッコはそのまま駆け抜ける。
二人はハイタッチした後、思わず目を輝かせた。
やはりこの展開……楽しい。
「待ってください! 今度は敵がいます! しかも、かなりの数です!」
トロッコを狙うのは岩だけではない。
狭い道から少し開けた大きな坑道に入ると、そこに出て来たのは多くのアンデッド鉱夫たち。
レンは杖を構えるが――。
「でも、この数をまとめて倒すのはさすがに難しくない……?」
下手に大きな魔法を使って、余波でトロッコが脱線するようなことになったら終わりだ。
「どうしますか」
「……突っ切りましょう!」
何とレンは、魔法攻撃ではなく加速しまくっているトロッコで『はねる』事を選択。
そのまま一気に、立ちふさがる炭鉱夫たちのもとへ。
「勝負!」
そして接敵。
轟音を上げて駆けるトロッコは、レンの狙い通りアンデッド鉱夫たちを容赦なく跳ね飛ばす。
「あははははっ、これ楽しいわね!」
「はいっ!」
弾け飛んでいく鉱夫たちの豪快さに、思わず笑みがこぼれる。
実はレンの予想通り、ここで大技を使うと崩落や脱線の可能性があった。
選んだ選択は、最高のものだ。
「……それで最後は、大物が来るんでしょう!」
「待っていました! 【連続投擲】!」
最後に立ち塞がったアンデッド鉱夫(大)は、ピッケルの投擲モーションに移行。
それに気づいたツバメが、先んじて【雷ブレード】で動きを強制停止させた。
「【連続魔法】【フリーズボルト】!」
すぐさまレンが魔法を叩き込み、硬直が解けたアンデッド鉱夫(大)が、再びピッケルの振り払いに移行したところで――。
「【フリーズストライク】!」
氷砲弾で、HPゲージを削り切った。
倒れて消えていくアンデッド鉱夫に、二人は片手でハイタッチ。
トロッコは再び速度を上げ、見通しの良い直進路に入る。
「これは、どっち……?」
見えたのは、切り替えポイント。
レバーを使って、左右のどちらに進むのかを決める形の要だ。
「待ってください! 看板があります!」
ここで採掘員が言っていた、「看板は見た方がいい」という言葉を思い出したツバメ。
看板の左矢印の文字は消えていたが、右矢印に書かれていた『順路』という言葉を指さした。
「こっち!」
それを見たレンは、飛び出している切り替えポイントを杖で叩いて変更。
右のルートへ進むことを選んだ。
「すごい……!」
大きなカーブを描いて走っていくトロッコはなんと、溶岩池のフチを駆けて行く。
見れば一本の線路が、溶岩の手前へとつながっていた。
「左のままだったら、あのまま突っ込んで終わりだったわね」
容赦のない、一撃死ポイント。
高速のトロッコでそのまま溶岩にダイブするという最悪の展開を、二人は見事に乗り越えた。
「「っ!?」」
しかし崩落は、一気にその威力と速度を上昇。
再び狭い通路を走り出したトロッコを飲み込もうと、凄まじい勢いで迫ってくる。
「追いつかれそう……もしかして、最初のトロッコにあった『乗り方』って、この時のため……!?」
「そういうことですか!」
あくまで若干だが、座って風の抵抗をなくし、カーブの方向に身体を倒すことで、わずかに速くなる感覚がある。
「右っ!」
「左っ!」
「また右っ!」
まるでボブスレーのような感覚で、身体を左右に倒して必死の進行。
「ジャンプ!」
「「……ジャンプ?」」
自分で言って、首を傾げるレン。
途切れたレールから、途切れたレールへ。
飛び出すトロッコに合わせて、二人も一緒にジャンプ。
「見えました! 光です」
すると進路の先に見えた、陽光の輝き。
後は一直線。
だが崩落はついに、トロッコの中に砂粒が届かせるほどになった。
「お願い! 間に合って!」
「間に合ってくださいっ!」
レンとツバメは、トロッコの外が見えなくなるまで頭を下げて祈る。
すると、次の瞬間。
「「っ!?」」
そのまま二人は、線路の行き止まりから鉱山の外へと飛び出した。
宙を舞ったトロッコは、そのまま落下して崩壊。
レンとツバメは放り出され、地面をゴロゴロ転がる。
「「…………」」
そして二人、互いを見つめ合う。
どうやらこれで、無事に鉱山を抜け出すことに成功したようだ。
「あはははは! 予想以上に面白かったわね!」
「はい! こんなスリルなかなか味わえませんっ!」
見上げてみれば、飛び出してきた穴から勢いよく噴き出す砂煙。
脅威の死に戻りトロッコクエスト。
どうにか帰還に成功した二人は抱き合い、楽しそうに笑い合うのだった。
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