1142.解散後に街角で
「よくぞ帰って来た」
サグワを送り届け、その足でエディンベアに戻って来た、闇を継ぐ者の六人。
バーの地下に作られた秘密基地で、マネージャーの男に迎えられた。
「どうやら無事に、ガントレットの持ち主を発見したようだな。まさかそこから大きな闇に踏み込むことになろうとは思わなかったが、アバドンを打倒したその能力はやはり本物だった」
男は報告書らしきものを見ながら、大きくうなずいた。
「まるで我々の動向を追って、報告していた者がいたかのようだな」
「それはそれで、ちょっとワクワクしちゃうねェ」
「ジェノヴァにある組織からも、御礼の手紙が来ている。敵は町どころか国を破壊してしまうほどの巨悪だったとな」
「最後は『強すぎる』我らを片付けて終わりか?」
そんなスキアの冗談に、笑うマネージャー。
「フフフ。これだけの戦果をあげるような者たちなら、組織に残ってもらうのが一番だ。だが欠員も戻ってくるようだからな。君たちにはまた、恐るべき悪が発見された時に力を借りるとしよう」
そう言って一つの区切りをつけるかのように、大きく息をつく。
「思わぬ闇を暴く形になったが、さすがの戦いぶりだった。闇を継ぐ者はこの時を以て――――解散とする」
こうして、闇を継ぐ者はチームとしての役目を追えた。
いつもの装備に戻した六人はマネージャーに見送られ、昼間のエディンベアの町並みを望む屋根へと上がる。
「んっふふ。楽しかったねェ、まさかあの闇を超えし者と、一緒に戦うことになるなんてさァ」
「まったくだ。深淵に棲まう悪を狩ることで、新たな闇の力を得る。これがこの世界を震撼させる者たちの生き方か」
様々な戦い方をメイたちから吸収した二人は、楽しそうに笑う。
「世話になったな」
「楽しかったよォ」
そう言って、歩き出すスキアとクルデリス。
「今度は、闇のどうこうが関係ない時にお願いしたいわね」
「また一緒に戦えるとうれしいです」
「そ、その時はよろしくお願いしますっ」
「闇を継ぐ者の再結成、今から楽しみにしてるね!」
「あれだけの闇を見て、なおも戦いを求めるか……おもしろい」
「ククククッ、やっぱりワイルドは最高だねェ」
二人は、メイたちとすれ違うように進む。
そして軽く笑みを浮かべると、わずかに手を上げた。
「さらばだ。また会おう」
「まったねェ」
そして最初の名乗りの時のように、屋根から落下。
「「――――サンキュー」」
振り返ると、そこにはもうスキアたちの姿はなかった。
「最後まで、世界観を出してくるわねぇ」
「もっと闇を継ぐ者やりたいかったなぁ」
「メイは一日も早く忘れて! こういうことから始まることだってあるんだから!」
時計塔を望む、エディンベアの街並み。
一つの冒険を終えたメイたちは、いつもの港町ラフテリアに戻ることにしたのだった。
◆
四人はポータルを目指して、エディンベアの街並みを進む。
「ああっ!」
そんな中、目を輝かせたのはまもり。
「あれはフィッシュアンドチップス! これは少し面白い形ですね!」
さっそく駆け出して、新たな食べ物のレポートを開始。
「面白い? この町のモデルを考えると普通のような気がするけど」
「タルタルソースは本来オーストラリアのお店などで使われるものなんだそうです! ここで出しているということは、食べやすさを優先したということなのではないでしょうか!」
「よく、細かな違いに気づきましたね」
「ちょっと食べてみようよ!」
メイがそう言うと、まもりはうれしそうに店に向かい、テイクアウトしてきた。
そのまま四人並んで、店前のテーブルを使ってフィッシュアンドチップスを楽しむ。
「タルタル、おいしいですね」
「はひっ!」
古い街並みの中、席についた四人はさっそく今回の冒険を振り返る。
「まあでも今回は、世界観強かったわねぇ」
「ロールプレイ感があって、とても楽しかったです」
「まさかクエストで組織の一員として動くことになるとは、思わなかったわ」
「すっごく楽しかったよー! 闇を継ぐ者……またやりたいですっ!」
「しばらくはこういうクエスト見つけないでよ? 闇を継ぐ者が本当にあると思ってる人もいるだろうし、面倒なことになりそうだから」
「ツ、ツバメさんの名乗りが、最高に決まっていましたね」
「うんっ! ポーズ決めるのもまたやりたいよーっ!」
「あれもまた、広報誌辺りに載るんでしょうねぇ……」
メイたちはフィッシュアンドチップスを味わいながら、楽しかった今回の冒険を語る。
「闇を継ぐ者は、クエストだった……?」
つぶやいたのは、まさかのメイたちの登場に硬直していた樹氷の魔女。
一人紅茶を飲みながらぼんやりとしていたところに聞こえてきた事実に、思わず安堵する。
「ならば、闇を超える者の後継者探しという話も、噂に過ぎない……!」
拳を握り締めての歓喜。さらに。
「スキアさんたちは別行動時に、氷の魔法使いさんと戦ったようです」
「あの子も敵だったの? ……本当に今回の敵対ルートは、強敵ばかりね」
「っ!!」
「ス、スライムさんや氷の魔法使いさんは、見る度に強くなっています」
「氷の魔法、カッコいいよねぇ」
そんなレンたちの言葉に、一瞬で有頂天。
冒険話に盛り上がるメイたちの声に、興奮しながら耳を傾ける。
そして次こそはレンの前で活躍するのだと、目を輝かせるのだった。
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