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114.ヤマト天地争乱

「ありがとうございます! ありがとうございます……っ!」


 イベント開始まで数時間。

 商人プレイヤーは、ぺこぺこと頭を下げる。


「まさかメイさんに『地軍』の将を受けていただくことになるとは……」

「いえいえー」


 地軍プレイヤーには赤の腕章。

 その中でも将軍役は、赤と金の豪華なものを付けることになる。

 運営の発表にはさすがに驚いたものの、メイはもうイベントを楽しみだしていた。


「ここが地軍の城。その最上層になります」

「うわー! すごーい! 見て見てレンちゃん! ツバメちゃん!」


 ヤマトの右端。その最奥に作られた城。

 最上階からは、山に囲まれたヤマトの街が一望できる。

 ぴょんぴょん飛び跳ねながら、身を乗り出すメイ。


「陰陽師さんの神社、見えるかな……」

「ここからでは厳しいかと……」

「あった! あったよツバメちゃん! ああっ! 狐ちゃんの祠もあるよ!」

「さ、さすがの【遠視】スキルです……」


 すぐさま小さな神社を見つけてはしゃぐ姿に、驚くツバメ。

 メイの目にはしっかりと、小さな祠まで見えていた。


「ほらほら、あれがそうだよ!」

「あ、あの辺でしょうか……」


 ピッタリとくっついてくるメイに、ツバメは少し照れる。

 並んでヤマトの街を見下ろす二人は、早くも楽しそうだ。


「……確か、サービス開始から7年連続で負けてるんだったっけ」

「はい……」

「ずっと『地軍』だったのよね? 『天軍』に入ろうとは思わなかったの?」


 レンの問いに、商人プレイヤーは自嘲するように笑う。


「……悔しいじゃないですか、勝って当たり前って感じの人たちに寝返ってまでアイテムを手に入れるのは……」

「そうねぇ。分かる気がするわ」

「だから露店を出しながらずっと『地軍』メンバーを募集していたんです。相手は無類の最強パーティですが、今年こそはがんばりますよ!」


 こぶしを握って、気合を入れる商人プレイヤー。


「実は私たち、このイベントは初めてなんだけど……もう一度詳しく教えてもらえないかしら」

「はいっ。『ヤマト天地争乱』は参加プレイヤーを『天軍』『地軍』に分け、ヤマトにある二つのお城に将軍を置いたところから始まります。ヤマトの街全域を使って敵軍の将を狙い合い、先に打ち取った陣営の勝利となります」

「このお城は安全なの?」

「城内には罠や仕掛けもあるので、比較的安全です。ただし途中でミッションが出されて将軍は街へ出なければいけなくなります。そこは互いに狙いどころですね」

「やっぱり、天軍が有利なの?」

「……はい。今年は特に天軍の人数が多いです。年々その差は大きくなっていたのですが……地軍はかなりの劣勢ですね」


 商人プレイヤーは申し訳なさそうにする。

 実際、その差を知らずに地軍に入ったプレイヤーが翌年天軍にいるという事態は、もはや『あるある』になっている。


「グラムさんたちが天軍にいる以上、地軍につく理由がないんだと思います。何せ有名なトッププレイヤーの一団なので……そのせいか2年前くらいからは勝利を諦めてる感じになってしまって」

「……なるほどねぇ」


 その劣勢ぶりを聞き、レンは考える。


「それなら色々と準備しておきたいわね。まだイベントの開始までには少し時間があるし」

「レンちゃん、何か作戦があるの?」

「作戦ってわけじゃないけど、色々とできることはあるわ。いくら相手が多くても、私たちにはそれを減らす武器があるもの」

「さすがレンちゃんっ」

「一体、何をするつもりなのですか?」

「そうね、まずは金策よ」

「……金策?」

「ステータス上げの種と実を使って、今度はハウジング用の種をまとめ買いしておきましょう。数は多いほどいいわ」

「売買なら私に任せてください! 商人プレイヤーとしての意地を見せますよ!」

「お願いするわ。ハウジング用の種なら大抵のものはNPCから買える。そして、NPCの売るアイテムには【制限】がない……うまくいけば、面白いことになるわよ」


 そう言ってレンは、ツバメに視線を向ける。


「種が集まったら、ツバメにもお願いしたいことがあるの。何か所か動いて欲しいかも」

「分かりました」

「……ここに至るまでに金策が見つかってたのが、大きな意味を持って来るわ」


 レンは、こぼれてしまう笑みをこらえられないようだ。


「あ、ありがとうございます……前向きにイベントに参加してもらえるだけでもとても助かります!」


 苦汁をなめ続けてきた商人プレイヤーは、うれしそうに頭を下げる。


「商人さん。今回メイを誘ったのは、最大の功績になりそうよ」

「面白いことになりそう……っ」


 強気の笑みを見せるレンに、思わずメイもワクワクし始めてしまうのだった。

ご感想ありがとうございます!

主戦の活躍を続ける者と、支援的な戦いをする者で得られる経験値に差がある。

そして高レベルなほど、次のレベルへの必要経験値が多くなる。

その結果、似た上がり方をしているというイメージでございますっ。


お読みいただきありがとうございました!

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