表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1138/1378

1138.邪悪な聖母

 様々な物質を自在に変換して戦う、邪悪なマリア。

 地面を燃える液体に変えて起こした爆炎を、闇を継ぐ者たちは見事にやり過ごし反撃。

 敵のHPを、3割ほど減少させた。

 マリアが再び見上げるほどの大きさに戻ると、フードの下の白い仮面にヒビが入った。

 そして、両手を広げる。


「また地面が……動いてる」


 先ほどの液化爆発を思い出し、走る緊張。しかし。


「人ですかっ!?」


 地面から大量に生えてきたのは、上半身のみで顔のパーツがない『無貌の人型』

 その姿は、肉を持つ肌色のマネキン。

 全ての個体が、猛然とつかみかかってくる。


「趣味が悪いわね……っ!」


 伸びてくる手を、ベリアルは杖で払ってかわす。

 するとそこに迫るのは、マリア本体による黄金杖の叩きつけだ。


「っ!」


 注意して、これをかわす六人。

 するとマリアは続けざまに、金の杖を斜めに振り下ろす。

 慌ててこれを回避すると、金杖は人型を容赦なく斬り裂き進み、地面に突き刺さった。

 転がってきた人型の『部品』に、シールドが思わず息を飲む。


「まだ……っ!」


 横っ飛びからの回転でマリアの攻撃をかわしたワイルドが、身体を起こしながら叫ぶ。

 今も残る多くの人型たちは足を生やし、地面を這い出し跳躍。

 飛び掛かりを仕掛けてきた。


「【大回転撃】!」


 これをシールドは、両手の盾を振り回す攻撃で対処。

 生き残った個体はベリアルとスキアが魔法で撃って、後衛が無事を確保する。


「ここだ! 【殺到】ォ!」


 クルデリスも速い移動で、飛び掛かりにきた人型たちをかわすが――。


「なっ!?」


 人型の飛び掛かりも、あくまで『足止め』のためのもの。

 マリアは回避後の隙を狙って腕を伸ばし、そのままクルデリスをつかみ上げた。

 直後、その巨碗が『液体』に変わって爆発する。


「クルデリス!」


 燃えながら落下し、背中から地に落ちたクルデリスは、3割に至るダメージを受けた。

 相棒の負傷に、思わず声を上げたスキア。

 すでに半分近くまで減ったクルデリスのHPを見ながら、追撃へのけん制に入る。


「【降魔連砲】!」

「【フレアストライク】!」


 ベリアルも同時に放つ魔法攻撃は直進。

 それに気づいたマリアが動きを止め、けん制には成功するが――。

 飛び掛かってきたものより一回り大きな人型たちが立ちふさがり、人壁となる。

 魔法を受け、砕けて散る人型たち。

 ある意味凄惨な光景に、思わずベリアルたちが驚愕する。


「腕! 液体の払いがくるわ!」


 マリアが、引いた腕を突き出した。

 その狙いが後衛組だと気づいた三人は防御態勢に入るが、飛んできたのはなんと腕そのもの。


「「「っ!?」」」


 三人の前に突き刺さったマリアの腕にギョッとするが、その直後。

【錬金爆破】によって気化し、爆発。


「てっ、【天雲の盾】!」

「くっ!」

「きゃあっ!」


 ベリアルとスキアが盾の背後に慌てて駆けつけ、腕の爆発から身を守るが、その勢いに三人は吹き飛ばされた。さらに。

 狙いを後衛から自分たちにさせようと動き出したワイルドたちに、人型たちが接近。


「「「っ!?」」」


 そのマネキンの様な身体の内側からもれ出す強烈な輝きが見えた直後、次々に爆発を始める。

 ワイルドたちは次々に弾け散る人型を、避けることに専念。

 するとさらに本体マリアの金杖攻撃が、ワイルドを攻撃。


「うわっ!」


 これをどうにか避けるも、そこへ迫る人型の爆発が前衛組をその場に縫い止める。


「「「っ!」」」


 まとめて飛び込んできた人型が、続々爆発。

 速い行動で回避に成功するが、スワローは飛んできた頭部に弾かれヒザを突き、クルデリスも肩口を焼かれて尻もちをついた。


「ひ、人型の装填が早いです……っ」

「思ったより、マズい状況だわ……!」


 マリアはここでさらに人型を大量生成し、敵の捕縛にも、自爆にも、壁にもできるレベルの量を設置。

 前衛後衛が分断されてしまった状態の六人は、明確な危機に追い込まれた。


「……いいだろう」

「スキア?」


 そんな中、一歩前に出たのはスキア。


「長い長い『溜めの時間』がようやく終わった。見せてやろう、隠された我が力を」


 予期せぬ状況に目を奪われるベリアル。すると。


「――――【開眼】」


 これまでずっと、閉じたままだったスキアの両目が開かれていく。

 プリズムに当てた光のような、神々しい七色の輝きと共に現れる瞳。

 スキアは居並ぶ大量の人型に、杖を向けた。


「万象余さず、我が力の前に降伏せよ――――【万魔の眼光】!」


 放たれる十字光は、これまでのものより一層まばゆい。

 炸裂し、無数の輝きにとなって人型に襲い掛かる。

 バチバチと瞬く強烈な光は、思わず目を閉じてしまうほど。

 しかしその威力は絶大、人型のほとんどをまとめて消し飛ばした。


「お見事です……っ」


 その激しい瞬きと威力に、思わず見惚れるスワロー。


「流れが、変わるわ!」


 一掃された人型に、ベリアルも声を上げる。

 生まれたフラットな状況に、即座に動き出す前衛組。

 対してマリアも止まらず、さらに人型による攻勢をしかけてくる。


「っ!?」


 地面から現れたのは、四体の巨大な人型。

 無貌の巨体が続けざまに生み出され、一体は前衛組を、三体は後衛組を潰そうと特攻。

 倒壊するビルを思わせる、圧し掛かりで襲い掛かる。


「ゆくぞ! 大きくなるがいい!」


 前衛組を狙った巨体に、対応したのはワイルド。

 持ち替えた【蒼樹の白剣】は、【世界樹の剣】による効果で大型に可変。


「【フルスイング】だああああああ――――っ!!」


 豪快な全力の斬り上げで、巨体マネキンを真っ二つに斬り裂いた。

 爆発して、塵となる人型。

 ここまでは問題なし。


「【両手魔法】【降魔連砲】【降魔連砲】!」


 だが、後衛を狙う超大型は三体。

『開眼状態』のスキアが放つ合計10連の大型魔力光線が、巨体を次々に撃ち抜き二体をバラバラにする。


「っ!?」


 しかしその中で残ってしまった前腕部が、スキアのもとに落ちてきた。


「まだだ! 【降魔砲】ッ!」


 ギリギリ目前で魔法が間に合い、目の前で爆発。

 余波に体勢を崩したものの、難を逃れることに成功した。


「噓でしょ……?」


 跳び上がった、最後の巨体に息を飲む。

 なんと巨大化マリアは、空中にいる四体目の頭部をつかんだ。


「もしや、このままくるのかッ!?」


 まるでワイルドが得意とする『魔物をつかんで叩きつける』攻撃のような形で、後衛組に巨体マネキンを振り下ろしてくる。

 豪快な投げ飛ばし攻撃に、思わず目を奪われる六人。だが。


「【不動】【クイックガード】【地壁の盾】!」


 走るシールドは掲げた盾で、巨体の身体を受け止める。


「【天雲の盾】!」


 そして予想通り、続く爆発にも防御耐性を変えて対応。

 ベリアルとスキアはその余波に大きく吹き飛ばされたが、ダメージはなし。


「スキアだけに、見せ場を持っていかれるわけにはいかないよねェ!?」


 するとスキアの【開眼】から始まった逆転の流れに、クルデリスが反応。


「【降霊】!」


 まだまだめずらしい【シャーマン】系スキルによって、鎧をまとった青白い剣士の霊を身にまとう。

 そして右手の短剣を大きく引き、そのまま全力で振り払う。


「【斬首の刃】(デスサイズ)」

「「「「ッ!?」」」」


 ワイルドは、驚きに目を見開いた。

 クルデリスの放った大きな斬り払いは、長さ30メートルに渡る巨大な魔力刃を生成。

 ヴァルガデーナの夜空を高速で突き進み、マリアの上半身に深い傷を刻み付けた。

 強烈な一撃に、大きく体勢を崩したマリア。


「ゆけ、我が使い魔! 【エンシェントクロウ】!」


 この隙を逃さず、すぐさまスキアが追撃に入る。

 身体の紋様を輝かせながら飛ぶ古代の大カラスが一直線に飛来し、そのままマリアに直撃。

 付近に、輝く大量の魔力光をバラまいた。

 それは魔法攻撃を、『エコー』のような形で増幅する空間を生み出すもの。

 効果時間が短く、クール時間は長い。

 そのため使用頻度こそ低いが、恐ろしく有効な使い魔スキルだ。


「【イビル・ゴスペル】!」


 そこに放つは、四方八方に生み出される黒の光球。

 空中に制止した大量の魔力球は増量し、次々に炸裂を開始する。

 大型がゆえに、一つの炸裂を喰らったヒットバックで次々に炸裂が直撃。

 マリアが、再び体勢を崩した。


「【滅多打ち】!」


 ベリアルはここぞとばかりに、MP消費の高さを忘れて【フレアストライク】を高速連射。

 放たれた炎砲弾は『輝き』の中で効果を増加し、1発が2度の爆発を巻き起こす。

【滅多打ち】によって、連射された爆炎は12発。

 増幅されたことで24連続の爆発を起こし、夜空を赤く染め上げた。

 ごうごうと燃えながら吹き飛ばされたマリアは、そのまま地面を跳ね転がって、民家を潰して倒れ込む。


「聞いてた以上に、良いスキルね」

「【滅多打ち】との相性は、これ以上ないほどに的確だったようだな」


 ベリアルが軽く右手を持ち上げると、スキアもそれに合わせて左手を上げる。

 二人は軽く掌をぶつけて鳴らし、優雅に振り下ろした。


「こ、これが、闇を継ぐ者の魔導士たちか」

「恐ろしい火力だ……!」


 あくまでクールな二人に、狂化しかけの掲示板組はまたも興奮。

「すごいすごい!」と語り合う。


「さすがです使徒長。そしてあの二刀流も魔導士も……やはり侮れない」


 そんな中、樹氷の魔女だけが「ぐぬぬ」と強く唇を噛む。


「……もしかして樹氷ちゃん、もう狂化してる?」


 その悔しそうな顔つきに、思わず問いかけてしまうマウント氏だった。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これはあれですね、観衆が狂化したら、マネキンの代わりに地面から召喚されるんですねw 「メ"イ"ぢゃァァん……」 「ポヨ"ォォ…」 「使徒ぢョオォォ…」 と呻きながら闇を継ぐ者に接近。 そして満を辞…
クイズ行きますね、今度も漢字問題だけど、論理と言うよりは知識系かな。 次の漢字の羅列は、ある歌の歌詞に出てくる漢字を抜き出して順番通り並べたものです。ただしタイトルに使われている漢字は除いてあります…
樹氷ちゃんただの嫉妬なのか、また狂化してるのか分からないですね…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ