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1133/1381

1133.悪魔に魅入られた者

「ヴァルガデーナには、ヘルメスという一人の天才錬金術師が住んでいた」


 町の中央、魔法陣の中央部分がある前庭へと続く道で始まる戦い。


「その者は、悪魔と同じ構成のホムンクルスを作り出すことに成功した」


 ルナティックはそんな説明をすると、右手を持ち上げる。

 すると生まれた魔法陣から、一体の老人のような姿をした白髪の悪魔が現れた。

 身につけた黒赤のローブ。

 それ以外には長い鼻と口端の牙しか特徴がなく、強そうには見えない。


「これが72柱に属する大公爵」


 実力はもちろん未知数だが、やや拍子抜けの空気が漂う。

 そんな中、ルナティックは続ける。


「そして、大罪悪魔――――【アスモデウス】」

「「「「っ!?」」」」


 続けて魔法陣から現れたのは、アモンではなくアスモデウス。

 人型だが牛の頭部に羊の角を持ち、長い尾は蛇。

 そして敵としてはめずらしく、二足の竜に騎乗している。

 全高は約4メートルほど。

 手にした大きな槍が、主要な武器になるのだろう。

 ワイルドたちは、大きな驚きを以て身構える。


「オリジナルではないとはいえ、同じ大罪悪魔が……同時に4体?」


 アスモデウスは、1体だけではなかった。


「覚悟してもらうよ、闇を継ぐ者たち」


 思わぬ状況に驚く中、ルナティックがその手を振り下ろす。

 騎竜状態のまま、同時に動き出す4体のアスモデウス。


「まずはこのワイルドが」


 これに対して、クールな面持ちで前に出たのはワイルド。


「【猛進槍】」

「っ!?」


 ワイルドが驚きを見せるほどの急加速から、放つ槍の刺突。

 これを大きく横に回避すると、続けて衝撃波が駆け抜けていく。


「【猛追】」


 すると回避したところを狙って、2体目のアスモデウスが高速移動スキルで突進。

 突きから払いへとつなぐ。


「【アクロバット】」


 これをワイルドが、しゃがみからのバク転でかわす。


「っ!?」

「「【猛進槍】」」


 すると3体目と1体目のアスモデウスが、わずかな時間差で高速刺突を繰り出してきた。


「【ラビットジャンプ】!」


 クロスするような突撃。

 衝撃波による追加攻撃に対応するため、ワイルドは高い跳躍による回避を選択。


「フリーズストライク――」

「そうはさせないよ【ブレイズキャノン】」

「っ!」


 ベリアルはワイルドの着地際をフォローしようとしたが、そこを狙ったルナティックの紫炎に回避を余儀なくされた。

 アスモデウスへのけん制は失敗。


「【跳躍】」


 2体目のアスモデウスは騎竜で高く跳躍すると、手にした槍を引いた。


「【裂空槍】」


 槍の秘めた魔力によって、ワイルドに向けて一直線に飛行。

 そのまま放つ突きは、空中にいる状態では回避できない。


「わああああああ――――っ!」


 槍の突撃を受けたワイルドは、炸裂する衝撃波で吹き飛ばされた。

 アスモデウスは着地すると、そのまま4体で陣形を組みながら追撃に動き出す。


「そうはさせません! 【加速】」


 いきなりのピンチに、動き出したのはスワロー。


「【灼火弾】」


 騎竜が吐く豪炎弾は、大型。


「【リブースト】!」

「スワローさん、さすがです」


 シールドが思わずつぶやく。

 急加速一つで、突然の炎弾を置き去りにして接近。

 そして4体の意識を自分に引き付けた上で、攻撃体勢に入る。


「うまい」


 ルナティックも、続けてつぶやく。

 スワローが狙うアスモデウスは、残り3体とスワローの間に『壁』になるような位置にいる。

 これで状況は、一対一にほど近い。

 アスモデウスの突き出す槍をかわし、振り回しをしゃがんでやり過ごし、振り降ろしを左側への移動で回避する。

 ワイルドの戦い方を見たおかげで、感覚はつかめている。


「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」


 見事な反撃が決まり、騎竜が大きくのけ反った。

 どうやらアスモデウスは、騎竜への攻撃でもダメージとして判定されるようだ。しかし。


「HPが減っていない……!?」


 確かに決まった一撃。

 それにもかかわらず、ダメージを受けていない。


「【毒蛇】」

「っ!!」


 騎乗している敵は、低い位置に潜り込まれた時の対応が遅くなるのが通常。

 しかしアスモデウスの長い毒蛇の尾は、猛烈な早さで喰らいつきにくる。

 直撃すれば『猛毒』を受けることになる一撃を、スワローはとっさに大きく体を傾け回避。

 肩を弾かれたが、ダメージは少なく済んだ。

 こちらの攻撃がダメージにならない以上、接近戦を続ける意味はない。

 スワローは速いバックステップで、一度距離を取った。


「これは、分身のようなものでしょうか」


 それにしても、攻撃を当てても分身体が消えないのは気になる。

 常に1/4状態で戦うのは、なかなかに難しい状態だ。


「もう一体の悪魔が大人しいのは助かりますね」


 4体のアスモデウスと一緒に攻撃されると、さすがに厳しい。

 できればもう一体の悪魔が動き出す前に、HPが減らない件を何とかしたいところだ。


「……もしかすると、戦い方は大型の海棲魔獣に近い形かもしれない」

「ありえますね」


 そんな中、ベリアルの言葉にスワローがうなずく。


「さあ続けよう、アスモデウス!」


 ルナティックの言葉に、動き出す4体のアスモデウス。


「【灼火弾】」

「【加速】!」


 放たれた豪炎弾を、速い走りでかわす。

 するとそこに続く、2体目の槍攻撃。


「【猛進槍】」

「【スライディング】!」


 回避後を狙った攻撃に、スワローは騎竜の足元へ滑り込んで回避。


「【裂空槍】」


 立ち上がったところに、空中から迫る刺突。


「【跳躍】っ!」


 難しい体勢からの回避は、ギリギリの跳躍で成功。

 ここでベリアルが杖を構える。


「させないよ【ブレイズキャノン】」

「まもりお願い!」

「はひっ! 【かばう】【天雲の盾】!」

「【フリーズストライク】!」


 ルナティックの炎砲をシールドが受け、ベリアルはそのまま氷砲弾で攻撃。

 すると【灼火弾】でスワローを狙ったアスモデウスに直撃し、HPをわずかに削ってみせた。


「HPが減りました……!」

「おそらく3体目までは実体のある分身みたいな形。分身体の攻撃は喰らってもダメージにはならないんじゃない? だから避けさせたところを本体で狙う。その場合どうしても、本体の攻撃は最後まで様子を見てから攻撃できる、4体目になりがち」

「さすがだね、ナイトメア」


 思った以上に、早い見極め。

 これで本体以外の攻撃を受けても、ダメージはないと知られてしまった。

 しかし、ルナティックは余裕を見せる。


「君たちがこれくらいやるだろうってことは、計算済みだよ――――【シャッフル】」


 後ろに控える72柱悪魔が、杖を地面につく。

 すると広がった光が大きく一度、フラッシュのように輝いた。


「さあやれ、アスモデウス!」


 その言葉に応える形で、4体が騎竜を駆けさせる。


「【猛進槍】」

「1体目です!」


 本物は4体目になりがちと言われた直後。

 スワローがしっかり見据えていた本体を、初撃に持ってきたルナティックに、スワローは的確な回避モーションを取る。


「【加速】!」


 そして、天に向けて【ブレード】を投擲した。


「っ!?」


【加速】のはずが、出たのは【投擲】

 自分の行動の意味が分からず驚愕するスワローに、容赦なく槍の一撃が直撃する。


「ああああ――っ!」


 続く衝撃波に、十数メートルに渡って吹き飛ばされた。

 するとルナティックはさらに、ベリアルに向けて接近。


「さあ次は君だよナイトメア! 【ブレイズキャノン】!」

「【天雲の盾】!」


 すぐに立ちふさがるシールドは、なぜかその場で盾を振り回した。


「きゃあああっ!?」

「まもり!」


 爆炎が直撃して、シールドが吹き飛ばされる。

 振り回す盾の動きは、完全に【ローリングシールド】のものだった。


「そういうこと……スキルの効果が『シャッフル』されてるのね」

「ご名答。さすがに早いね、ナイトメア」


 まさかの事態に、驚愕するベリアル。

 ルナティックは、楽しそうに笑ってみせた。

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― 新着の感想 ―
クイズはどちらも漢字クイズになりますね。
これメンバーが増えるほど面倒になるデバフですね。
まだ序盤でシャッフルか…。 もしかしてその悪魔、終盤には【シャンブルズ】で人格交換とか使って来ません…? 実際にゲーム系ならば可能なのが恐ろしい…。 レンはメイ、メイはまもり、まもりはツバメに。 そ…
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