表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1131/1376

1131.聖女の力

「無事であるか」


 自分が『闇を継ぐ者』だったことを思い出して、クールに問いかけるワイルド。


「私は……うう……っ。強い悪意に意識を乗っ取られて……」

「絶望で聖女の力が弱まっていたところに、町長の『狂化』が効いちゃった感じね。でもちゃんと乗り越えた。これならもう大丈夫そう」

「助けていただいて、ありがとうございました」


 座り込んだまま、肩で息をする聖女リーシャ。

 ワイルドの見事な敵HP管理で、しっかりと正気を取り戻す展開に進めることができた。


「フルーネは……!?」


 リーシャは建物の屋根の上を確認する。

 そこには変わらず、石像と化したままのフルーネの姿がある。


「あ、あの……お願いしますっ。どうかフルーネを下ろしてあげてもらえないでしょうか」

「おまかせあれ」


 ワイルドはつぶやき、身軽な動きで石像フルーネを回収。

 リーシャの元に戻ってきた。


「フルーネ」


 するとリーシャは、石になった小竜を抱きしめた。

 そして、そっと目を閉じる。


「これは……?」


 意外な事態に、ベリアルが息を飲む。

 リーシャから広がっていく、まばゆい黄金の光。

 神々しくも温かな輝きは、まさしく聖女の持つ奇跡の力だ。


「石化が……解けていきます」


 すると石像と化していた小竜が、徐々にその身体を取り戻していく。

 やがて完全に石化が解けると、小さく鳴いた。


「フルーネ!?」


 リーシャは驚きと共に目を開き、そのまま強く小竜を抱きしめる。


「よかった! フルーネ、本当によかった!」


 その姿を見たワイルドは「おおーっ!」と歓喜に拍手を送り、スワローも大きくうなずく。

 シールドも驚きの展開に、思わず見とれてしまっている。

 よろこぶ、リーシャとフルーネ。

 ここでようやく自分の身体に宿る輝きを見て、驚く。


「これは、一体……」

「これが町長の言ってた、『もっと強い力に目覚めると思っていた』の答えなんだわ」

「そういうことですか」

「闇堕ちを乗り越えた先にあるのは、聖女としての――――覚醒」


 立ち上がると、美しい黄金の輝きがリーシャを包み込んでいた。


「リーシャには今回の石化みたいな、呪いと思われる異常を回復する力が生まれた。ということは……」

「何かくるっ!?」


 ワイルドが異変に気付いた直後、現れたのは数十体の狂化町人たち。

 こちらを取り囲むようにして登場した町人たちは、武器を手に迫り来る。

 すぐに構えを取るワイルド。


「ここは私に、お任せください」


 しかし聖女リーシャは笑顔でそう言うと、ゆっくりと一歩前に出た。

 それから両手を組んで、目を閉じる。


「皆さん目を覚ましてください――――【プリフィカーティオ】」


 石床の上を、波紋のように広がる黄金の輝き。

 狂化町人たちの足元を、光が通り過ぎると――。


「……あれ? 俺は一体なぜこんなことを……?」

「私はどうして、こんなところに?」

「聖女様? こんな時間にどうされたのですか?」


 狂化の解けた者たちが、次々に正気を取り戻していく。


「す、すごいです……」


 夜闇に広がる黄金の光と、狂化から回復していく町人たち。

 その光景はまさしく、聖女の起こした奇跡だった。


「そうか、我々は奇妙な力に身体を乗っ取られて……!」

「これは一体何が?」


 正気を取り戻したことで、町人たちが記憶を取り戻していく。

 出てきた疑問はやはり、この状況の発端について。


「町長のやったことよ」

「町長殿が……? まさか、そんな」


 さすがにこの恐ろしい事実を受け入れられない。


「事実です」


 しかし聖女がそう言うと、今も赤い光に染まったヴァルガデーナの町を見て、町人たちは言葉を失った。


「皆さん。私は今も狂化に苦しむ人たちを、救いに行こうと思います」


 そして、そんなリーシャの言葉を聞いて、すぐに意識を変える。


「俺たちは……戦える者は聖女様の護衛を! それ以外の者たちは、この妖しい光の範囲から抜け出すんだ!」

「聖女様、僕たちも同行させていただいてもよろしいでしょうか」

「私もお願いします」


 たずねたのは、戦闘もできそうなたくましい青年たち。

 どうやらその能力の高さゆえに町への居住を求められ、受け入れたことで石化を逃れた者のようだ。


「とても心強いです。よろしくお願いします」

「はいっ!」


 こうして聖女リーシャは、今も狂う町人たちの救助に向かうことを決めた。

 リーシャは一つ息をつき、こちらに向き直る。


「皆さん、ありがとうございました。皆さんが私の目を覚ましてくれたおかげで、町の方たちを助けることができそうですっ!」


 リーシャがそう言うと、小竜も翼を広げて気合をみせる。


「それなら私たちは町長を追いましょう。聖女すら駒の一つくらいにしか見ていなかったくらいだもの、魔力を集めていた以上は、何か大きな動きをしているはずよ」

「闇を以て、闇を暴くということになりそうですね」

「い、いきましょうっ」

「リーシャちゃん、がんばってね!」

「はいっ!」


 またもうっかり、いつもの感じになってしまうワイルド。

 町人たちを救うために動く聖女と、これ以上の凶行を止めるために動く『闇を継ぐ者』の面々。

 そして他方では、スキアとクルデリスがサグワの救出に成功している。

 闇深くそして難しいこのクエストを、ワイルドたちは最高の流れで進んでいく。

 町を覆う魔法陣の中心。

 そこで待っていたのは、肩までの黒髪が美しい一人の少女だった。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
大分前に言っていたポケモンフュージョンでポケナビのポケモンフュージョンが格好いいのや可愛いの、なんか見たことあるのまで色々あって楽しいです。
クイズを持ってきてるサイトはクイズ好きがお互いに出しあってる感じだから、思わぬ方向から答えがきたりして結構楽しそうです。
巨大な魔法陣の中心に立つ少女…。 住人を石化させてでも成し遂げたい大願。 なるほど…分かりました。 その少女の正体はーー町長ですね? 『老い先短いと悟ったワシは…生まれ変わることにした。ピチピチの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ