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1129.闇堕ちの聖女

「皆……皆、消えちゃえばいいんだァァァァッ!!」


 絶望に赤く輝く目は、狂化によるもの。


「くるっ!」


 黒く染まった修道服を着た、悪魔のようになった聖女リーシャ。

 黒翼の羽ばたき一つで急上昇。

 闇に堕ちた聖女の【飛行】は、地上なら低空飛行で、空中なら全方位自在に動ける優秀なスキル。

 そのまま高く舞い上がったところで、くるりと一回転。


「【黒死の羽】!」


 大きく翼を開き、大量の羽を飛ばす。

 ミサイルのように降り注いでくる黒羽は、石床に突き刺さって次々に炸裂する。

 ワイルドはこれを上手に避け、スワローはすぐに建物の影へ。

 べリアルは、シールドの盾に隠れて対応。

 するとリーシャは一気に急降下して、先頭のワイルドを狙う。

 ワイルドはどういう形で攻撃してくるか、様子をうかがう。


「翼による打撃は、おそらくないわ!」

「りょうかい」


 べリアルの言葉で特攻はないと、考えたワイルド。


「【妖炎転舞】!」

「【ラビットジャンプ】!」


 予想通り、ワイルドの前三メートルほどの位置で急回転。

 黒翼から放たれた魔力光が、荒々しい炎の輪を描き出した。


「ほう」


 思ったよりギリギリの回避で、ちょっとドキドキしながらクールなリアクションをしてみせるワイルド。


「べリアルさんの言葉通りですね【加速】」


 その火力の高さにスワローは、『闇堕ちして弱いやつはいない』という言葉を思い出す。

 そして着地したワイルドが左側から来られるように、右から巻くような軌道で接近。


「【電光石火】!」


 まずは様子見の一撃。

 これを闇堕ちリーシャが、かわしたところで【反転】


「【バンビステップ】!」


 ここでワイルドが動き出し、挟み込む形となった。

 距離を詰めた二人は、目を合わす。

 闇を継ぐ者モードでも、その意思疎通力は変わらない。

 まずはワイルドが攻撃し、かわしたところを全方位攻撃が可能なスワローが叩く流れを取る。しかし。


「来ないでェェェェ――ッ!! 【魔浄】ッ!!」

「「ッ!?」」


 ワイルドとスワローが迫ったところで、闇堕ち聖女を中心に広がる浄化の『奇跡』が発動。

 闇色の輝きに巻き込まれた二人は、慌てて防御を取る。


「【誘導弾】【ファイアボルト】!」


 ここでべリアルが魔法でけん制をかけるが、黒い浄化の輝きに飲まれて消えた。


「ダメージは僅少。【闇属性】の専用衣装が役に立ちました……!」


『闇を継ぐ者』衣装のおかげで、本来1割強のダメージは5%ほどで済んだ。

 すると闇堕ち聖女は、低空飛行で距離を取る。


「【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」


 べリアルはすぐさま追撃の炎弾を放つが、弧を描く急加速でこれを振り払い、その手を伸ばす。


「【カースフレア】ァァァァ――ッ!!」

「ッ!!」


 圧縮された高密度の黒炎球を発射。

 それを見たシールドはすぐさま、べリアルの前に立つ。


「【天雲の盾】!」


 直後、燃え盛る黒炎球が盾に直撃して、弾かれた炎が付近の建物を焼き落とした。


「上位上級クラスを、この短い発動時間で撃ってくるのは反則じゃない?」


 これにはべリアルも、苦笑いを浮かべるしかない。

 禍々しい豪炎に、注意深く回避を選んだ四人に対して、闇堕ち聖女は祈りを捧げる。


「【呪術福音】」


 鳴り響く鐘の音。


「「「「っ!?」」」」


 すぐに異変に気づいたべリアルが、ステータスを確認。


「【敏捷】【技量】が、かなり低下してるわ!」


 鳴り続ける鐘の音。

 翼の羽ばたき一つで、闇堕ち聖女は急加速。

 長い髪を揺らし、一気にスワローの前に踏み込んでくると、その手を伸ばす。

 拳でも、手刀でもない。

 ただ伸ばした掌に、スワローはわずかに驚く。


「【ダークヒール】」


 キラキラとした美しい奇跡のエフェクトを、黒く塗りつぶした輝きが肩に触れる。


「っ!?」


 それだけでHPが、1割近く持っていかれた。

 剣でも、斧でもない『タッチ』という軌道。

 思わぬ初見の攻撃に、スワローは慌てて回避。

 右、左、右と速いバックステップでかわすが、【敏捷】は低下中。

 闇堕ち聖女は、低空の速い飛行で接近。

 下手投げのような大きな手の動きが、胸元を撫でていき、HPはさらに1割ほど減少。


「【バンビステップ】!」


 素手ゆえの、攻撃の速さ。

 そして手が当たりさえすればいいという、簡単な条件。

 高い火力に見合わない自由な攻撃に押されるスワローを、ワイルドがフォローに入る。


「【洗礼】ッ!!」

「っ!?」


 しかし振り払った右手から飛び散る黒の聖水が、ワイルドのHPをガリガリと削っていった。

 飛び散る水滴は、さすがに近距離での回避がほぼ不可能。

 防御対応が必須の攻撃だ。


「【妖炎転舞】!」

「「っ!!」」


 こうして二人を追い込んだ闇堕ち聖女は、翼を展開。

 豪快な払いの一撃は、付近を薙ぎ払う炎の輪。


「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】【エアリアル】!」


 二人は後方への跳躍で回避。

 さすがに一度、距離を取る。

 だが闇堕ち聖女は逃がさない。

 両手を開けば、神々しい闇の輝きが天に広がる。


「【エンジェルラダー】!」

「「っ!!」」


 天から降りてくる、大きな光柱。

 次々爆発していく中で、必死の回避を続ける二人だが――。


「スワロー!」


 べリアルが叫ぶ。

 見れば黒翼を広げ、【飛行】で光柱をかわしながら一直線に飛んでくる、闇堕ち聖女の姿が見えた。


「妖炎転舞――」


 そして一回転から放つ、豪炎の払い。

 回避はできそうにない。

 諦めて防御を選びかけたスワローだが、べリアルが早く呼んだことで、『ひらめき』が生まれるまでの時間が残っていた。


「【アクアエッジ】! 【瞬剣殺】!」


 水刃が付近にいくつも放たれて、炎が生まれる直前に闇堕ち聖女の翼を斬った。


「うまい!」


 闇堕ち聖女は体勢を崩して不時着し、そのまま床石をゴロゴロと転がった。


「【魔砲術】【フレアストライク】!」


 べリアルはすぐさま杖を向け、炎砲弾で追撃。

 黒翼を広げた闇堕ち聖女は、そのまま翼を自らを囲むようにして防御。


「皆、なくなっちゃえ……」


 舞い上がる火の粉の中、ゆっくりと黒翼を開いて立ち上がる姿に、思わず目を奪われる。


「高い火力に手数の多さ。早い注意喚起を感謝します、ベリアル」

「いえ、見事な反撃だったわ。ここから焦らずじっくりと――」

「闇に堕ちた聖女さん……カッコいいなぁ」

「早く聖女を倒しましょう! このままじゃワイルドが染まってしまうわ……っ!」


 闇堕ち聖女の黒翼展開に見入られたワイルドの声に、べリアルは早期の打倒を誓うのだった。

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クイズのヒントは漢字の形と順番かな、あと解く時に漢字を多用すると、何か掴めるかも…。
・闇堕ちワイルド 野生児呼びに耐えられず闇堕ちしたメイ。 地面に両手をつき、闇色のオーラを纏ってゆく。 両目は赤く輝き、その歯やの爪は長く鋭く伸びる。 さらに、服だけでなく肌までもが黒く染まってゆく…
闇落ちした結果パワーは増したけど繊細な技術が失われて弱くなるパターンもあるし…聖女さんは関係ないけど
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