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1123.反撃開始

 闇を継ぐ者たちは、町長に乗っ取られたヴァルガデーナ目指して夜の街道を進む。

 魔物と魔法罠の入り混じる道を避け、正面から町に向かうためだ。


「目的はサグワと聖女の救出。そして町長の打倒だな」

「それで間違いないわ。ただし間違いなくルナ……維月刹那とは敵としてぶつかることになるでしょうね」

「暗夜教団か。その強さは聞き及んでいる」

「んっふふ。僕は楽しみだけどねェ。大罪悪魔だなんて、楽しい勝負ができそうだろォ?」


 たどり着いたのは、町の正面入り口。

 巨大な魔法陣で赤い光に照らされたヴァルガデーナの町は、昼間の明るさなどまるで感じない、妖しい世界に変わっていた。


「あ、ああ……あああああ……」


 内部には不死者のように、フラフラと歩く町民の姿。

 六人は壁の陰に隠れ、付近の様子を確認する。


「カウントダウンが始まりました」

「聖女のクッキーが加護の効果を残しているうちに目的を果たさないと、敗北になる形ね」

「わ、私が私であるうちに……ですね」


 視界に映る数値は、『狂化』までの残り時間。

 狂う前にひと演技入れた白夜やリズのことを思い出して、レンことベリアルは苦笑いを浮かべる。


「聖女の家は中央付近で、サグワの家は西端。町長の居場所は分からないし、どういう流れが正しいかは分からないから、柔軟にいきましょう」

「りょうかいした」

「いきましょう」

「闇が悪を討つか、まったくおもしろい」

「んっふふ。たまらないねェ、この緊張感」

「ド、ドキドキしますっ」


 メイことワイルドを先頭に、六人は町へと踏み込んだ。

 目を妖しく輝かせながら、町を徘徊する狂化町人たち。

 戦いが始まってしまえば、即座にその場所へ集まってくるだろう。

 そうと分かれば、緊張感が強まりミスが出そうにもなる。しかし。


「ここは一度左だ」


 闇を継ぐ者モードでも、ワイルドのナビは完璧。

 その安心感から、下手なミスも出てこない。

 ステルスゲームのような一面を持つクエストだが、『大量の敵を引き連れて逃げ回る』といった最悪の状態にはならなさそうだ。

 それどころか。


「【投石】」


 ワイルドの投げた石が、離れた民家の屋根に当たる。

 すると狂化町人は、その音に反応して歩き出した。

 これによってまた、道が開ける。


「フッ」


 それを見て、カッコいいポーズを決めるワイルド。

 クールに【投石】を決めるという姿に、スキアの口元がちょっとゆがむ。


「聖女の様子が気になるわね。私たちが助かったのは聖女のおかげだけど……本人は無事か、狂っているか、それとも」

「それとも?」

「町長たちの手先か」

「その可能性も、ゼロではありませんね」

「で、できれば戦う展開は避けたいです……っ」


 完全に善人だった聖女が町長の手先のパターンは、さすがに衝撃が大きそうだ。


「待って、何かが近づいてくる」


 耳に届いた音は、慌ただしいもの。

 六人はうなずき合い、走り出す。

 暗い街の一角。

 中央通りから、わずかに入ったところで見えたのは――。


「聖女ちゃんだ」

「聖女さん、無事でしたか」


 スワローたちが駆けつけると、狂化した町人に追われた聖女リーシャがこちらに気づく。

 そして、憔悴の表情を向けてきた。


「町の皆さんが急に、おかしくなってしまったんです……! 【サントゥアリオ】!」


 聖女の放つ力が円形の聖域を生み出し、町人たちを硬直させる。


「皆さんを助けたくて、いろいろと試していたのですが……私の力では……っ」


 そう言って聖女は、悲しそうに目を伏せる。

 ヴァルガデーナには恩がある聖女は、どうにか町の人たちを助けられないかと駆け回っていたようだ。


「聖女様……助けて……っ」


 そんな中、フラフラとした足取りでやって来たのは一人の町人。


「は、はいっ!」


 ワイルドたちと同日に『加護』を受けていたのか、どうにか正気を保っていた男が、助けてを求めて駆けてくる。

 聖女は走り寄り、聖なる力を解放するが、すでに始まった狂化を止めることはできない。


「ウ、ウ、ウオオオオオオオオオ――――ッ!!」

「そんな……っ」

「ワイルド、お願い!」

「おまかせあれ! 【裸足の女神】!」


 ワイルドは目にも止まらぬ高速移動で聖女を抱え、狂化してしまった町人を置き去りにする。


「ごめんなさいっ……ごめんなさいっ」


 力足りず、申し訳なさそうにする聖女。


「【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 ここで空から攻撃体勢に入っていた怪鳥を、ベリアルが狙い撃つ。

 なんとワイルドは駆け出す前に、視線一つでレンにその存在を示唆していた。

 氷弾は見事な方向転換にかわされるが、ベリアルも避けられる可能性まで考慮して、すでに視線を送っていた。


「【凶弾】」


 とにかく始動の早いスキアの魔弾が、怪鳥の翼を弾いて落下させる。


「魔導士が二人いるというのは、頼りになります」

「まったくだねェ」


 この隙を狙いに動くのは、スワローとクルデリス。


「【電光石火】」


 怪鳥が体勢を回復する前に、スワローが速く軽い一撃で復帰を遅らせる。


「【殺到】」


 続いてクルデリスが、短剣を突き刺し前進。

 そのまま高く突き上げて、巻き起こす爆発。

 見事な連携で、怪鳥を片付けた。


「【かばう】【クイックガード】【地壁の盾】!」


 そこを狙い撃ちにきたのは、弓矢を使う狂化町人。

 ステルスゲームなら『屋根の上』からプレイヤーを狙うタイプの、やっかいな存在だ。

 しかしシールドの盾が三つの矢を難なく弾けば、即座にワイルドが『種子』投擲で続く。


「――――大きくなるがいい」


 投じられた種は屋根の上で育ち、一瞬で弓手町人を飲み込んだ。

 ベリアルたちは「できれば」くらいでいた狂化町人へのダメージを、ゼロのまま聖女を救出。

 さらに魔物も早々に打倒したことで、敵の群れに囲まれることなく戦線を離脱した。


「聖女殿、大丈夫であるか?」


 相変わらずちょっと言葉選びのおかしいワイルドが問う。

 町人を助けられず、悲しそうにしている聖女は顔を下げたままだ。


「じ、実は……フルーネが見つからないんです……」


 見れば確かに、いつも連れていた小竜フルーネの姿がない。


「いいわ。それならフルーネの捜索とサグワの様子を見に行くチームで、分けましょう」


 残り時間の決まっているクエスト。

 ベリアルたちは、別動隊を作って攻略することにした。

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― 新着の感想 ―
 スキア「ベリアル、頼みがある」 ベリアル「何?」  スキア「私を、ワイルドと別チームにしてくれ」 ベリアル「なんで? 楽しそうだったじゃない」  スキア「このままでは…私のイメージがッ!」 ベリア…
クイズは正解ですね、模範解法は…後の方が良い?
ツバメ「後で中二病の言い回しについてしっかり教えないとね。」 レン「絶対にやめて。」
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