1114.罠を張ります!
「これでクエスト達成ね。報告に戻りましょう」
「りょうかいですっ!」
町長が依頼してきた化物討伐。
今回の目的だったハーピーを、メイたちは無事に打倒した。
四人は、森を抜けて町へと戻る。
「どうやらお二人も、クエストを終えたようですね」
すると町の出入り口には、スキアとクルデリスの姿。
「お疲れ様。クエストはどうだった?」
「どうやら魔法珠や魔法陣を使った罠を無数に張ることで、魔物の侵入に対処するというクエストのようだ」
「んっふふ。面白かったねェ……異形の魔物が多くて」
スキアとクルデリスも、無事にクエストを達成したようだ。
「広い森に罠をこれだけ張るとは、予想以上に手間のかかる真似をしているな」
六人で息をついていると、そこに再び町長がやってきた。
「皆さんありがとうございます。これでまたしばらく町の平和は保たれるでしょう」
「ここはずいぶんと、趣味の悪い魔物がうろついているようだが?」
「はい、この森は多いですね。恐ろしい話です……ああ、そう言えば」
ため息をついた町長は、思い出したかのようにつぶやく。
「実はもう一か所、罠を仕掛けておきたい場所がありまして。そこはハーピーのように強力な魔物が縄張りにしているんです」
「新たなクエストか」
「こちらも、お願いできませんでしょうか」
「今度は六人で行くのね。それならさっさと片づけちゃいましょうか」
「ありがとうございます。この宝珠たちをポイントに設置すれば魔法陣が展開。そこに踏み込んだものを撃つ罠となりますのでよろしくお願いします」
こうして罠用の魔法珠を受け取った六人は、視界に現れたポイントに向けて移動を開始。
指定の場所に着くと、魔法珠を収めるポイントが円形に表示された。
レンはその中に魔法珠を放り、先へ進む。
するとそれを見たクルデリスが少しソワソワした後、宝珠をポイントの真ん中に置き直す。
レンはまた進み、次の魔法珠を放る。
するとそれを見たクルデリスがまた、宝珠を真ん中に動かす。
「手持ちの宝珠の数が多いのは、間違えて効果範囲に踏み込んで発動させちゃった際に、足りなくならないようにかしら」
「そうだろうな」
スキアの答えを聞きながら、宝珠を放る。
するとまた、クルデリスが真面目な顔で円の中心に置き直した。
「いつも薄い笑みを浮かべてる戦闘狂キャラなのに、几帳面が隠せてないんだけど!」……とは言えず、レンは次の宝珠を円の真ん中に。
それをしばらく見つめたクルデリスは、満足そうに大きくうなずいた。
しかし六つ目の宝珠を設置しようとした、その瞬間。
「何かが飛んでくる……っ」
メイが奇妙な飛行音に気づいて、視線を上げる。
そこに見えたのは、六枚の黒いボロ布のような翼を持つ大型の鳥。
「また気味の悪い魔物だな」
「まったくね」
スキアの言葉に、うなずくレン。
怪鳥は、すぐさま攻撃に入る。
「ツバメちゃん!」
「はいっ!」
破けた布のような翼の表面に走る無数の幾何学模様が、煌々と輝き出す。
直後、空中に描かれる『無数のあみだくじ』を絡めたような複雑な光の線。
「【ラビットジャンプ】!」
「【跳躍】【エアリアル】!」
前衛二人は即座に高く跳躍。
するとその直後、白熱した光の線が雷光となって駆け抜けた。
猛烈な破裂音と共に、熱にあがる白煙。
「まもり、少しいい?」
「はひっ」
この隙にレンは、まもりの黒盾に触れる。
「【連続投擲】!」
ツバメは空中から【炎ブレード】を投じるが、怪鳥はこれを回避。
高速で旋回して、着地した二人のもとへ降下。
「キェェェェェ――――ッ!!」
「「っ!?」」
猛烈な【咆哮】は、『めまい』の状態異常付き。
足をフラつかせるメイは、思わずツバメに抱きついて転倒を防ぎ、ツバメは少し悩んでそっとメイの腰に手を回す。
「クルデリス」
「んっふふ。当然だよねェェェェ!」
言葉一つで、狂った笑みを浮かべながら駆け出すクルデリス。
「【降魔砲】」
メイたちを狙って降下してくる怪鳥を狙って放つ、シンプルな魔力砲。
これをかわしたところを狙って、クルデリスが目を光らせる。
「【フリップジャンプ】【残光連華】ェェェェ!」
放つ魔力剣の輝きが、幾重もの白弧を描く。
二本の斬撃を喰らった怪鳥が大きく体勢を崩せば、すぐさまスキアが追撃に入る。
「【凶弾】」
溜め状態で放たれた魔力弾は、怪鳥を撃ち飛ばして距離を稼いだ。
ここで『めまい』の解けたメイが、感謝の視線を向けてくる。
クールに杖を払い、決め顔で気持ち良くなるスキア。
「かたじけない」
「ぶふっ」
メイに、一瞬で表情を崩された。
「キェエエエエエエエ――――ッ!!」
中ボス級の能力を誇る怪鳥はわずかにHPを残し、その目の色を一変。
赤光を灯らせる。
「【誘導弾】【ファイアボルト】!」
これをかわした怪鳥は、その狙いをレンに変え特攻。
翼の羽ばたき一つで、一気に距離を詰める。
ギラギラと輝く鉤爪は、一撃で大きなダメージと毒を与えるやっかいな攻撃だ。
「まもり、おねがい!」
「はひっ! 【地壁の盾】!」
しかしここまでの流れは全て、狙い通り。
まもりがその盾で、怪鳥の攻撃を受けたところで――。
「【暴水のルーン】発動!」
ダムの水をせき止めていた石壁に作られた水門を、解放したかのような激流がまもりの大盾から放出。
凄まじい勢いで敵に直撃して、弾け散る盛大な水しぶき。
水はすぐに止まったが、直撃を受けた怪鳥はまさに『消し飛ばされた』かのような勢いで、森の中を転がっていく。
「あっ、そっちは!」
そして張ったばかりの魔法陣罠にかかって炎を上げ、続く雷撃罠に感電し、氷嵐罠に突っ込んで切り裂かれ、そのまま粒子となって消えた。
「……ごめんなさい。思った以上の勢いだったわ」
「文字通り、問答無用の暴水が噴き出しました」
「んっふふ。さすがだねェ……こうしてわざとコミカルな失敗をすることで、演じているわけだ。普通の魔導士を」
「違うのよ」
「これだけの火力を見せつけおきながら……恐ろしいほどの二面性だな。まったく、面白い」
「違うんだって」
もはや単純なミスですら、隙を見せるために『演じている』と言われるレン。
ため息をつきながら、開放してしまった罠ポイントに戻る。
そして魔法珠をポイントに投げ込んで、それをまた、クルデリスに直されるのだった。
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