表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1112/1378

1112.ヴァルガデーナの町長

 落とし物だったガントレットの、持ち主探し。

 ヴァルガデーナの町で、メイたちはついに失踪人サグワ・クロキャットを発見した。

 なぜか「両親に自分の居場所を伝えるな」と言われて困惑しているところに、やってきたのは町長だった。


「皆さんは、冒険者ですか?」


 穏やかな笑顔で、問いかける町長エイグラム。


「はいっ、『ただの』冒険者ですっ」

「そういうことだ」


『闇を継ぐ者』であることを隠すという展開に、楽しそうに応えるメイ。

 そんなメイが揺らす尻尾に、ツバメとまもりがほっこりする。


「なるほど、どうやらかなりの腕前とお見受けいたします」


 そんな町長の言葉に「間違いありません」と、大きくうなずく付き人たち。


「よろしければ、一つお話を聞いていただけないでしょうか」


 さっそく始まる、クエストの気配。


「あ、あの、この人たちはもう帰るところなんです」


 意外にも、これをサグワが止めにかかった。


「そこをなんとかお願いします。ぜひ依頼させていただきたいことがあるのです」


 しかしもう一度言って、町長はサグワを真っ直ぐに見る。


「あ、あの、ですが」

「構いませんね? サグワさん」

「……はい」

「それでは、まずは話だけでも聞いていただけますか?」


 気が乗らない感じのサグワと、「ぜひ」にとほほ笑む町長。

 あまり見ないタイプの展開に、スキアたちも静かに様子をうかがっている。


「実は最近、奇妙な化物が町の外をうろついていまして。とても危険なので、その討伐をお願いしたいのです」

「クエストの内容は、結構普通なのね」


 なぜかサグワが渋る中、提案されたのは定番の魔物退治。


「化物は魔物の出来損ないのような姿をしていて、人を襲います。ですが皆さんほどの強さなら、打倒も問題なくできるでしょう」

「特に、断る理由はないわよね?」

「そうですね」

「奇妙な化物の討伐か。おもしろい」

「んっふふ。楽しくなりそうだねェ」


 スキアたちからも、特に反対意見はなし。

 明らかに、ガントレットの持ち主探しからつながっているクエスト。

 これもサグワの救出という、本来の目的から続くものだろう。

 レンはこの依頼を、受けることにした。


「このクエスト、受けるわ」

「おお、ありがとうございます。実は、もう一つお願いしたいことがあるのですが……」

「この時点でもう一つ? なに?」

「この化物たちは数も多く、いつ危険が町に迫るか分かりません。そこで魔法罠を仕掛ける仕事もお願いしたいのです。外に出て罠を仕掛けるには戦力も必要になるので……こちらは二人もいてくだされば充分です」

「二手に分かれるクエストになるってこと?」

「はい、そうなります」

「ならば罠を張る方は、我らが向かおう」


 応えたのは、スキアとクルデリス。

 こうして『闇を継ぐ者』たちは、パーティを二つに分割するクエストを受けることになった。


「ありがとうございます。本当に助かります……!」


 町長は満面の笑顔でそう言って、頭を下げる。

 並んだ付き人たちも「これは助かります」と、うれしそうだ。


「……ただし」


 注目を促すように、町長が言葉を区切った。


「二つほど先に注意しておくことがあります。まず、この町には門限があります」

「門限?」

「はい。ヴァルガデーナに住む者、または滞在する者は、決められた時間以外は外に出てはいけません。それなので時間が過ぎてしまった際は、翌朝以降の帰還をお願いします。それと――」


 町長は、手持ちのマップを開いて指を差す。


「ここにある建物の敷地には、決して入らないでください。この場所には我らの信ずるルミナス教の聖地があるので、外部の方には踏み入れないようお願いしているのです」

「なるほど、少し変わった町ですね」


 ツバメがつぶやく。


「そ、そうですね。門限や聖地がある町というのは初めてです……っ」


 思わぬ二つの限定事項。

 まもりもこれには、めずらしそうにしている。


「この感じだとクエストに『時間がかかる』、もしくは『教会の方に向かって動く敵』が出てくる可能性がありそうね」

「時間を過ぎたり村の禁忌を踏むと、クエスト失敗になるという形のクエストでしょうか」

「なるほどー」


 メイはそれなら早めに化物を『捕まえて戦う』もしくは『逃げ道を塞ぐ』ことが大事になりそうだなと、気合を入れる。


「それ以外は、どう過ごしていただいても構いません。食事もこちらの方で手配しておきます。好きな店で好きな時間に、いくらでも食べて頂いて構いませんよ」

「っ!」


 それを聞いたまもり、一瞬で目を輝かせる。


「概要は理解できたわ。それじゃさっそく、森に行ってみましょうか」

「りょうかいですっ!」

「それでは化物退治は私が案内を。罠の方は私の付き人たちが現地へ案内します」

「んっふふ。それじゃあまたあとでねェ。僕たちの方にも、強い敵が出るといいなァ」


 変わらぬ笑みを浮かべたまま、スキアとクルデリスは付き人たちに引率されて別の道へ。


「それでは化物の打倒、よろしくお願いします」


 満面の笑みで、メイたちの前を行く町長。

 そんな中サグワだけが、最後まで神妙な面持ちでソファに腰を下ろしていた。

誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ふーむ? これは逆に、夜通し外にいることで何かが起きるパターンも有り得るか? 教会も気付かれないように侵入するスニークミッションが正道の可能性が?
クイズですがその通りですね、と言うわけで一つ目の罠の解説。 「窓辺にろうそくが13本立っています」とは言っているが、すべてのろうそくに火がついているとは言っていない。
パニーニはコンビニとかにも売ってるところもあるから探せばあるかも。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ