1102.企み
無事に【エディンベアの輝き】を守り、魔族に【発信機宝珠】を持たせたメイたちは、秘密基地へと帰還。
「よくやった。魔族の移動先は……ハイランドの屋敷だと……!?」
「ハイランドとは?」
「エディンベアの貴族の一つだ。有力者だが、これは予想外の事態だぞ。一体何が起きているんだ」
「だが、次にすることは決まっているのだろう?」
スキアは目を閉じたまま、マネージャーの男に問う。
「その通りだ。ハイランド邸へ向かい、魔族を討つ」
「んっふふ、今度は狩っちゃってもいいんだよねェ?」
クルデリスの薄笑いが、邪悪な笑みに変わる。
「その通りだ。魔族を狩り、ハイランドの真実を明らかにする! 頼んだぞ、猛き者たちよ」
「それじゃあ、いきましょうか」
「了解」
「お任せあれ」
「はひっ」
六人は再び魔法陣の上に並び、転移。
「ポーズ取りながら転移するの、やめない……?」
闇の組織っぽい距離間と角度を六人で取りながら、屋上へ。
夜風の中に、スタイリッシュに現れる六人。
「こんなの見られたら、なんて言われることか」
レンは冷や冷やしながら、ハイランド邸へと向かう。
たどり着いた石積みの豪邸には、倉庫のような建物あり。
六人は敷地内に入り込むと、念のため【変身の杖】でメイドになる。
「どこもカギがかかっていますね」
もうカギという要素が出てくるだけで、顔を引きつらせるツバメが安堵しながら告げる。
「思い切って、聞いてみるのも良さそうね」
見つけたのは、見張り中の屈強そうな戦士。
するとスキアが、先行して前に出た。
「あのー、ちょっとお聞きしたいんですけど……いいですかっ?」
女の子らしい走り方で接近。
小首を傾げながらたずねる。
「っ……!」
レンがその演技のあざとらしさに震える中、スキアは質問を続ける。
「ハイランド様は、今どちらに?」
「ああ、当主様は倉庫の方に向かわれたはずだ」
「ありがとうございますっ」
そして可愛くペコっと頭を下げて、レンたちの元に戻って来た。
「んっふふ、相変わらずだねェ」
「仕事だからな」
ニヤニヤ笑うクルデリスと、クールに決めるスキア。
共に庭にある倉庫へ。
するとそこに、わずかに洩れる炎の光を見つけた。
「レンちゃん」
メイが静かにうなずく。
どうやら、何か聞こえるようだ。
六人は石造りの倉庫に、そっと入り込む。
中には木箱が並び、壁のようになっている。
炎が生み出す影を見ると、どうやら宝珠を持ち去った魔族がいるのは間違いないようだ。
メイたちは木箱の背後から、そっと聞き耳を立てる。
「宝珠は、着々と集まっているようだな」
「ほぼ狙い通りだ。貴様の情報のおかげで、貴族たちからの略奪は成功している」
「エディンベアだけでなく、ロンディニウムまで手中に収めることができる……本当に可能なのだろうな?」
「間違いない。それだけの『力』だ」
「悪魔だけでなく暗殺者も利用しての収集。一見バラバラに起きている事件だ。我らの狙いに気づく者はいないだろう。フッハッハッハ」
「……待て。何者かが入り込んでいる」
「誰だ!?」
「「「「ッ!!」」」」
侵入者の存在に気づいたのは、魔族。
ミスはないはずだ。
よってこれは、クエストの一環だろう。
それでもドキドキとしてしまう展開に、思わず硬直するメイたち。
するとスキアとクルデリスが先んじて歩き出し、両者の前に姿を現す。
「失礼いたしますっ」
「貴様、ここで何をしている!」
冷たい目で問いかけるハイランドに、スキアは目を閉じたまま笑みを浮かべた。
「はいっ、ご主人様。お待たせいたしました」
「……待たせた? 一体何をだ?」
「――――断罪の、お時間です」
「覚悟しちゃってねェ」
「わあ! かっこいいっ!」
「…………」
『ご主人様』までは可愛く、断罪からは冷たく告げる。
それと同時にクルデリスも隣に並び、その笑みを戦闘狂を思わせるものに変えている。
スキアたちの演出に声を上げて喜ぶメイと、白目をむくレン。
メイとツバメもクールな足取りで進み、スキアたちに並んだ。
「こ、これはどういうことだ……!? だが、話を聞かれた可能性がある時点で生かしておくことはない! 殺れ! ダイモーン!」
魔族は大きく翼を開き、戦闘態勢に入る。
三叉の槍を持つ典型的な悪魔は、広くはない倉庫の中で空中戦を展開。
飛行攻撃の狙いは、レンだ。
「っ!」
突撃をかわすと、ダイモーンはそのまま旋回して再び高い位置へと戻る。
「【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」
「炎上等の可能性を踏まえての氷結魔法か。やはり戦況の把握は的確だ」
後を追う形での攻撃に自然と氷弾を選んだことに、感心するスキア。
ダイモーンは氷弾に肩を弾かれながらも、続けてレンに槍を振り下ろす。
これをかわすと、着地と同時に槍を突き出してきた。
二度のバックステップでこれをかわし、レンは一転前進。
「はあああああ――――っ!」
【魔剣の御柄】に、【フリーズブラスト】を込めての振り上げ。
大きな後方への跳躍でかわされたところで、そのまま魔法を解放。
氷嵐が、ダイモーンを吹き飛ばす。
「さすが……これが闇を超えた者の近接戦闘」
「んっふふ、ゾクゾクしちゃうなァ。近距離でこれだけやれるなんてさァ」
「解説するのはやめて! 【悪魔の腕】!」
天井に叩きつけられたダイモーンが落ちてきたところを、すぐさま追撃。
足元の魔法陣から伸びた悪魔の剛腕がダイモーンをつかんで、床石に叩きつけた。
「これで終わりだ……【フルスイング】」
ニヒル(メイ比)な声色で叩き込む一撃が、そのままダイモーンを打倒。
勝負がついたかのように思われたが、そのHPは1ドット残る形になるようだ。
「クッ、ここは一度退く! すでに準備はできているからな!」
ダイモーンは倉庫上部の窓を突き破り、外へと逃走していく。
「追いましょう! この貴族はもう現場を抑えたし、後回しでいいはずよ!」
メイたちはレンの言葉を受けて、倉庫を飛び出していく。
「逃がすと思うか……っ! お、追え! 必ずヤツらを殺すんだ!」
対してハイランドは、すぐさま暗殺者たちを差し向けた。
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