1097.報酬確認の時間ですっ
「さて、それじゃあトカゲ帝国の報酬でも受け取りに行きましょうか」
「りょうかいですっ!」
「今回はクク・ルル村の村長たちが、準備をしてくれているみたいよ」
「向かいましょう、メイさんの故郷の村に」
「そ、そうですねっ」
異世界初めての街を堪能した四人は、マーちゃんたちサツキタウンの創設者たちに挨拶をして、クク・ルル島へと向かう。
いつものラフテリアから小型の定期船に乗ると、一層里帰り感が強くなる。
「これくらいの小さな船で向かうっていうのも、楽しいわね」
「そうですね」
天気は快晴。
キラキラ輝く海を進むのは、とても気持ちがいい。
手を伸ばせば、海面に届くほどの小さな船。
メイは楽しそうに、水に触れて遊ぶ。
「……でも何か、忘れてる気もするのよね」
「お、おそらく、迷子さんのことでは……」
「ああっ!」
「そもそもトカゲの帝国クエストにぶつかった理由は『ふぐ刺し』のために、【薄造り】のできるメイドを探してたところからだったわね」
「迷子さんを見つけ出すとなると、それだけで高難易度クエストかのような緊張感があります」
「……次に見つけた時に、頼みましょう」
全会一致。
船の隣を泳ぐトビウオを眺めながら、四人はクク・ルル島へ。
「島もすっかり元通りだね」
「本当ですね。鮮やかな鳥が鳴き、豹のような柄の猫が寝転ぶ。とても賑やかな良い島です」
木々の隙間を抜け、メイのノールック投石攻撃を見ながら進めば、クク・ルル村に到着する。
中に入ると、冒険者たちがメイを見つけて歓声を上げた。
「おおっ、メイちゃんだ!」
「メイですっ!」
見ればその手には、広報誌。
どうやら今回の『トカゲ帝国の逆襲』特集を見て、クク・ルル村を見に来た冒険者たちのようだ。
「聖地の村でメイちゃんが見られるとは、ついてるな」
「密林の村に、派手な鳥。やっぱりメイちゃんには自然がよく似合ってるなぁ」
「普段はコーヒー片手に読書をたしなむ、知性派なんですよ!」
「「「あははははっ!」」」
「わあー! 冗談だと思われてるーっ!」
追ってくるどころかメイの一歩前に出てきている『野生』に、戦慄。
「もはや何を言っても届かなくなってしまった、その気持ち。とてもよく分かるわ」
そんなメイの姿を見て、深くうなずくレン。
「皆さん、お待ちしておりました」
するとそこに村長と、トカゲクエストのお姉さんがやってきた。
「トカゲ帝国に再びの封印を施し、世界を、村を救ってくれた皆さんに、ぜひお礼をさせてください」
四人は連れられるままに、村長の自宅へ。
木製の大きな家には、白色の猿が屋根の上でくつろいでいる。
色どりが綺麗なじゅうたんの敷かれた接客の間には、すでに木製の箱が四つ置かれていた。
「どうぞ、こちらをお持ちください」
「あ、ありがとうございます」
お姉さんの言葉に、さっそくまもりがワクワクしながら木箱を開く。
【シンバル】:両手に盾を持ち、叩き合わせて衝撃を起こす。ブレスや範囲魔法などの範囲攻撃を弾くことができるが、判定が続く場合は若干の軽減にとどまる。
「絵面が面白そうだけど、使えそうね」
「は、はひっ。思わぬスキルでした」
まもりが二枚の盾をシンバルのように叩く姿を想像して、ちょっと笑うレン。
続けて木箱を開く。
【暴水のルーン】:様々なものを弾き飛ばす爆発的な水流を噴き出す。ダメージはないが複数設置が可能。【知力】次第で加減が可能。
「上手に使えば、すごく面白くなりそうですね」
「ダメージはなし。その分使い勝手は良さそうな気がするわ。これは実戦が楽しみかも」
どんな使い方ができるか、レンは早くも色々と考え出す。
次はツバメの番だ。
【空襲】:疾走中に跳躍し、剣や短剣で襲い掛かる刺突攻撃。高所から降りる際に使用することも可能。
「真っ直ぐ斬り抜けでくるか、跳躍刺しにくるかみたいな使い方もできますし、落下刺突がスキルの火力になるのはいいですね」
「さ、さらにアサシン感が出ますね」
「最後はメイね」
「はいっ!」
レンたちの視線の中、メイが木箱を開く。
そこには一本の剣が入っていた。
【世界樹の剣】:世界樹で作られた剣。所持していれば植物系スキルや攻撃の効果を上げる。攻撃111
「おおーっ! すっごくカッコいいよー!」
さっそく掲げた剣は、白刃に木製の柄。
そして翼を広げた鳥のような形で広がる枝葉の鍔を持つ剣。
そのデザインは美しく、思わず見入ってしまう。
「攻撃力が通常の状態で3ケタ……しかも効果として、植物の関わる攻撃やスキルの威力上昇……」
「一時的に巨大化した危険植物さんが普通に出てくるのか、それとも複数出てくるのか……」
「す、すごいですっ」
「剣を大きくして攻撃は【蒼樹の白剣】で使い分ける形ね……この剣も一応植物関係だし、関わってきそう」
レンは【世界樹の剣】を眺めながら呟く。
「あらためて、ありがとうございました。メイさんたちのおかげで村を取り戻すことができました」
クエストお姉さんは、うれしそうに笑う。
「これで本当に、トカゲの世界征服クエストは終了ね」
「思った以上に、大きな物語でしたね」
「は、はい、恐ろしいクエストでしたが、楽しかったです」
「村が守れて、本当によかったよー!」
「村クエストもこれまで通りになるみたいだし、完全に通常通り」
「……それなのですが、いくつか問題が見つかりまして」
「え? そうなの?」
メイがたずねると、お姉さんは一つため息をついた。
「トカゲ帝国のクエストを終えると、これまでのクエストに加えて新しいものが登場するのですね」
「どんなクエストなんですかっ?」
「はい、実はゴールデンリザードの群れが川を占拠しにくることがあって、その討伐をお願いするといったものなどがあります。さっそく受けていかれますか?」
「ええっ、群れが出るのーっ!? そ、そのクエストって、やっぱり何回受けてもなくならないのかな……」
「なくならないでしょうね」
「な、何万回受けても、そのままだと思います」
「メイさん、ぜひトカゲ討伐をよろしくお願いいたします」
「あ、あのっ」
「ぜひ」
「今回は、見送らせていただきますーっ!」
トカゲ狩りに全てを捧げた日々を思い出し、尻尾と首をブンブン振って逃げ出すメイ。
「……もうトカゲは、こりごりだーい」
しれっとつぶやいたツバメの一言に、笑ってしまうレンとまもりなのだった。
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